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【植物はあれもこれも薬草です】第17回「イタドリ」皮ごといただく ピンクのジュースで疲労回復

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

イタドリ タデ科イタドリ属。生長すると茎は木質化し、草丈が150cmに達するものもある。夏から秋に白色または淡紅色の小花をつける。北海道や東北地方にはもっと大型で近縁種のオオイタドリが分布 イラスト 久郷博子
イタドリ タデ科イタドリ属。生長すると茎は木質化し、草丈が150cmに達するものもある。夏から秋に白色または淡紅色の小花をつける。北海道や東北地方にはもっと大型で近縁種のオオイタドリが分布(イラスト:久郷博子)

いち早く生える強い生命力

 今回は皆さんもおなじみのイタドリをご紹介。日本全国に分布しているやや大型の多年草です。日当たりのよい少し湿った崩れやすいところ、つまり谷や崖崩れ跡などの攪乱された場所によく生えます。先駆的な性格の強い草で、そうしたところにどの草よりもいち早く太い根を巡らせます。

 とてつもない生命力の持ち主で、一度訪れた阿蘇の噴火口周辺に一面ビッシリ生えていたのはイタドリだけだったのが印象に残っています。その生命力から世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれていて、ヨーロッパにも帰化しています。イギリスではイタドリの根がコンクリートの建物を突き破るので、建設事業や地価に大きな影響を与える社会問題にまで発展し、わざわざイモムシのような天敵となる虫まで導入しているのだとか。

食べ頃のイタドリ(4月末に撮影)。草丈が30cm(5~6節)程度までのものが軟らかくてよい
食べ頃のイタドリ(4月末に撮影)。草丈が30cm(5~6節)程度までのものが軟らかくてよい

関西ではスカンポ、岡山ではサイシンゴ

 そんなイタドリですが、生活圏にはどこにでも生えるからでしょう、日本人に最もなじみ深い山菜の一つでもあります。4~5月頃、春先に出ている若い茎をポキッと折って皮をむいて食べた経験のある方も多いことでしょう。もともと私が住んでいた関西ではスカンポ、今住んでいる岡山ではサイシンゴと呼ばれ、地方独自の呼び方が日本で一番多い野草であるともいわれています。

痛み止め、疲労回復に役立つ

 痛みを取るから「痛取《いたどり》」。平安時代から切り傷や火傷に若葉を揉んで塗っていたことが知られており、止血と鎮痛効果があるとされてきました。利尿、便秘、膀胱炎、月経不順、神経痛、リウマチ、疲労回復などにも効用があるうえに、害は少なく老人や婦人も安心して使える薬草だとされています。

 生薬として用いられるのは太い根です。10~11月に掘り取って水洗いして乾燥させたものが、「虎杖根《こじょうこん》」として流通しています。虎のような茎の模様から名づけられた名称です。江戸時代にはこの虎杖根と甘草を煎じた汁が、夏の熱射病、頭痛に効く飲み物として販売されていたそうです。

若い茎を水にさらして食材に

 しかし、足腰に自信のある方は一度試してみてほしいのですが、イタドリの強靭な根を掘り取るのは非常に労力を伴います。そのためわが家では簡単に収穫できる地上部を利用しています。5月も中旬以降になると茎も葉も硬くなってくるので、それまでに採集しています。

 軟らかい若い茎を、皮を剥いてから刻んで10分ほど水にさらすと酸が抜けます。酢の物や野菜炒めの具材として使えます。漬物、醤油漬けにして保存もできるそうなので私も挑戦中です。うまく保存できれば一年中イタドリの味覚が楽しめます。

イタドリとベーコンの炒め物。シャキシャキの歯ごたえを楽しむ
イタドリとベーコンの炒め物。シャキシャキの歯ごたえを楽しむ

ジュースにして皮の赤い色をいただく

イタドリジュース。一日中草刈りをした後、これ1杯で翌日の疲労感は軽減する(黒澤義教撮影)
イタドリジュース。一日中草刈りをした後、これ1杯で翌日の疲労感は軽減する(黒澤義教撮影)
ツインギア式のジューサー。低速で圧搾し、搾汁率が高いのが特徴
ツインギア式のジューサー。低速で圧搾し、搾汁率が高いのが特徴

 料理の食材に利用するときは、少し硬いので薄皮は剥いてしまいます。しかし、イタドリの薬効成分が一番多く含まれているのはその皮の部分、赤い斑点を作る色素が重要といわれています。

 そこで、採取した地上部すべてをジューサーで粉砕してその搾り汁をいただくのが、この成分をムダなく上手に摂取するための一番効果的な方法です。わが家では結構強力な業務用に近いジューサーで搾っています。搾ったばかりの汁は緑色の濁った液体ですが、まる1日放置しておくと固形物と液体が分離して、上澄みはきれいなピンク色になります。舐めるとかなり酸っぱい。この上澄み液だけを水で5~10倍程度に薄め、お好みの加減で甘みを加えると「イタドリジュース」の完成です。疲労回復に効果抜群の非常においしい飲み物になります。

 水気の多い草ですが、20kgコンテナいっぱいのイタドリを搾ってもコップ2杯分ぐらいしかとれません。根気のいる作業です。

 イタドリには、さまざまな有機酸とともにシュウ酸も多く含まれているので、食べ過ぎには注意です。大量に摂取すると体内でシュウ酸カルシウムが作られるため、特に結石を作りやすい体質の方は量を加減する必要があります。また、便秘を緩和する作用があるのですが、食べ過ぎると下痢になる方も多いので、やはり個人によって加減が必要だと思います。

*月刊『現代農業』2021年5月号(原題:イタドリ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「ドクダミ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

連載

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」(無料お試しあり)でまとめて見ることができます。ぜひご覧下さい。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

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