現代農業WEB

令和6(2024)年
10月4日 (金)
神無月
 仏滅 辛 丑
旧9月2日

あああ

ホーム » 連載記事一覧 » 植物はあれもこれも薬草です » 【植物はあれもこれも薬草です】第24回(最終回) ヨモギ 薬湯でリウマチ改善 骨粗しょう症には新芽をいただく

【植物はあれもこれも薬草です】第24回(最終回) ヨモギ 薬湯でリウマチ改善 骨粗しょう症には新芽をいただく

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

ヨモギ キク科ヨモギ属。種子と根茎の両方で増える多年草。切れ込みのある葉の形が特徴。9月頃、たくさんの花をつける(イラスト:久郷博子)
ヨモギ キク科ヨモギ属。種子と根茎の両方で増える多年草。切れ込みのある葉の形が特徴。9月頃、たくさんの花をつける(イラスト:久郷博子)

乾燥した場所を好み、旺盛に広がる

 冬の気配が濃くなると、今すぐとって使える薬草は少なくなります。そこで、来年の春を見据えて、今回はヨモギを紹介します。

 ヨモギほど身近に利用されてきた植物もないかもしれません。たいていの方が「草もち」にして食べたことがあると思います。香りがよく日本の代表的な摘み草として知られていますね。

 日本にはヨモギが広く分布しており、北日本には大型のオオヨモギが分布しています。乾燥したところに好んで生え、地下茎で旺盛にその生育範囲を広げます。

 近年は緑化のための植物としてヨモギのタネが中国や朝鮮半島から持ち込まれ、道路の法面などに播かれたりもしました。以前、植物分類学の識者に「西日本で背丈を超えるような大型のヨモギは大陸から持ち込まれたものだ」といわれたことがあります。一口にヨモギといってもタンポポと同様、遺伝子レベルではいろいろな種類がありそうです。

古くから世界各地で薬草として重宝されてきたとても身近な草
古くから世界各地で薬草として重宝されてきたとても身近な草

内用、外用さまざまな薬効

 ヨモギは西洋・東洋を問わず古くから用いられてきた薬草でもあります。ギリシャ神話でも女性の健康の守護神アルテミスに捧げられたとされ、「ハーブの女王」と呼ばれています。東洋では艾葉《がいよう》という名前で知られる薬草で、艾とは「やまいを止める」という意味だとされています。

 ヨモギには身体を温める作用があり、食べるか飲むかすることで、健胃・整腸・利尿・通経(月経を促す)・強壮などの効果を発揮します。高血圧や神経痛、痰切りにも効くとされています。

 また、葉の汁に含まれるタンニンの止血作用も有名です。私も刃物で手を切ったときはヨモギの葉を摘んできて手で揉み、出てきた汁を傷口につけます。あっという間に血が止まり、その後の傷の治りも早まります。

骨粗しょう症には新芽

 沖縄県では食材として一年通して料理に用いられます。沖縄県の長寿はヨモギによるものが大きいのではないかと話題になったこともありました。

 ヨモギにはさまざまなミネラルが多量に含まれているようで、とくに春から夏に次々と出てくる新芽部分を摘みとって1日数個ずつ食べると、高齢女性に多い骨粗しょう症が改善します。私も薬草の師匠である村上光太郎先生にこのことを教えていただき、実際に数人の方に紹介して試してもらったところ、ほとんどの方の骨密度が正常な値まで改善しました。骨粗しょう症にお困りの方は一度試されるとよいと思います。

春先の軟らかな葉を摘みとる。天ぷらなどにしてそのまま食べてもおいしい
春先の軟らかな葉を摘みとる。天ぷらなどにしてそのまま食べてもおいしい
葉も茎も天日で干して乾燥ヨモギにしたものが薬湯に役立つ。そのまま風呂に入れてもよいが、一度やかんで煮出してから利用するとなおよい
葉も茎も天日で干して乾燥ヨモギにしたものが薬湯に役立つ。そのまま風呂に入れてもよいが、一度やかんで煮出してから利用するとなおよい

乾燥ヨモギを煮出してポカポカ薬湯

 ヨモギは薬湯にも使います。その場合は、葉だけでなく茎も含めた全体をとってきて、天日でよく干して乾燥してから使います。乾燥ヨモギを一つかみほど水と一緒にやかんに入れて火にかけ、30分程度煮出したものを風呂に入れます。

 ヨモギだけでなく薬草は全般的に、40℃前後ではあまり成分が出ません。薬湯を楽しむときは別に一度煮出したものを適温のお風呂に加えるのがよいと思います。ヨモギ湯は冷え性、腰痛、神経痛、リウマチ、皮膚炎などに効果があるとされています。わが家でも冬に身体が冷えた日は、ヨモギ湯に入ります。体がポカポカしてぐっすり眠れます。

梅雨明け頃までの葉や新芽を採集

 ヨモギの採集時期はわが家の場合4~6月。新芽をとる場合は新芽がよく出る7月頃まで。

 4~5月頃は地上から出たばかりで葉も軟らか。とった葉を天ぷらなどにしてその日のおかずにしています。また、葉をお湯でサッと茹でて、手でよく水気を絞ります。丸いボール状になるのでそのままフリーザーバッグに入れて冷凍保存もします。自然解凍すれば、いつでも草もちやパスタの材料になります。その他、葉を乾燥保存しておき、鍋で煮て出てきた蒸気を浴びる「ヨモギ蒸し」という健康法に使うこともあります。

 6~7月は葉も茎も硬くなってくるので、新芽だけをとります。8月以降にとれる葉は乾燥させて使うぶんにはかまいませんが、摂取すると身体が温まりすぎてかえって害が多くなるので、わが家では梅雨が過ぎたら採集はしていません。

田舎だからこそ役立てたい薬草の力

 2年間連載させていただきましたが、私の薬草よもやま話は今回で終わります。わが家では40種以上の薬草を利用していて、そのうち24種を紹介することができました。

 私たち夫婦が岡山県の山村に住み着き、薬草利用を日夜生活に取り入れているのは「病気にならない身体づくり」を身近なもので実現したいからです。コロナ禍の昨今、健康への意識は高まっています。健康や未病を達成する方法の一つとして、田舎では「薬草」は有効なものだと思っています。

 薬草について新しいネタがたまったら、読者のみなさんと誌面でまたお会いできる機会があるかもしれません。お読みくださってありがとうございました。

筆者と妻。棚田が広がる上山集落にて(黒澤義教撮影)
筆者と妻。棚田が広がる上山集落にて(黒澤義教撮影)

*月刊『現代農業』2021年12月号(原題:ヨモギ)より。情報は掲載時のものです。

連載

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」(無料お試しあり)でまとめて見ることができます。ぜひご覧下さい。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

農家が教える よもぎづくし

農文協 編

本書は『現代農業』の記事などをもとに、摘み方や保存法、色をよく仕上げる下処理のコツや、農家の考えたあっと驚くよもぎの活用方法を紹介。腰痛が治ると話題の「よもぎ座布団」や、草もちをふわふわな食感にする驚きの材料、さらにはよもぎエキスを使った野菜づくりの極意に、自生しているよもぎを早期出荷して稼ぐ方法など、よもぎの魅力が満載の一冊。*本書は『別冊現代農業2023年4月号』の書籍版です

大地の薬箱 食べる薬草事典

春夏秋冬・身近な草木75種
村上光太郎 著

薬草の恵みをもっとも効率よく取り入れる方法は「食べる」こと。そして薬草になる植物は春夏秋冬いつでも身近にある。75種の草木をおいしく食べる料理法を重視し、薬酒や薬草酵母、薬草茶の作り方まで紹介。