北海道・三栗祐己
こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。前回の連載(第4話)では、「トイレを手作りする」と題して、我が家の水洗トイレの設置について紹介しました。でも一難去ってまた一難。今回はお風呂設置のお話です。前回のトイレ同様、一筋縄ではいきませんよ!?
トイレの次は、お風呂を手作り
僕たちが山暮らしをはじめたのは、2018年8月のこと。それまでに、何とかトイレは完成させたのですが、お風呂作りは、移住してからです。しばらくは、家にお風呂がなかったので、近所に住む山家さん(前回にも登場)にお風呂を貸していただいたり、銭湯や温泉に行ったりしていました。でも、銭湯に行くと、当時、大人2名と子ども2名で、1回あたり1,090円。なかなかの出費ですし、時間も取られます。山家さんは、いつもやさしく「いいよ、いいよ、いつでも入りな」と言って下さいましたが、さすがに毎日のように借りるわけにもいきません。ということで、トイレの次は、お風呂づくりです。当然、初めての経験です。
今回のお風呂作りのプランです
・バスタブと給湯器は中古品を使用する
・浴室の床は水に濡れてもいいようにレンガを敷く
バスタブの設置
僕の頭の中では、バスタブというものは、床の上に設置してあるものだと思っていました。しかし、実際にはバスタブはけっこう深さがあり、図のように、床に穴を空けてそこにはめ込むように設置します。
今回もまた家に穴を開けるという、なかなか勇気のいる作業が伴います。家でお風呂に入るためには仕方ありません。えいやっ! とドリルで最初の穴を開け、そこからバスタブがすっぽり収まる程度まで穴を広げていきます。
山家さんのアドバイスによると、バスタブが床下から突き出た部分は、屋外に晒されているので、あっという間にお湯が冷めてしまうとのこと。だから、床下から出た部分は、断熱材のグラスウールでしっかり囲う必要があります。浴室の床下に潜って頭をぶつけながら、断熱作業も同時に行ないました。
浴室の床づくり
プレハブの床は、木の板です。このままで水を流してしまうと、木の板が濡れて腐ってしまいます。そこで、浴室の床には、レンガを敷き詰めて、さらにレンガとレンガの継ぎ目の目地はモルタルでふさぎました。これで床が水に濡れても大丈夫です!
難しかったのは、床の傾斜づくりです。普段、あまり意識することはないかもしれませんが、浴室の床は、水がちゃんと排水口に流れるように、排水口が一番低くなっています。ですから、床を作る際は、排水口にむかってわずかに傾斜がつくよう留意しなくてはいけません。
レンガとモルタルで浴室の床を作る
給湯器の複雑さを知る
給湯器に配線・配管をつなげる
最後の大仕事は、給湯器の設置です。この給湯器という機器は、つながっている配線や配管が想像以上に多く、複雑な構造でした。これらを全て、正確に接続しなければお湯は出ません。ドキドキしながら、給湯器に給水管、給湯管……と接続していきます。
給湯器につながっている配線・配管の種類
・電源コード
・熱源となる灯油を供給する灯油チューブ
・水を供給する給水管
・お湯を出す給湯管
・排気用の煙突
・給湯器にかかる水圧を調整する、減圧弁と逃がし弁という部品
これらの部品を全て、手探りで一つ一つ確実に接続せねばなりません。
また、さきほど、バスタブを設置するために床に穴を開けたばかりですが、今度は、煙突を外に出すために、壁に穴を開けなければなりません。
水道管の接続作業
水道管の接続は、塩ビパイプを適当な長さに切断し、コネクタに接着剤で接続する、という作業の繰り返しです。万が一、ちゃんと接着されていない箇所があったら即水漏れとなるので気が抜けません。いま思い出すだけでもグッタリするほどの大変な作業でした。
その他にも、お風呂づくりは、混合栓(ひとつの蛇口から水と湯を混ぜて出すことのできる金具)やシャワーを取り付けたりと、大小さまざまな作業がありました。
そして、山暮らし開始からおよそ2ヶ月、段々と寒さが強くなってきた10月中旬、ついにお風呂が完成しました!完成とはいっても、まだ、浴室の壁やドアがない状態ではありましたが、外に出ることなく、家で入れるお風呂は格別です。
こうして、我が家にも、一般的な家にあって当たり前の風呂とトイレが揃いました。風呂とトイレが無い状態から暮らしはじめた僕たちからすれば、それらがあるだけで毎日幸せです。自給自足の生活をするなかで、「幸せ」のハードルがぐっと下がり、これまで見逃してしまっていた日常のささいなことにも気づけるようになってきました。「幸せ体質」になったのだと実感しています。
次回(8月下旬予定)は、家の寒さ対策のお話です。お楽しみに。
- 第1話(6月12日) 私のパーマカルチャー
- 第2話(6月26日) 極寒のマイホーム
- 第3話(7月10日) 雨漏りとペンキ塗り
- 第4話(7月24日) トイレを手作りする
- 第5話(8月21日) お風呂を手作りする
- 第6話(8月28日) 断熱のお話
- 第7話(9月18日) 我が家の電力自給
- 第8話(9月27日) 北海道大停電 頼りは太陽光発電と人のぬくもり
- 第9話(10月13日) 水を自給する
- 第10話(10月25日) 暖房を自給する(前編)
- 第11話(11月9日) 暖房を自給する(後編)
- 第12話(11月28日) スーパーで野菜を買わない実験
- 第13話(12月15日) みんなで畑づくり 柵の設置、定植
- 第14話(1月5日) ニワトリ小屋づくり(前編)
- 第15話(1月22日) ニワトリ小屋づくり(後編)
- 第16話(2月20日) 食の自給① 梅干し&納豆
- 第17話(2月29日) 食の自給② 麹、味噌、醤油
- 第18話(3月15日) 食の自給③ 冬を乗り切るための漬け物づくり
- 第19話(4月9日) 食の自給④ 薪ストーブを使ってつくる干し野菜&おやつ
- 第20話(5月16日) 服作り(前編)
- 第21話(6月24日) 服作り(後編)
- 第22話(9月13日) 石けん作り
- 第23話(10月予定) 暮らしから学ぶ
\祝単行本化!/
1年間にわたり現代農業WEBで連載してまいりました本連載が、単行本になりました!
北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。著書『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』(農文協)が発売中。
(写真提供:金本綾子)
小さいエネルギーで暮らすコツ
太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる
農文協 編
輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。
パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン
ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳
都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。