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【家族4人で幸せ自給生活】第9話:水を自給する

北海道・三栗祐己

現代農業(2021年4月から1年間)の人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を加え、web限定で復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちで作りながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家。当時誌面に載せきれなかったお話も含めて、月に2回お届けします。

無事に出た井戸水

こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。

生きていくためには、電気・ガス・水道といったライフラインが欠かせませんよね。

今回は、そのなかの一つ、水道について、我が家のお話をさせていただきます。

水を自給するには?

2018年8月から始まった現在の山暮らしですが、ここに移住してくる前は、普通のアパートに住んでいました。アパート住まいとは言っても、当時から「パーマカルチャー研究所」という屋号を掲げて、自給自足的な暮らしを追求していました。

具体的には、2015年に、自宅近くに、100坪の土地(原野)を購入し、そこで「ライフラインを手作りして住んでみる」という実験をしていました。

自作した小屋
自作した小屋

僕はこの土地に小屋を建て、「オフグリッド生活実験フィールド」と名づけて、色々実験してました。太陽光発電を設置して電気を使えるようにし、トイレも手作り(モバイルエコトイレ)、薪ストーブも設置しました。

自作した小屋と太陽光パネル
自作した小屋と太陽光パネル

と、ここまでは順調だったのですが……

自然から「水を得る」というのは、本当に大変でした。水を得る方法として、当時考えたのは、

①雨水を集める

②川から水を引いてくる

③井戸を掘る

の3つです。

①の雨水は、生活に必要な量、1日100L程度の水を集めるのは大変そう。②の川から引く方法は……そもそも近くに川がない。そこで、③の「井戸を掘る」に挑戦してみました。

井戸掘りなど全く未経験です。本で井戸の掘り方を調べながら、試行錯誤の末、3ヶ月ほどでようやく水を出すことに成功しました。

井戸掘りを開始。掘れるところまで手掘りし、その後、掘った穴に水を入れ、長い棒で底を突ついて軟らかくし、手作り井戸掘り器などで土砂を引き上げながら掘り進んでいく。
井戸掘りを開始。掘れるところまで手掘りし、その後、掘った穴に水を入れ、長い棒で底を突ついて軟らかくし、手作り井戸掘り器などで土砂を引き上げながら掘り進んでいく。

三栗さんが井戸掘りの参考にした本は、曽我部正美さん著『自分で出来る打ち抜き井戸の掘り方』(KN企画)です。

と、水が出たところまではよかったのですが、この井戸水、以下のような問題があり、なかなか安定しませんでした。

  • なぜか毎年秋になると水がほとんど涸れてしまう
  • せっかく出てきた水も、金気(カナケ。錆びた鉄のような不快なにおい)がある
  • イトミミズがたまに混入する
  • 水が茶色く濁っている
  • 冬はポンプが凍結して水が汲めなくなる

僕は、当時「オフグリッド生活実験フィールド」の実践のようすをブログに書いていたのですが、ある日見知らぬ人からそのブログにコメントが入っていました。その方が、現在僕たちが暮らしている山のオーナー、山家(やまか)さんを紹介してくださいました。その縁で、2018年8月に、今の住んでいる山に引っ越してきました。

感動の伏流水

現在、僕らが住んでいるこの「エコロジー村」(と僕たちは呼んでいます)では、生活用水に山の伏流水(地下水)を使っています。

今から20年以上前、伏流水を水源とした水道をつくったのが、土木工事のプロである山家さんです。

伏流水ですから、水道代はかかりません。この水は、季節によって水量が変動することがなく、20年以上、ずっと安定して使い続けられているそうです。

水道を家に引く前は外で炊事
水道を家の中まで引く以前は、外で炊事をしていた

僕たちが、初めて山家さんの家を訪れたとき、その自給自足の暮らしぶりを見て感動をしましたが、最も感動したものは、この使い放題の水道(伏流水)でした。

普通の人はこの水道を見ても、なんとも思わないかも知れませんが、僕たちは、井戸を掘って水を得ることの大変さを身にしみてわかっていたので、この自作の水道には驚きました。

そしてこの水が本当に美味しいのです。ふつう、水道の蛇口から出た水を「そのままゴクゴク飲みたい」、という人は今の時代稀ではないでしょうか。

しかし、この水は違います。ついついたくさん飲んでしまうほどおいしいのです。

ちなみに、自給自足を極める山家さんは、夏はこの伏流水の水温(冷たさ)を利用した手作りエアコンで、冷房しています。

ビールを冷やすのにも使う水
家の中に水道があるありがたさ。我が家には冷蔵庫がないので、ビールを冷やすときなどは、この水を流しっぱなしにします。

水道凍結の恐怖

このように、最高の水環境の中で暮らしている我が家ですが、一方で苦労もあります。それは、冬期の水道凍結です。

我が家の水道管は、一部が屋外にむき出しになっているので、外の気温が氷点下になるとたちまち凍結してしまいます。ですから、冬は凍結防止のため、常に水を流しっぱなしにする必要があります。しかし、たまに、うっかりして水を止めてしまうことがあるのです。そうすると、真冬ならば1時間ほどで水道管が凍結してしまうのです。

「凍結したらお湯で解かせばいい?」いいえ、そんな簡単なことではありません。凍結したての0°Cくらいの氷ならば何とか解けるかも知れませんが、真冬の外気温にさらされた氷点下10°C程度の氷は、シロウトの僕たちではどうすることもできないのです。一度水道管がこのような状態になってしまったら、最低気温がプラスになる3月末までは、水道が使えなくなってしまいます。

冬の夜、深夜に及んだ解氷の作業。もちろん外は氷点下
冬の夜、深夜に及んだ解氷の作業。もちろん外は氷点下

そして、12月のある寒い日の夜、ついにやってしまいました。間違えて水を止めてしまったのです。水道管はたちまち凍結しました。

時間は22時。普段なら就寝の時間ですが、ここで寝てしまったが最後、3月までは水が使えなくなってしまいます。即、家族総動員で対処開始です。

すぐにでも水道管にお湯をかけて解かしたいところですが、肝心の水が出ないのです。家中の暖房器具を集めて、まずは、雪を解かしてお湯を作りました。同時に、水道管にあらゆる布を巻き付けてはお湯をかけていきます。最初に復活したのは外の蛇口でした。

水道管に布を巻きつけてお湯をかける
水道管に布を巻きつけてお湯をかける

しかし、家の中へつながる水道管がなかなか復活しません。時刻は24時をまわり、とうとう娘と、しばらくおいて息子も力尽きて寝てしまいました。残った妻と2人で必死に復旧作業を続け、ようやく蛇口から一滴の水が――。

「キターッ! 解けてきたよー」

時刻は、午前3時半になっていました。

水道管が凍結した翌朝のようす。必死に巻きつけた布が見える
水道管が凍結した翌朝のようす。必死に巻きつけた布が見える

我が家の水道事情、いかがだったでしょうか。ときにはこんな大変なことが起こったりしますが、自然の恵みの美味しい水を毎日使えて、とても満足しています。

水を自由に使えることは決して当たり前ではないことを忘れず、今日も感謝して水を使わせていただきます。

次回(10月下旬)は、暖房のお話をさせていただきます。お楽しみに。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』(農文協)を2024年7月中旬発売予定。

(写真提供:金本綾子)

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン

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田口恒夫 訳
小祝慶子 訳

都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。

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