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【アイガモさんいらっしゃい!】第2話:かわいいヒナたちよ、ようこそわが家へ!

大分・長野恵里子

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農文協から2023年8月に単行本『草刈り動物と暮らす』(髙山耕二著)が発行されました。本書の発売にあわせて、ヤギとともに草刈り動物の代表である「アイガモ」飼育の連載をスタートします。この記事は「現代農業WEB」でしか読めないオリジナル連載です。今年(2023年)、はじめてアイガモ農法にチャレンジする著者と、アイガモの成長、地域のようすなどを月に1回お届けします。

ヒナ

田んぼの雑草対策と、動物を飼いたいという想いが合致して始まったアイガモ農法。

第2話は、ヒナ到着前後のようすをお伝えします!

アイガモを入手する!

昨年から田んぼ(12a)をつくり始めた大家さん。今年は「ひとめぼれ」に挑戦。
アイガモを放つ田んぼ。今年は12aの田んぼで「ひとめぼれ」という品種をつくっている。

私が現在住む古民家へ引っ越したのが、5月の連休明け。そして大家さん(第1話参照)が田植えをしたのが5月下旬。アイガモを飼うことを話し合ったのは、ちょうどその頃だった。すでに田植えを終えてしまっているということもあり、アイガモの準備は急がなければならない。「そうだ、学生の頃お世話になった農家がアイガモ農法をやっていた!」と思い出し、すぐに連絡をとってみた。大分県豊後大野市で有機農業を営む森岡雄平さん(ウジャマー農場)は、20年以上アイガモ農法を実践しているベテランだ。その森岡さんに、ヒナの入手先をはじめ、アイガモの基本的な飼い方(小屋の設置やネットとテグスの張り方など)を教わった。

息子さん(写真)とともに、「ウジャマ―農場」を営む。60aの田んぼでアイガモ農法を実践。餌も手作りで自給。
森岡雄平さんは、息子さん(写真)とともに、「ウジャマ―農場」を営む。敷地内にある手づくりの小屋では、ヒナの保育と、田んぼから引き揚げたアイガモの肥育を行う。
森岡さんの圃場のアイガモ小屋
森岡さんの田んぼとその一角に設置されたアイガモ小屋。小屋はパイプハウスに金網フェンスなどをはり付けており、周りは電柵で囲っている。例年60aの田んぼに約100羽のアイガモを飼育している。

すぐにでもヒナを迎え入れたかったが、私も大家さんも本業がなかなか忙しい。一般的なアイガモ農法では、田植え後10日前後にアイガモを田んぼへ放つのだが、我々はそこからだいぶ遅れ、田植え後3週間ほどしてヒナを迎え入れることとなった。そしてそれまでの間に、小屋やネット、電気柵設置の段取りをしなければならない。幸い、大家さんとその仲間たちとともに、手分けをして準備を進めることができた。(詳細は第3話にて)

ヒナは、県内で繁殖を行なっている有機農家がいるが、今年は野生動物の被害を受けたようで入手難となり、大阪のアイガモとアヒル専門の孵化場から購入することに。早速森岡さんから教えてもらったその「高橋人工孵化場」に連絡をとり、ヒナの入手が可能な時期、必要な数、品種と特徴、エサや水慣らしの方法などを聞いた。するとアイガモ農法では、水田10aあたり15羽程の数が一般的であるが、田んぼの状況などによっても変わるとのこと。大家さんとも相談し、我々の12aの田んぼには、アイガモ10羽と、アヒル(新大阪種)10羽の合計20羽を注文することにした。また通常はヒナの注文を受けてから孵化まで1カ月かかるらしいが、我々は注文数が少ないので、早く送ってもらえることとなった。ラッキー!

アイガモとアヒルのちがい

アイガモ(左)とアヒル(右)
生後2カ月を越えたあたりのアイガモ(左)とアヒル(右)

アイガモもアヒルも同じ種(マガモ種)ではあるが、野生のマガモを品種改良して家畜化したものがアヒル、そしてアヒルとマガモをかけ合わせたものがアイガモである。

アイガモとアヒル
アイガモとアヒルの2種類を一緒に育てている

アヒルは約3か月で3kgほどの成体となる一方、アイガモは4~5カ月で2kgほど。また、アヒルの除草効果はアイガモに比べると若干劣るようだが、人に慣れやすく、早く大きく成長する。この違いの実際を見てみたいと思い、2種類を一緒に育ててみることにした。

海外の反応は

ちなみにヒナたちが到着するまでの期間、私はモロッコへの渡航があり、道中の機内で古野隆雄さんの本(『合鴨ばんざい』(現在絶版))を熟読していた。するとなんとなく隣に座っている客の熱い目線を感じたので話しかけてみたところ、その人は、中東や北アフリカでなじみ深い「ホウバラ」と呼ばれる渡り鳥(ノガンの一種)の繁殖と保護の研究に関わっており、一家が鷹匠でもあるということで、アイガモ農法にとても関心をもってくれた。またモロッコの友人にもアイガモ農法を紹介してみたところ、たいへん驚いていたが、モロッコの草刈り動物について尋ねたところ、「そういえば、トマト栽培で有名なアガディール地域で、栽培を終えたトマトを片付けるのに、ハウス内に羊を放して、12mほどある茎を食べてもらってるのを見たことがある」と教えてくれた。

モロッコの友人の農園にて カサブランカ郊外にある滞在可能なコテージ付の農園で、ニワトリ、ウサギの他、オリーブ、ブドウ、ハーブ、野菜などを育てている。
モロッコの友人の農園にて カサブランカ郊外にある滞在可能なコテージ付の農園で、ニワトリやウサギなどの家畜と、オリーブ、ブドウ、ハーブ、野菜などを育てている。

ヒナ到着

ヒナは宅急便で届く

6月中旬、いよいよヒナたちを迎える日が来た。遠路はるばる、大阪から大分の山奥へやってくるヒナたちを迎えに、私は宅急便の営業所へと向かった。自宅へ戻り、おそるおそる段ボールを開けると、前日に生まれたばかりという小さなヒナが、ピヨピヨと鳴きながら動き回っている。孵化場のアドバイスに従い、すぐに砂糖水を与えた。

ヒヨコ専用の段ボールで送られてくる。生まれてから1日程度は体内の栄養で生きられるようだ。
ヒナは専用の段ボールで送られてくる。生まれたばかりなので、搬送中は体内に蓄えられた栄養で生きられるようだ。

生後1週間は餌を切らさない

ヒナたちは、田んぼへ放つまでの2週間、家の土間で飼育することにした。餌は、小鳥の餌(雑穀)や野菜くずを刻んで与えた。とくに最初の1週間は、常にお腹がいっぱいの状態にしておくのがよいらしい。また水鳥らしく、ヒナたちは水場に群がって、何度も何度も水に口ばしを浸けている。

動画再生

「エサ入れの中で食べながら寝てしまう」という、なんともかわいらしい姿。 *クリックすると動画がご覧になれます

田んぼへ放つまでの2週間、土間で飼育することにした。餌は、小鳥の餌(雑穀)や野菜くずを与えた。とくに最初の1週間は、常にお腹がいっぱいの状態にしたおくのがよいらしい。水もたくさん飲む。
ヒナたちは餌と水を交互についばむ。体が水で濡れて体温が下がることがないよう、水入れは浅いものにする。
丸みのある口ばしの構造上、野菜は細かく刻んで与えるのだが、 キャベツの葉は、アオムシのようにむしって食べていくヒナたち。

6月中旬とはいえ、夜は冷え込むので、夜間は湯たんぽや電気ヒーターで温めた。ヒナたちは、部屋中を駆けまわって、食べて飲んでは寝て。また駆けまわって、食べては飲んでは寝てを、延々と繰り返す。私は、親鳥になった気持ちでそんなヒナたちを見守る日々が続いた。

動画再生

ヒナが送られてきた段ボールに藁を敷き、そのまま寝床として使った。夜間は湯たんぽを入れ、上部を別の段ボールでカバーして保温。 *クリックすると動画がご覧になれます

次回は、いよいよ放鳥の準備~いざ田んぼデビュー! です。乞うご期待ください。

長野 恵里子(ながの えりこ)
長野 恵里子(ながの えりこ)

農業系出版社や国際協力(アフリカ駐在)などを経て、現在、国際耕種株式会社に勤務。主に途上国の農業開発に携わる。移住先の大分県竹田市の古民家でリモートワークしながら、農業に興味を持つ若者たちとともにアイガモ稲作や自給菜園を実践中。

長野恵里子さんが所属する国際耕種株式会社のホームページです。

国内外の農業開発に係る取組みをニュースレターとして定期的に発行しているので、本連載とあわせてぜひご覧ください。

長野さんのアイガモ農法の師匠で、豊後大野市で有機農業を営む森岡雄平さんの農園「ウジャマー農場」のホームページはこちら

農文協オススメの「草刈り動物」の新刊

草刈り動物と暮らす ヤギ・アイガモ・ガチョウの飼い方 

髙山耕二 著

ヤギ、アイガモ、ガチョウが除草に大活躍!生態から繁殖法、電気柵の設置や健康管理のポイント、卵・肉・糞の利用法までよくわかる。ニワトリも登場。

長野さんが「アイガモ農法」の参考にした本

そだててあそぼう

アイガモの絵本

古野隆雄 編
竹内通雅 絵

アイガモは、アヒルの雌×マガモの雄。水田でイネを栽培しアイガモを育てよう。雑草や害虫を食べ、肥料効果もあり、楽しいよ。ヒナの入手から育雛箱の作り方、外敵予防、水田での管理、丸ごと一羽食べ尽くすまで。

合鴨ドリーム

小力合鴨水稲同時作

古野隆雄 著

乾田直播、電柵張りっぱなし、追肥は合鴨の餌を通して…、ついに究めた省力ラクラクの合鴨イネ同時作。田畑輪換、家畜文化の取り戻しも含め、より豊かに広がる技術的世界を大改訂。生物多様性農法の実践的テキスト。