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【植物はあれもこれも薬草です】第11回「アザミ」 血の巡りをよくする 薬効のある根は味もいい

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

ノアザミ キク科アザミ属。日当たりのよい場所を好み、赤紫色や白色の花をつける。なお、アザミは総称で、アザミという名の植物はない(イラスト 久郷博子)
ノアザミ キク科アザミ属。日当たりのよい場所を好み、赤紫色や白色の花をつける。なお、アザミは総称で、アザミという名の植物はない(イラスト:久郷博子)

アザミの仲間は100種以上

 秋の終わりは、植物の地上部も季節の移ろいとともに枯れていく時期です。そのなかで、草花の生えているあたりに目をやると、トゲのついた葉がロゼット状(茎が短く根からすぐに葉が出ているような状態)になった草が見つかるはずです。その葉の持ち主、アザミが今回紹介する薬草です。

 キク科の多年草で、日本には100種以上あるとされ、草丈60~100cmと高くなるものが多い。メジャーなものではノアザミ、ナンブアザミ、ヨシノアザミ、ツクシアザミ、エゾアザミなどがあります。ただ、それぞれの雑種もたくさんあるようで、種の同定はなかなか難しい。また、名前にアザミとついてはいても、キツネアザミはまったく違う仲間です。

 今回は、主に北海道以外の各地で広く分布しているノアザミについての紹介です(北海道にはありませんが、エゾアザミがあり、同じように役立つと考えられます)。アザミは秋咲きのものが多いのですが、ノアザミは初夏からと開花期が早く、苞と呼ばれる花の付け根の部分に、ネバネバした粘液がついている点が特徴です。

9月頃のノアザミ。花が枯れ、ロゼット状に変わり、地面にはいつくばるように育つ
9月頃のノアザミ。花が枯れ、ロゼット状に変わり、地面にはいつくばるように育つ

老廃物の分解や排泄を促進

 アザミの根を乾燥させたものは、薊という生薬になります。よく知られている効果は健胃、利尿、解毒作用です。その他、不眠症、神経痛、皮膚の炎症などにも効果があります。

 また、東洋医学では、血液が汚れたり、血液の粘度が高まって流れが悪くなったりしている状態を瘀血といいます。瘀血が続くと、肩こりや頭痛、高血圧や高脂血症、女性では月経不順、子宮内膜症や子宮筋腫などが起こりやすくなります。アザミは、体に取り込まれた毒物を解毒し、体内に溜まった老廃物の分解や排泄を促進して、瘀血を解消する作用もあるとされています。

葉も根も美味しい

 アザミは薬草の中でも美味しい草の一つです。わが家ではもっぱら食材として、葉と根をとって食べています。春先から夏までは葉を、夏から秋には根を食べます。

 根はまさに細いゴボウという感じ。むしろゴボウ以上に味が濃く美味。きんぴらにすると、たいへん美味しいお惣菜になります。

ノアザミの根のきんぴら。まるでゴボウのようだが、ゴボウ以上に味が濃い
ノアザミの根のきんぴら。まるでゴボウのようだが、ゴボウ以上に味が濃い

 葉も味や香りが強く美味しい。てんぷら、ごまあえ、おひたし、からしあえ、油炒めなど、さまざまな料理に使えます。ただ、シカなどの草食獣から身を守るために葉の縁に多数のトゲをつけます。そのまま食べると痛いので、料理に使うなら、これをうまく処理しないといけません。トゲの下処理はいくつか方法があります。

 

  1. 包丁などでトゲのついた縁の部分を切り取る
  2. ガスレンジの上に葉をかざし、トゲを燃やす(30秒以上)
  3. トゲを感じなくなるくらい細かく刻む

 

 どの方法でもよいので、しっかりトゲを除くことがポイントです。また、味がしっかりしている分、アクが強めですが、加熱すると消えます。

 葉の主脈が太くて硬いが、その部分だけ切り出して多少水にさらしておくと、食べやすくなってサラダにも使えます。

春から夏には葉も食べられる。トゲや太い主脈の下処理の手間はかかるが、美味しい
春から夏には葉も食べられる。トゲや太い主脈の下処理の手間はかかるが、美味しい

アザミの維持には人の草刈りが必須

 アザミは前述したように秋以降はロゼット状で過ごすので、地表付近に日が差し込むような明るい環境でないと生育できないため、個体群の維持には一定程度の草刈りが行なわれることが必要です。また、根をとって食べ続けた場合、種子による自然な増加が間に合わないと、だんだん数が減っていきます。

 その一方で、各地でシカが増え、他の植物は食べられてしまう中、トゲのあるアザミだけが食べ残されて増えるというケースもよく見かけます。アザミは自然環境の変化を知るための指標になる草ともいえます。

 最後に余談ですが、アザミの花によく似た花をつける野菜は何でしょう。それはゴボウです。分類学的には違う属ですが、近縁の種であることは間違いありません。実際、ゴボウも平安時代から薬用とされ、効能も似ています。さらに最近、市民権を得つつあるアーティチョークも近縁で、やはり解毒効果などがあるようです。

*月刊『現代農業』2020年11月号(原題:アザミ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「ヒキオコシ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

連載

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

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