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【家族4人で幸せ自給生活】第5話:お風呂を手作りする

北海道・三栗祐己

こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。前回の連載(第4話)では、「トイレを手作りする」と題して、我が家の水洗トイレの設置について紹介しました。でも一難去ってまた一難。今回はお風呂設置のお話です。前回のトイレ同様、一筋縄ではいきませんよ!?

トイレの次は、お風呂を手作り

微妙な傾斜をつけながら、レンガとモルタルで高さ調整をする作業。 100円ショップで買った水準器(水平を図る器具)を使いながら、妻と手作業で床づくりを行いました。(図12〜22)
浴室の床づくりのようす

僕たちが山暮らしをはじめたのは、2018年8月のこと。それまでに、何とかトイレは完成させたのですが、お風呂作りは、移住してからです。しばらくは、家にお風呂がなかったので、近所に住む山家さん(前回にも登場)にお風呂を貸していただいたり、銭湯や温泉に行ったりしていました。でも、銭湯に行くと、当時、大人2名と子ども2名で、1回あたり1,090円。なかなかの出費ですし、時間も取られます。山家さんは、いつもやさしく「いいよ、いいよ、いつでも入りな」と言って下さいましたが、さすがに毎日のように借りるわけにもいきません。ということで、トイレの次は、お風呂づくりです。当然、初めての経験です。

今回のお風呂作りのプランです

・バスタブと給湯器は中古品を使用する

・浴室の床は水に濡れてもいいようにレンガを敷く

バスタブの設置

僕の頭の中では、バスタブというものは、床の上に設置してあるものだと思っていました。しかし、実際にはバスタブはけっこう深さがあり、図のように、床に穴を空けてそこにはめ込むように設置します。

お風呂図解
我が家のお風呂の断面図(図解)

今回もまた家に穴を開けるという、なかなか勇気のいる作業が伴います。家でお風呂に入るためには仕方ありません。えいやっ! とドリルで最初の穴を開け、そこからバスタブがすっぽり収まる程度まで穴を広げていきます。

ドリルで最初の穴を空け、そこからバスタブがすっぽり収まる程度になるまで穴を広げていきます。
最初の穴を開けたようす 地面が見える
ドリルで最初の穴を空け、そこからバスタブがすっぽり収まる程度になるまで穴を広げていきます。
バスタブがちょうどはまるように穴を広げる
バスタブがうまく収まった!

山家さんのアドバイスによると、バスタブが床下から突き出た部分は、屋外に晒されているので、あっという間にお湯が冷めてしまうとのこと。だから、床下から出た部分は、断熱材のグラスウールでしっかり囲う必要があります。浴室の床下に潜って頭をぶつけながら、断熱作業も同時に行ないました。

床下から出た部分は、断熱材のグラスウールでしっかり囲う必要があります。浴室の床下に潜って頭をぶつけながら、断熱作業も同時に行ないました。
床下から出た部分をグラスウールと木枠で囲った
浴室内のバスタブの周囲もグラスウールで囲う
浴室内のバスタブの周囲もグラスウールで囲う

浴室の床づくり

プレハブの床は、木の板です。このままで水を流してしまうと、木の板が濡れて腐ってしまいます。そこで、浴室の床には、レンガを敷き詰めて、さらにレンガとレンガの継ぎ目の目地はモルタルでふさぎました。これで床が水に濡れても大丈夫です!

難しかったのは、床の傾斜づくりです。普段、あまり意識することはないかもしれませんが、浴室の床は、水がちゃんと排水口に流れるように、排水口が一番低くなっています。ですから、床を作る際は、排水口にむかってわずかに傾斜がつくよう留意しなくてはいけません。

レンガとモルタルで浴室の床を作る

水準器(100円ショップで買った)で水平を確認しながら、レンガとモルタルで排水口にむかって微妙な傾斜をつけた
水準器(100円ショップで買った)で水平を確認しながら、レンガとモルタルで排水口にむかって微妙な傾斜をつけた
排水口が一番低くなるように施工する
レンガが入らない端の目地部分には小石を詰めた
目地の端の部分は角がとれたカラフルな小石で装飾した
排水テストのようす
排水テストのようす 問題なさそうだ

給湯器の複雑さを知る

給湯器に配線・配管をつなげる

最後の大仕事は、給湯器の設置です。この給湯器という機器は、つながっている配線や配管が想像以上に多く、複雑な構造でした。これらを全て、正確に接続しなければお湯は出ません。ドキドキしながら、給湯器に給水管、給湯管……と接続していきます。

・水を供給する給水管 ・お湯を出す給湯管 ・排気用の煙突を接続、煙突は壁に穴を空けて外に出す
給湯器の接続部分  水を供給する給水管をつなぐところ、お湯を出す給湯管をつなぐところ、排気用の煙突を接続する穴
写真 給湯器につながっている配線、配管のいろいろ これらを全て、正確に接続しなければつかえない ・電源コード ・熱源となる石油(灯油)を供給する灯油チューブ ・水を供給する給水管 ・お湯を出す給湯管 ・排気用の煙突を接続、煙突は壁に穴を空けて外に出す ・給湯器にかかる水圧を調整する、減圧弁、逃がし弁という部品を接続
給湯器につながっている配管 これらを全てを正確に接続しなければつかえない

給湯器につながっている配線・配管の種類

・電源コード

・熱源となる灯油を供給する灯油チューブ

・水を供給する給水管

・お湯を出す給湯管

・排気用の煙突

・給湯器にかかる水圧を調整する、減圧弁と逃がし弁という部品

これらの部品を全て、手探りで一つ一つ確実に接続せねばなりません。

また、さきほど、バスタブを設置するために床に穴を開けたばかりですが、今度は、煙突を外に出すために、壁に穴を開けなければなりません。

排気用の煙突を接続、煙突は壁に穴を空けて外に出す
排気用の煙突を給湯器に接続し、煙突は壁に穴を開けて外に出す

水道管の接続作業

水道管の接続は、塩ビパイプを適当な長さに切断し、コネクタに接着剤で接続する、という作業の繰り返しです。万が一、ちゃんと接着されていない箇所があったら即水漏れとなるので気が抜けません。いま思い出すだけでもグッタリするほどの大変な作業でした。

蛇口(混合栓)を設置する箇所にむかって、お湯と水それぞれの水道管を引いてくる
混合栓やシャワーを取り付けた
混合栓とシャワーを取り付けた

その他にも、お風呂づくりは、混合栓(ひとつの蛇口から水と湯を混ぜて出すことのできる金具)やシャワーを取り付けたりと、大小さまざまな作業がありました。

そして、山暮らし開始からおよそ2ヶ月、段々と寒さが強くなってきた10月中旬、ついにお風呂が完成しました!完成とはいっても、まだ、浴室の壁やドアがない状態ではありましたが、外に出ることなく、家で入れるお風呂は格別です。

外に出ることなく、家で入れるお風呂は格別です
家にお風呂があるって最高!

こうして、我が家にも、一般的な家にあって当たり前の風呂とトイレが揃いました。風呂とトイレが無い状態から暮らしはじめた僕たちからすれば、それらがあるだけで毎日幸せです。自給自足の生活をするなかで、「幸せ」のハードルがぐっと下がり、これまで見逃してしまっていた日常のささいなことにも気づけるようになってきました。「幸せ体質」になったのだと実感しています。

次回(8月下旬予定)は、家の寒さ対策のお話です。お楽しみに。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。(写真提供:金本綾子)

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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