連載記事一覧 植物はあれもこれも薬草です 【植物はあれもこれも薬草です】第8回「ゲンノショウコ」 タンニンたっぷり、市販薬をしのぐ健胃の力 2023-07-26 岡山・松原徹郎 この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう! ゲンノショウコ フウロソウ科フウロソウ属。小さな五弁の花が特徴。日当たりのよい場所に植えれば栽培も可能(イラスト:久郷博子) 下痢と便秘、両方の薬草 今回紹介するのは、全国各地で昔から薬草として重宝されてきたゲンノショウコです。薬効は健胃、整腸、強壮。葉を煎じてお茶として飲めば、下痢や腹痛が止まります。その一方で、便秘の時に飲むとそちらも解消するという、市販の薬では考えられないような優れた力を持つ健胃整腸剤です。 「現の証拠」が名前の由来といわれるくらい、すぐによく効く点が特質で、他にもテキメンソウ、イシャイラズ、イシャダオシなんて別名もあります。 わが家では、栽培はせず自生したゲンノショウコの採集に限っているため量が比較的少ないこともあり、腹痛や下痢のような症状が出た時にだけ利用する大事な薬草です。 開花期に、白や紫の花と深い切れ込みのある葉を目印に探すとよい 花は白と紫の2色あり 多年草で、草丈は30~50cmと低く、地表を這うように横へと広がりながら育ちます。深い切れ込みのある掌のような形の葉を地表付近からたくさん出し、葉や茎には毛も多くみられます。 主な生育場所は日当たりのよい野原、路傍、林縁、田んぼのアゼなど。よく草刈りされていて、明るい環境の所にしか生えていません。7~10月に白い花か紅紫色の花が咲きます。地域によってどちらかの色に偏りがあることが多いですが、薬効に違いはありません。 夏に収穫、半日日向でスピード乾燥 葉だけを見ると、有毒植物のトリカブトやウマノアシガタ(キンポウゲの仲間)に似ていて、慣れないと見分けがつきにくい。そのため採集するなら花が咲く季節がよいでしょう。昔から土用の丑の日あたりが適期といわれ、この時期に1年分の量の葉を取り、乾燥して保存してきたそうです。 私も7月下旬になると、自宅周りに生えている葉を採集して保存するのを恒例にしています。陰干しをするのがよいとよくいわれますが、半日程度は日向に干したほうが早く乾燥し、カビも生えにくくなります。 採集した葉を干してから保存。半日だけ日向で干してから陰干しするのが、乾燥を早くすませるコツ 豊富なタンニンが効能の元 ゲンノショウコの効能の元となる有効成分はタンニンです。とくに葉はその2割がタンニンというほど含有量が豊富で、6~8月が最も多くなるとされています。 煎じて飲むとタンニンによる苦みを感じますが顔をしかめるほどではありません。乾燥葉20gを500ml程度で煮出すのが目安ですが、もっと薄く煎じても効果はある気がします。鉄製のやかんなどで煎じるとタンニンが酸化して薬効が減るので、それ以外の材質のものを使います。 なお、現在の日本では薬事法で植物について食薬区分という分類が細かく定められていて、ゲンノショウコの地上部は医薬品とされています。食品として扱うことはできません。自家利用は構いませんが、自由な売買は禁止されているので注意が必要です。 棚田再生でゲンノショウコも復活 私の住む美作市上山。棚田の再生とともに、身近な薬草とそれを活かす暮らしが集落に戻ってきた(黒澤義教撮影) 棚田の再生が進みつつある私の住む美作市上山でも、かつてはゲンノショウコが群生して花畑になっていたそうです。しかし、それまでひたすら綺麗に手入れされ続けてきた棚田はいつしか放置されていき、やがて背丈を超えるほどのヤブに変わり、ゲンノショウコをはじめ、生育に日照が必要な植物たちは一気に姿を消しました。 現在になって再び、ヤブを刈り払い、背丈の低い草地に戻り、明るい環境を再現すると、ゲンノショウコが数を増やし始めてきました。私たち夫婦は草刈りの際、ゲンノショウコを見つけると、それを避けるように刈り払い機を操作します。適切な管理をすれば暮らしに有用な薬草が半永久的に採集できるようになるからです。身近な薬草を生活に取り入れようとすればするほど、人間も自然の一部であることやその恵みの大きさ、経験から得られた人類の叡智を実感する毎日です。 *月刊『現代農業』2020年8月号(原題:ゲンノショウコ)より。情報は掲載時のものです。 ――次回は「ハギ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。 ビワ( 6月6日) ハハコグサ (6月16日) タンポポ (6月21日) カキドオシ (6月27日) ハコベ(7月4日) クワ(7月12日) ヤブカンゾウ(7月19日) ゲンノショウコ(7月26日) ハギ(8月4日) オオバコ(8月24日) アザミ(9月6日) ヒキオコシ(9月14日) タラノキ(10月12日) スギナ(10月26日) ナズナ(11月17日) フキ(12月6日) イタドリ(1月9日) ドクダミ(2月21日) ツユクサ(3月19日) ノブドウ(4月23日) メナモミ(6月14日) カキ(7月13日) ナツハゼ(8月22日) ヨモギ(9月27日) 過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。 過去の連載を読む この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。 ▼草楽のホームページ▼ ▼草楽のネットショップ▼ ▼草楽のイベント情報など(facebook)▼https://www.facebook.com/ueyamasouraku 大地の薬箱 食べる薬草事典春夏秋冬・身近な草木75種村上光太郎 著薬草の恵みをもっとも効率よく取り入れる方法は「食べる」こと。そして薬草になる植物は春夏秋冬いつでも身近にある。75種の草木をおいしく食べる料理法を重視し、薬酒や薬草酵母、薬草茶の作り方まで紹介。 小さいエネルギーで暮らすコツ太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる農文協 編輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。 この記事を見た人への現代農業WEBおすすめコーナー 農家のくらし知恵袋 Tags: 薬草, 健康, 漢方