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【植物はあれもこれも薬草です】第2回「ハハコグサ」咳止めに飲む黄色いお茶

薬草

岡山・松原徹郎

コロナ禍がようやく落ち着きつつあるいま、人々の健康・未病への関心が高まっています。この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

春の七草の一つ

ハハコグサ キク科ハハコグサ属。秋に発芽し、冬越しして4〜5月に開花。日当たりのよい場所でよく見つかる (イラスト:久郷博子)
ハハコグサ キク科ハハコグサ属。秋に発芽し、冬越しして4〜5月に開花。日当たりのよい場所でよく見つかる (イラスト:久郷博子)

 今回取り上げるのはハハコグサ。春の七草の一つです。

 春の七草はもともと「春の七種」とも書かれていたようです。1月7日に7種類の野草や野菜が入った粥を食べ、邪気を祓い、一年の無病息災と五穀豊穣を祈る風習です。

 「せり、なずな、おぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」という覚え方がありますが、これを今の植物和名に置き換えると「セリ、ナズナ、ハハコグサ、ハコベ、コオニタビラコ、カブラ、ダイコン」となります。

 前の五つが野草で、どれも田んぼの周りに生える一年生(越年)の草です。冬場はまだ花をつけておらず、冬越しのためのロゼット状(茎が短く根からすぐに葉が出ているような状態)のものが見つかります。なお、畑地に生えるホトケノザという草がありますが、七草でいうほとけのざはコオニタビラコ、別の草です。

ロゼット状のハハコグサ(3月末)
ロゼット状のハハコグサ(3月末)

痰切り、咳止めに役立つ

 七草には食べて美味しいセリとナズナ、クセのないハコベもありますが、私がとくに力を入れているのが、ハハコグサの採集と利用です。

 ハハコグサは優れた去痰鎮咳(痰切り、咳止め)作用のある鼠麹草《そきくそう》という生薬で、百日咳や気管支炎などにも有効とされています。

 繊維質が多く、白く長い毛があるので、やや食べづらいのですが、若い葉は天ぷらやお浸しにできます。

 草もちの材料にも使えます。もともと草もちはヨモギではなくハハコグサが使われ、今でも岡山県や広島県の山間部ではこの風習が残っているようです。ヨモギと違い、アク抜きしなくても使えます。興味深いことに、台湾の方もハハコグサを見て「これで草もちがたくさん作れますね」といっていました。漢方文化圏でも草もちにはハハコグサが一般的なようです。

開花期の草を採りためる

開花期のハハコグサをたくさん採集して利用する。田んぼ一面に広がったハハコグサを一株ずつ摘み取る
開花期のハハコグサをたくさん採集して利用する。田んぼ一面に広がったハハコグサを一株ずつ摘み取る

 私の住む上山《うえやま》集落では4月中旬から5月中旬までが開花期です。田んぼは5月まで起こさないので、レンゲとハハコグサが色鮮やかに一面咲き誇ります。この時期のハハコグサをとくに一生懸命採集しています。

 収穫したハハコグサは春先の日差しの下、天日乾燥します。乾燥した葉や花を適量入れて20~30分煎じると黄色い色鮮やかなお茶になります。クセもほとんどないので日頃からよく飲みます。とくに咳き込むときには、たくさん飲むようにするとずいぶんラクになります。

 採集するときは1株ずつ手で摘んで、泥がついた部分があれば、その都度取り除きます。20kgコンテナいっぱい採るのに2人がかりで丸一日かかりますが、棚田からの恵みと毎年採集に励んでいます。

採集したら天日乾燥。1年以上保存でき、乾燥した葉や花を煎じるときれいな色の飲みやすいお茶になる
採集したら天日乾燥。1年以上保存でき、乾燥した葉や花を煎じるときれいな色の飲みやすいお茶になる

七草粥で病気を未然に防ぐ

 七草粥の風習は平安時代に始まったそうです。旧暦の1月7日は今なら2月7日頃になります。実際、暖かい地域でなければ1月に田んぼに七草はまだ生えていません。

 また、同じ田んぼでもコンバインで収穫し、裁断されたワラが敷き詰められた田んぼや、晩秋に耕耘した田んぼは、七草が少ししか生えません。日照が足りなかったり、冬越しの葉が破壊されてしまうからです。

 七草粥を食べるのは「病気に強い体づくり」が目的です。正月の荒れた胃腸を消化のよい七草粥で癒すためというのが一般的ですが、それだけではありません。3~4月に最低気温と最高気温の差が大きくなる際、体に大きな負担がかかり、風邪やその他の病気になりやすくなるのですが、これを未然に防止するのが一番大きな目的です。

 七草はどれも豊富なミネラルを含んでいて、セリは去痰と滋養強壮、ナズナは優れた止血作用、ハコベは強力な消炎作用、コオニタビラコは健胃腸作用もあります。

 わが家では毎年2月中旬から3月いっぱいまで、七草を摘んでは七草粥を作り、週に1回は食べるようにしています。おかげでここ数年、家族みな風邪をほとんど引かず、インフルエンザにもかかっていません。

 七草は未病状態を保つ知恵の集積。寒い時期ですが、田んぼへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

薬草利用の年間スケジュール

 私は毎年、棚田に自生する30種以上の薬草を採集しています。標高が400mほどあり、夏でも涼しい上山集落。厳冬期は植物の数も減り、利用できる薬草は多くありません。私が年間を通してどのように薬草を利用しているか、少しだけご紹介。

 季節ごとに消長のある植物に合わせ、1年間を大きく3つのシーズンに分けます。年間通じて上手に利用するには、薬効のある時期にどう効率的に保存するかがポイントです。

早春~春 ―― そのまま食べる

 芽吹きの季節。植物の組織が未発達で繊維も柔らかい。そのまま料理に用いるのに適したシーズン。この時期は野菜を買わず野草だけで十分食卓が賑やかになる。植物が水分を多く含んでおり、干してもスカスカになってしまうので、乾燥加工はあまり行なわない。

 

初夏~秋 ―― 薬草茶を作る

 梅雨明けから晩秋までは植物の成長著しいシーズン。繊維もかなり固くなり、アクも多くなる。天日で簡単に乾燥できる時期なので、乾燥させて薬草茶作りに励む。

晩秋~冬 ―― 根を掘り出して利用する

 植物は地上部が枯れ、ほとんど利用できるものはなくなる。しかし、多年草は秋までに貯めた栄養がすべて根に蓄積されているので、掘り出して根を利用する。

 

*月刊『現代農業』2020年2月号(原題:ハハコグサ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「タンポポ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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春夏秋冬・身近な草木75種
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薬草の恵みをもっとも効率よく取り入れる方法は「食べる」こと。そして薬草になる植物は春夏秋冬いつでも身近にある。75種の草木をおいしく食べる料理法を重視し、薬酒や薬草酵母、薬草茶の作り方まで紹介。

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輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。

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