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【植物はあれもこれも薬草です】第6回「クワ」 食前にクワ茶でどうぞ 血糖値の上昇を抑制

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

折れた枝がすぐ根づく生命力

クワ クワ科の落葉高木。4~5月に開花、雄花は茎の先端から房状に垂れ下がり、雌花は枝の基部のほうにつく(イラスト:久郷博子)
クワ クワ科の落葉高木。4~5月に開花、雄花は茎の先端から房状に垂れ下がり、雌花は枝の基部のほうにつく(イラスト:久郷博子)

 植物の生長が早まる日々。梅雨に入る頃になるとわが家は忙しくなります。クワが本格的に稼働する季節なのです。

 というわけで、今回ご紹介するのは「クワ」。クワと聞いてカイコを連想する方は多いと思います。かつて日本の農村では、現金収入を得るため養蚕業が盛んに行なわれ、童謡に登場するほどクワ畑とクワの木は私たちに身近な植物でした。

 そもそもクワという名前の由来には諸説ありますが、一般的にはカイコが「食う葉」からきているといわれます。東アジア地域に広く分布し、野生では数種類、改良された育成品種は最盛期には2000種類を超えていたようです。日本に広く分布しているのは、主にマグワやヤマグワでしょうか。樹高は数mのことが多いですが、15mまで育つ場合もあります。葉は互生(一つの節に一枚ずつ互い違いにつく)。枝が折れて地面に刺さると、そこから新たな個体になれるほど生命力が強く、このヤナギに似た性質からか河川沿いに大きな林が見られることが多いです。

 果実は多肉質で深紫から黒色(まれに白い実がありますが、これは病気です)、6、7月頃になり、完熟したものはかなり甘いです。みなさんの中にもこの実を食べて口や手を黒く染めた経験がある方もいることでしょう。

ヤブ化した棚田を開墾し、挿し木で増やしたクワ畑。品種は葉や実が大きい「ハヤテサカリ」
ヤブ化した棚田を開墾し、挿し木で増やしたクワ畑。品種は葉や実が大きい「ハヤテサカリ」

葉は糖尿病の人にうってつけ

 もともとクワは中国から渡来したとされ、神を象徴した大切な木として扱われてきました。古くから薬用植物として、根の皮は「桑白皮《そうはくひ》」、若枝は「桑枝《そうし》」、葉は「桑葉《そうよう》」、果実は「桑椹《そうじん》」と呼ばれ、日常的に用いられてきたのです。

 桑白皮は咳や痰、呼吸困難、むくみ、脚気などに利用。「五虎湯《ごこうとう》」という市販の漢方薬の主成分で、咳き込む症状の風邪をひいた人などによく処方されています。

 クワの葉はビタミンA、B1などを含み、補血と強壮作用があり、中風、高血圧、動脈硬化、不眠症などに効果があります。もっとも注目すべきは血糖値上昇の抑制効果。葉に含まれるDNJ(1―デオキシノジリマイシン)が糖の吸収を阻害し、食後の血糖値の上昇を抑えることが明らかになっています。そのため、糖尿病の人にはうってつけといえます。

 また、クワの実は英語でマルベリーと呼ばれ、ビタミンCや鉄分を多く含みます。抗酸化作用のあるポリフェノールもたいへん多く、アントシアニンはブルーベリーの数倍含まれています。

クワ茶生産がわが家の生業

収穫した葉は一枚一枚手で広げ、天日乾燥のみで仕上げる。真夏なら1日でカラカラになる
収穫した葉は一枚一枚手で広げ、天日乾燥のみで仕上げる。真夏なら1日でカラカラになる
天日干しクワ茶「草楽」。インターネットなどで販売
天日干しクワ茶「草楽」。インターネットなどで販売

 我々夫婦は、山野の自生植物を利用するとともに、約10aのクワ畑からクワ茶をつくって販売することを生業の大きな柱としています。移住1年目から開墾を始め、小さい畑ですが7年目となった今では、家族全員で植えた300~400本のクワの木から葉をとってお茶にしています。

 クワは挿し木が可能で、20~30cmに切った枝を3~4月、もしくは梅雨時期に畑に挿しておくと根が出るので比較的容易に増やせます。最初の2~3週間水やりすることで根の活着率が上がり、うまくいくと半数近くが成木になります。植えてから3年ほどたつと収穫が可能なサイズになります。

 クワ畑の世話は、春から秋まで1、2カ月に1回程度の草刈り、冬場の施肥とせん定程度で、あまり手間がかかりません。シカはクワの葉が好物なので、山間部では電気柵などで囲ったりしないと丸坊主にされてしまうので留意してください。

 葉の収穫は、有効成分のDNJが多くなるとされる7月から9月限定。枝ごととって来て、広げたブルーシートに葉をバラバラと落とすのが効率がよいです。蚕を飼うときと同じ要領ですね。収穫した葉は天日干しでカラカラになるまで乾かし、1年分(生葉で3t分)のお茶を作るのでこの時期は忙しくなります。

 収穫後、葉をいったん蒸してから干す人もいるようですが、蒸すと葉の色が悪くなったり、乾かしきれないと細菌が増殖して腐敗の原因にもなるのでおすすめしません。

クワ茶のおかげで風邪もひかない

クワ茶は一回に約10gを2lの湯で20~30分以上煮出す。茶葉の成分がしっかりと溶け出し、豊かな味わいになる
クワ茶は一回に約10gを2lの湯で20~30分以上煮出す。茶葉の成分がしっかりと溶け出し、豊かな味わいになる

 完成したクワ茶は、成分が十分に出るよう20~30分以上弱火で煮出してから、コップ1杯程度を三度の食事の前に飲むようにしています。

 お茶を沸かす手間が面倒なときは、乾燥葉を粉末にしたものを湯に溶いて飲むようにしたり、いわゆる粉もの料理(たこ焼き、お好み焼き、パンケーキなど)の生地に混ぜることでも同様の効果が期待できます。

 わが家では毎日食前にクワ茶を飲んでいるせいか、ここ数年大きな病気はおろか風邪すらひかない体になってきた気がします。まさに神々しい木であることを実感する毎日です。

――次回は「ヤブカンゾウ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

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