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【植物はあれもこれも薬草です】第13回「タラノキ」新芽はミネラルたっぷり 根皮は胃腸病・糖尿病の生薬

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

ウコギ科タラノキ属。その地域のソメイヨシノの満開期が、タラノメの収穫開始の目安といわれる。別名ウドモドキ イラスト 久郷博子
ウコギ科タラノキ属。その地域のソメイヨシノの満開期が、タラノメの収穫開始の目安といわれる。別名ウドモドキ(イラスト:久郷博子)

ミネラル豊富な山菜の王様

新芽であるタラノメ。美味なうえに栄養も豊富
新芽であるタラノメ。美味なうえに栄養も豊富

 早春の山菜、タラノメ。このタラノキの新芽は、天ぷらにすると味がしっかりしていて歯ごたえもいい。山菜の王様と呼ぶにふさわしいおいしさです。タラノメ好きな人は、生えている場所を覚えておいて、毎年とるのを楽しみにしていることでしょう。

 一方で、最近の若い人の中には「一度も食べたことがない」「なんですか、それ」とよく知らない人も結構いるようです。食文化というのは時代によって変わってしまうものだなと感じます。

 タラノメにはカロテン、カリウム、マグネシウム、リン、鉄分などが豊富に含まれていて、ミネラル補給に非常に有効です。脂質やタンパク質も多く、優れた機能性食品といえます。

根や幹の皮は糖尿病の生薬

タラノキの根。根や幹の皮は、古くから生薬として利用されてきた
タラノキの根。根や幹の皮は、古くから生薬として利用されてきた

 また、根や幹の皮は生薬として使われます。タラ根皮《こんぴ》といって、煎じて飲むと、健胃・整腸、胃腸病、糖尿病、神経痛、高血圧症、腎臓病、強壮強精に効果があるとされています。民間医療では、胃腸病のほか、糖尿病の薬草の一つとして用いられてきました。

 家内の田舎は島根の山奥にあります。帰省した時、糖尿病の方が自家用に使うためにと、トゲの多い太いタラノキを切ってきて、樹皮を鉈ではいでいる光景をよく見かけたものです。

樹皮のお茶でアクをいただく

 タラノキの樹皮を煎じたお茶は、茶色でアクが多く、タラノメと同様の苦みがあり、少しえぐい感じもします。人によっては、飲み始めの頃に吹き出物が出たり、下痢になったりすることもありますが、数日続けて慣れると、そうした症状はたいてい治まります。

 薬草・野草全般にいえることですが、草がもつアクに薬効や身体によい成分が含まれていることが多いので、アクをまったく取り除いてしまうのはもったいない。

 また、タラノメで、生薬として用いられてきたのは根や幹の皮ですが、有効成分は芽や葉などその他の部分にも含まれているはずです。暮らしの中で役立てるというのであれば、そうした部分の成分も活かすのがよいでしょう。

 メダラと呼ばれるトゲの少ないタラノキもたまに生えています。樹皮が取りやすいのでおすすめです。

タネは数十年休眠できる

 タラノメを探すときは森林の縁、いわゆる林縁を探します。タラノキは先駆性樹種といわれ、森林を伐採した際、いちばん最初に芽吹いてくる木です。一日中日が差し込むような、日当たりのよい場所によく生えます。

 大きく育つと、幹の一番上にたくさんの花をつけ、おびただしい数のタネができます。このタネをムクドリやツグミ、ヒヨドリなどの鳥が食べ、糞と一緒に周辺へとタネを運んでいきます。タネは数十年以上、平気で眠っていることができ、光が差すなど条件が揃うと休眠から解けて一気に発芽します。

根から増やす、2mで切り戻す

栽培する場合は、掘り出した根を植え付けて増やす。10~20cmほどに根を切り分け、切り口に灰をつけてから植える
栽培する場合は、掘り出した根を植え付けて増やす。10~20cmほどに根を切り分け、切り口に灰をつけてから植える

 毎年タラノメを求めてあちこち探すのも大変と、栽培している人も少なくないようです。その場合は、タネから増やすよりも根で増やしたほうが簡単です。

 タラノキは根を横に伸ばし、そこから新しい幹を発生させます。そこで、晩秋に根を掘り取り、20cm程度に切って植え付けます。この時、ジャガイモと同じように、切り口に灰をまぶすと活着がよいようです。順調にいけば2、3年後の春には芽が収穫できるでしょう。

 ただ、平地で毎年収穫していると、どんどん木が弱ってきます。原因は養分とミネラル不足。2年に1回程度、草木灰を根の付近に厚さ1~2cmほど施してやると、長く旺盛に育ちます。

 木が元気なら春先に1回収穫した後も、次々とわき芽が伸びるので、梅雨時までは何回か収穫可能です。

 放っておくと高さ5~6mになり、芽がとりにくくなるので、2年に1回程度、高さ2mほどで切り戻してやります。私の地域ではシカが増え、1mだと早春の芽を食べられてしまうので、シカが届かない1.5m以上に仕立てています。

 タラノキ増殖で健康増進、豊かな薬草ライフを楽しんでくれる人が増えると嬉しいです。

夏場にはたくさんの花をつける。高さ2mほどで切り戻すと、大木化を防げる
夏場にはたくさんの花をつける。高さ2mほどで切り戻すと、大木化を防げる

*月刊『現代農業』2021年1月号(原題:タラノキ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「スギナ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

連載

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」(無料お試しあり)でまとめて見ることができます。ぜひご覧下さい。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

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