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【植物はあれもこれも薬草です】第3回 タンポポ 健胃・解熱・強壮 野菜感覚でタンポポ料理

岡山・松原徹郎

コロナ禍がようやく落ち着きつつあるいま、人々の健康・未病への関心が高まっています。この連載は、月刊『現代農業』の2020年1月~2021年12月まで全24回にわたって掲載された連載「植物はあれもこれも薬草です」です。身近な薬草を毎日の暮らしに取り入れるための知恵が満載です。病気になりにくい身体づくりを実現しましょう!

日本には20種類のタンポポがある

キク科 タンポポ属。多年生で繁殖力も旺盛。江戸時代に園芸植物として栽培もされていた(イラスト 久郷博子)
キク科 タンポポ属。多年生で繁殖力も旺盛。江戸時代に園芸植物として栽培もされていた(イラスト 久郷博子)

 暖かい日射しが感じられ始める春先は、様々な薬草が生長を始めるので、こちらもそわそわする季節です。先月ご紹介した春の七草に加え、タネツケバナ、ヤブカンゾウ、スギナ(ツクシ)、カキドオシ、イタドリ、アケビ、アマナなどが採集する薬草のラインナップに加わります。その中から、今回紹介するのはタンポポ。

 一口にタンポポといっても、日本には20種類あまりのタンポポがあることが知られていて、地域ごとに多様性がみられる植物です。私が住む上山集落には、在来種で最も小ぶりなカンサイタンポポと、外来種のセイヨウタンポポが多く見られ、たまに花が白い在来種のシロバナタンポポや、外来種で実に赤みがあるのが特徴のアカミタンポポが見つかるといった感じです。

在来種は春にだけ花が咲く

在来種のカンサイタンポポ。総苞外片が反り返っていないのが在来種の特徴
在来種のカンサイタンポポ。総苞外片が反り返っていないのが在来種の特徴

 在来種と外来種などのくわしい見分け方は割愛しますが、外来種は花の一番外側にある総苞外片《そうほうがいへん》という部分が外に反り返っている点が明確な特徴です。

 また、花期にもはっきり違いがあり、在来種は3~5月しか花が咲きません。夏、秋、冬にも花が咲いていたらまず間違いなく外来種というのも覚えやすいと思います。とはいえ、現在は生えているタンポポの9割が在来種と外来種の交雑ともいわれており、見た目だけでは、遺伝的に純粋な在来種か特定できなくなりつつあるようです。

 ヨーロッパではタンポポが冬場の貴重な野菜として栽培されています。一方で、芝生に生えたタンポポは、目の敵にされてすぐ抜かれてしまうそうで、立場が微妙な存在でもあるようです。

健胃・解熱の生薬になる

 タンポポの全草を乾燥したものが、蒲公英《ほこうえい》という生薬として用いられており、健胃・解熱・発汗・利尿などの作用があるとされています。

 また、鉄、マグネシウム、カリウムなどのミネラルとビタミンA、B、C、Dを多量に含んでいることが知られていて非常に有用な野草です。

 さらに女性ホルモンのような作用があり、産後の乳汁分泌促進作用や美肌効果が期待できます。健胃・食欲増進作用の他に血液浄化作用もあります。

 薬草としては種類の違いは関係なく、どれも同様に使うことができます。

葉を料理にふんだんに使う

タンポポの葉と豚肉のミルフィーユカツ。葉と豚肉を重ねて揚げるだけで作れる、わが家の定番料理
タンポポの葉と豚肉のミルフィーユカツ。葉と豚肉を重ねて揚げるだけで作れる、わが家の定番料理
タンポポの葉と豚肉のミルフィーユカツ。葉と豚肉を重ねて揚げるだけで作れる、わが家の定番料理

 わが家ではタンポポの葉、花、根を料理にしてよく利用しています。

 まずは葉。4月までの葉は苦みもなく、そのままサラダに使えます。4月以降は葉が硬くなり苦みも増すので、油で炒めたり、さっと茹でて、酢の物や和え物などにしたりして食べます。

 タンポポの葉と豚肉のミルフィーユカツも定番料理です。タンポポの葉と薄切りの豚肉を交互に積み重ね、フライの衣をつけて揚げれば完成です。簡単でおいしくて食べごたえがあります。

 葉の量は早春から春が一番多く、畑でも目立つので、この時期にたくさんとっておきます。余った葉は天日で乾燥させてから粉末にして保存。料理にふりかけて使い、夏から冬もタンポポの葉を役立てています。

花で作る酒、根で作るきんぴら

 花はタンポポ酒にしています。

 開花が多い晴れた日にたくさん摘んで2~3Lのビンに半分ほど詰め、氷砂糖約200gとホワイトリカー約1.2Lを加え、3カ月ほど放置してから、最後に濾して花だけを取り除いたら完成です。摘んだ花を洗わないのがわが家のこだわりです。毎日タンポポ酒を少しずつ飲めば、健胃と強壮作用が期待できます。

 根はスコップでできるだけ折らないように掘りとって、きんぴらにします。作り方はゴボウのきんぴらと同じ。ほろ苦い大人の味ですが、酒のツマミとしてかなり乙な一品になります。

 このようにタンポポは野菜感覚で楽しめる身近で気軽な薬草です。

タネ採りで増やす

タンポポは栽培にも向く。畑で育てれば大量のタンポポをすぐに揃えられる
タンポポは栽培にも向く。畑で育てれば大量のタンポポをすぐに揃えられる

 タンポポの生育地は、田んぼや畑のアゼ、ため池・農業用水路の土手など、毎年定期的に草が刈り取られ、かつ人に踏みつけられない場所です。

 多年草で太い根があり、ひげ根まで掘ると地下1m以上に達しています。しかし草丈は低い。さらに生育に光をたくさん要求するため、草刈りをやめるとタンポポの姿は消えていきます。

 道端に生えているので犬のおしっこや農薬などが気になって採集を躊躇する人も多いかもしれません。草刈りをして、タンポポによい環境を整備するのが一番ですが、タンポポは畑でも育てられます。タネを播いて1年でかなり大きな株に育ちます。

 タネは綿毛の頃に手で取って集めておきます。綿毛をライターで燃やしてから播くと風による移動を防ぎ、発芽率も若干上がるようです。草刈りした場所にタネ播きすることで、株の増加をさらに促進できます。

 身近な薬草として日々活用するなら量も必要。皆さんも身の回りのタンポポを増やしてみてはいかがでしょうか。

*月刊『現代農業』2020年3月号(原題:タンポポ)より。情報は掲載時のものです。

――次回は「カキドオシ」を掲載予定です。どうぞお楽しみに。

松原徹郎さんが代表を務める「草楽(そうらく) 」のホームページやイベント情報、オンラインショップなどへのリンクは以下のとおりです。

▼草楽のイベント情報など(facebook)▼

https://www.facebook.com/ueyamasouraku

過去に月刊『現代農業』で連載された「植物はあれもこれも薬草です」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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