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【植物はあれもこれも薬草です】第4回「カキドオシ」 大地から吸い上げたミネラルをいただく

岡山・松原徹郎

この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

春の薬草でミネラル補給

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カキドオシ シソ科カキドオシ属。日当たりのよい湿った場所を好む多年草(イラスト:久郷博子)

 すっかり春めいてくるこの季節(4月)。春は野の草のアクが少なく、軟らかいので、日々の食事に野菜代わりに取り入れるにはうってつけです。わが家では4~6月は、毎日のように野草や薬草が入った料理が食卓に並び、野菜を買うなんてことはほとんどありません。

 薬効あらたかな草を薬草、その他の食べられる草を野草とあえて区別して書いてみましたが、薬草の多くは野草に比べて多少味が悪いものが多い。それでもわが家では、できるだけ薬草を食事に取り入れるようにしています。現代人はとかくミネラル不足になりがちなので、それを山野草で補うことで、病気にならない体質を作れるからです。

 春はタンポポ、カキドオシ、タラノキ、コシアブラ、セリ、ハコベ、アケビやフジの新芽、ウコギ、ツクシなどさまざまな薬草を、薬効に期待して積極的に食べたい時期なのです。

強烈な芳香が特徴

4月、花盛りの頃の様子
4月、花盛りの頃の様子

 春のさまざまな薬草の中から、今回紹介するのはカキドオシ。

 全国に分布していて、水田や畑地のアゼ、用水路やため池沿い、道端などによく見られます。2~4月頃に茎を直立させ、薄い紫色で唇のような形の花を二つずつつけます。花が終わる頃に茎が倒れ、つる状に這って長く伸びていく様子から「垣根通し、カキドオシ」という名前がつきました。

 生育は旺盛で、私が見てきた中では長いもので1.5mぐらいありました。葉は対生して丸く、縁に鈍いギザギザがあり、春より夏のほうが大きな葉をつけます。何より特徴的なのは香りで、茎や葉を少しかじるだけでシソ科特有の強烈な芳香があたりを覆います。

腎臓病や糖尿病などに用いられる

 乾燥したカキドオシの葉が連銭草《れんせんそう》という生薬となります。連なる葉の形からこの名がついたようです。煎じ液は腎臓病、糖尿病、各種結石に用いられます。胆汁の分泌促進や血糖降下といった作用もあり、胃炎、消化不良などの疾患にも有効です。煎じ汁や揉んだ葉を患部に塗ったり、生葉や乾燥葉をやかんで10~20分煮出したものを浴槽に入れて薬湯にすると、湿疹やあせもに効果があります。

 日本では疳取草《かんとりそう》ともいわれ、夜泣きがひどい子供の疳の虫の薬としても有名です。昔からお食い初めの食器に鶴亀とともに描かれるなど、庶民の生活に溶け込んできた民間薬でもあります。また、イギリスでも優れた薬として解熱、咳や耳鳴りの治療に用いられたり、ビールの香料に用いられたり、身近な薬草だったようです。

 カキドオシは倒れて横に長く伸びた茎の各節から根が伸びて地を進んでいく特徴があります。根が多いということは、それだけ土中のミネラルを吸い上げる力も強いということ。豊富に含まれるミネラルがカキドオシの効能をもたらしていると思います。

つるの各節からどんどん根を張って旺盛に生育する(黒澤義教撮影)
つるの各節からどんどん根を張って旺盛に生育する(黒澤義教撮影)

生春巻きでおいしくいただく

棚田のアゼに広がるカキドオシを根元から鎌で切ってどんどん採集する
棚田のアゼに広がるカキドオシを根元から鎌で切ってどんどん採集する

棚田のアゼに広がるカキドオシを根元から鎌で切ってどんどん採集する

 カキドオシは香りがすばらしいのですが(パクチーが苦手な人にはきついかもしれません)、苦みが強く、食感は今一つです。おいしく食べるには少し工夫が必要かもしれません。わが家も毎年大量に採集しますが、食べるよりも煎じて飲んだり、風呂に入れたりする使い方が多く、食べる用、煎じる用、風呂に入れる用の比率は1対5対4といったところです。

 もしも生の葉を食材として料理に使うなら、生春巻きの具材にすると非常においしくいただけます。また、ハーブティーで楽しんだり、香りづけにシチューなどに少量入れたりします。ハーブティーにするなら、他のお茶や野草も混ぜて、カキドオシの分量は少なめがいいでしょう。

長期保存には乾燥機が便利

 採集後につるごと葉を乾燥させると長期保存できます。ただし、水分と油分が多いせいか、天日乾燥ではなかなか乾かないので要注意。乾いたと思っても保存中にカビが生えることも多いので、私は電気乾燥機を使って数時間かけて乾燥します。乾燥機なら色もよく、カビなどの劣化もみられません。乾燥葉を細かく砕いて塩に混ぜれば、香り豊かなハーブソルトになります。

 ちなみにカキドオシの花言葉は「楽しみ、享楽」。みなさんもぜひ優秀で身近な薬草を摘んで、日々の生活を楽しみましょう。

*月刊『現代農業』2020年4月号(原題:植物はあれもこれも薬草です(4)カキドオシ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「ハコベ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

この連載の著者の松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

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