植物はあれもこれも薬草です 連載記事一覧 【植物はあれもこれも薬草です】第10回「オオバコ」 葉は咳止め、タネは視力回復 オオバコふりかけで手軽に摂取 2023-08-24 岡山・松原徹郎 この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう! オオバコ オオバコ科オオバコ属。多年草で、茎が短く草丈は低い。夏になると穂に小さな花をたくさんつける(イラスト:久郷博子) 世界中で利用されてきた薬草 オオバコは漢字で書くと大葉子。都市部ではあまり見かけないようですが、農村では今でも路傍に普通に生えている身近な雑草です。オオバコの2本の茎を交差させて引っ張り合う草相撲で遊んだ人もいるかもしれません。 オオバコは古くから世界中で民間薬として利用されてきた、由緒正しい薬草の一つです。葉は車前草《しゃぜんそう》と呼ばれる生薬になり、咳止め・健胃・整腸・強壮の効果があります。また、種子も車前子《しゃぜんし》という別の生薬として用いられ、こちらは車前草と同様の効果に加え、視力回復や眼病にも効くといわれています。 ヨーロッパでも、セイヨウオオバコ、ヘラオオバコという仲間の草があり、葉が民間医療で去痰に用いられてきました。じつはこの2種は現在、帰化植物となって日本でも見かけるようになっています。セイヨウオオバコは日本のオオバコよりやや大きいくらいの違いしかなく、形はそっくり。身のまわりに生えているのは、セイヨウオオバコかもしれませんが、あまり細かいことは気にせずに、同じように利用すればいいと思います。 厳しい環境を生き抜く強靭さ オオバコ(7月中旬頃の様子) 「車前」という名前の由来はその生育環境にあります。踏み固められて踏圧のかかった場所によく生えているからです。オオバコは茎や葉の繊維が強靭で、他の植物なら踏みつけられてダメージを受けるような状況でも平然と生き続けます。砂利が敷き詰められたような過酷な環境も好き。 ちなみに学名はPlantago。ラテン語で「足の裏で運ぶ」という意味です。オオバコのタネは、水に濡れると粘液を出し、人の足の裏にくっついて運ばれます。この性質から名づけられたようです。山で道に迷ったとき「オオバコを追っていけば、山の外へ出られる」ともいわれているそうです。 ゆでてから刻んでいただく 食べると独特の風味と香りがあって美味しい薬草ですが、先ほども述べたように繊維がかなり硬くなります。大きく育った葉ほど食べたときにごわつきます。踏まれやすいところに育つことが多く、古い葉は傷んでいることもよくあるので、料理に使うならできるだけ新しい軟らかい葉がおすすめです。わが家では5月頃から8月頃が採集の最盛期で、株から新しい葉が次々出るので、それを選んでとるようにしています。 新しい葉は繊維も軟らかくて料理にも使いやすい 調理するとき、繊維を感じさせないよう、軽くゆでた後、一度水で冷まし、小さめに刻むのがコツ。いろいろな食べ方ができますが、簡単においしくいただくならかき揚げが一番でしょうか。葉を短冊状に刻んで直径5cm程度のかき揚げにします。オオバコの風味がよく味わえると思います。 オオバコで団子を作るのもおいしい。ゆでたオオバコを一度水で冷やしてから、ミキサーにかけてペースト状にします。これを強力粉に混ぜて団子を作るときれいな緑色が楽しめます。汁物に入れたり、甘いデザートとして食べたり、食べ方も自由です。 タネのふりかけで元気に乗り切る タネを採るときは穂の部分をまるごと収穫して天日干しする 秋以降はタネを集めて、車前子のふりかけを作ります。タネを採るには、まず花がたくさんついた部分をまるごと収穫し、1~2日天日で乾かします。乾燥させた穂を手でしごくとタネが落ちてくるので、下に紙などを敷いて、こぼれたタネを集めます。 集めたタネはフライパンでカラッとなるまで適度に煎って使います。醤油、みりん、出汁、チリメンジャコなどと混ぜればおいしい車前子ふりかけの完成です。 煎ったタネは冷蔵庫で保存しておけます。タネをご飯に混ぜておにぎりを作るのもおすすめで、プチプチした触感がたまりません。 オオバコは野草の中でも美味。もっている力もかなりのもので、喉がいがらっぽいとき、オオバコを食べるとそれが治まる実感がありますし、健胃と整腸作用のおかげか食欲も増す気がします。夏バテで食欲がない。そんなときは、元気に乗り切るために、オオバコを食べてみてはいかがでしょうか。 かき揚げにすると、オオバコがもつ風味を手軽においしく楽しめる *月刊『現代農業』2020年10月号(原題:オオバコ)より。情報は掲載時のものです。 ――次回は「アザミ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。 ビワ( 6月6日) ハハコグサ (6月16日) タンポポ (6月21日) カキドオシ (6月27日) ハコベ(7月4日) クワ(7月12日) ヤブカンゾウ(7月19日) ゲンノショウコ(7月26日) ハギ(8月4日) オオバコ(8月24日) アザミ(9月6日) ヒキオコシ(9月14日) タラノキ(10月12日) スギナ(10月26日) ナズナ(11月17日) フキ(12月6日) イタドリ(1月9日) ドクダミ(2月21日) ツユクサ(3月19日) ノブドウ(4月23日) メナモミ(6月14日) カキ(7月13日) ナツハゼ(8月22日) ヨモギ(9月27日) 過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。 過去の連載を読む この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。 ▼草楽のホームページ▼ ▼草楽のネットショップ▼ ▼草楽のイベント情報など(facebook)▼https://www.facebook.com/ueyamasouraku 大地の薬箱 食べる薬草事典春夏秋冬・身近な草木75種村上光太郎 著薬草の恵みをもっとも効率よく取り入れる方法は「食べる」こと。そして薬草になる植物は春夏秋冬いつでも身近にある。75種の草木をおいしく食べる料理法を重視し、薬酒や薬草酵母、薬草茶の作り方まで紹介。 小さいエネルギーで暮らすコツ太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる農文協 編輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。 この記事を見た人への現代農業WEBおすすめコーナー 農家のくらし知恵袋 Tags: 薬草, 健康, 漢方