岡山・松原徹郎
この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!
暖かい地域は葉が丸い
この連載も開始から約1年半になります。毎回、ピックアップする植物は、いくつかの条件に合うものから考えて選んでいます。たとえば、比較的全国に分布しているかどうか。また、繁殖力が旺盛かどうかも条件の一つです。
現代農業2021年7月号は、巻頭特集で多年生雑草の駆除について取り上げられています。私の連載でもこれまでいくつか多年生の草を取り上げてきましたが、いずれも農家にとっては作物の生育を阻害する「強害草」でいわば目の敵。除去するのに躍起になる草ばかりと思います。ただ、もしも役に立つ草とわかれば、むしりがいもあるかもしれませんね。
それはさておき、今回はツユクサをご紹介します。やはり全国的に分布している草で、一般的なツユクサの他に、関東以西の暖かい地域には、葉が丸い形のマルバツユクサも分布しています。
タネの寿命が長く厄介な雑草
生育できる環境の幅は広く、湿潤でさえあればけっこうどこにでも生えています。ツユクサは一年生雑草ですが、タネは春から夏にかけて長い間発芽し続けます。畑などにタネが眠っていると、いつまでも新たな芽が出てきます。タネの寿命も長く、山火事の後に、25年間地中にあったタネが10%以上発芽して、一面に生えたことがあるそうで、ずいぶんなしぶとさです。発芽後は地面を這うように育ち、引き抜こうとすると根元からちぎれるので、なかなか完全に除草しきれない厄介な草です。
解熱、消炎など薬効は豊富
そんな厄介者のツユクサですが、薬効はたいしたものです。開花期の夏に全草を乾燥させたものが鴨跖草《おうせきそう》と呼ばれる生薬になり、煎じ液は下痢止め、風邪の時の解熱、扁桃腺炎、利尿、喘息、リウマチ、心臓病、むくみの改善に効くとされています。生葉の汁を飲んでも、同様の効果があるとされています。
くわしい成分分析の研究はあまり多くありませんが、ミネラルをはじめ、タンニンやフラボンが含有されているので、食用では消炎作用や体内の水分調節などの効能が期待できます。
また、外用では、生葉の汁を入浴剤として風呂に入れると、湿疹やかぶれ、あせもなどによく、口内炎、結膜炎、腫れ物、痔などには、青紫色の花の汁を患部に塗ると効果があるといわれています。
さっと茹でてサラダがおいしい
私は3反ほどの畑でいろいろな薬草を育てていますが、除草剤を使わないため、毎年ツユクサが大量に生えてきます。ひたすら生え続けるので、さすがに大量すぎて大半は刈るなどして除草します。
ただ、わが家では6月、梅雨時期から生え始める新しくて軟らかいツユクサの葉だけを、両手の手のひら1杯程度摘み取って、食材として利用しています。その後も夏までは、週に1~2回程度摘み取ります。
実際に食べてみるとわかりますが、苦みもクセもなく食べやすい。サラダ、ゴマ和えや味噌和えなどのお浸し、炒め物、味噌汁の具などいろいろな料理に使えます。まったく生のままで食べるより、しゃきしゃき感が残るぐらいに少しだけゆがくと、より歯ざわりよくおいしく食べられる気がします。
また、欲張って大きく育ったツユクサばかりたくさんとらないこともおいしくいただくコツ。ツユクサは生長するにしたがって繊維が多くなり、食感がかなり悪くなるからです。
軟らかい部分だけを選んで摘むのはたしかに手間です。ただ、山野草や薬草はどれも同じですが、この手間を惜しんで雑に摘むと、おいしくないと感じて日常的に食べる気がだんだん失せていきます。
花も数は少ないですが葉とともに摘み取って食べています。昔は花だけを摘み取って染色に利用していたようですが、必要な量を集めるのは大変な労力だったことでしょう。困難なので、私は花だけ摘むことはしていません。
ツユクサ料理で夏でも快調
梅雨あたりから猛暑の夏にかけて、ツユクサ料理を食べると、汗などで出入りの激しい水分の体内調節がうまくいくのか、疲労感が減ります。消炎・解熱作用のおかげか、熱中症や過度の日焼けもだいぶ和らぐ気がします。本格的な解熱作用も試したいと思って、毎年夏を迎えるのですが、薬草生活を始めてから夏風邪(どころか一年中)をまったくひかなくなってしまったので、その効果だけはまだわからずにいます。
家庭菜園でも嫌がられる雑草の一つではありますが、ひょっとすると育てている作物よりも価値があるかもしれません。なんてことを以前話したら、気分を害された方がいたので、最近はそこまではいいませんが、皆さんも試しにいちどは食べてみてはいかがでしょうか。
*月刊『現代農業』2021年7月号(原題:ツユクサ)より。情報は掲載時のものです。
――次回は「ノブドウ」です。どうぞお楽しみに。
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