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【チバッてます! 沖縄雑穀生産者組合】第3話:雑穀で肉・魚・卵・乳製品の味!?

中曽根 直子

モチキビ、タカキビ、アワなど、いま雑穀がおもしろい。雑穀とは、コメやムギなどの主食以外の穀物をさします。人気の五穀米おにぎりや、おはぎに入っていることもありますよね。食感は、「ぷちぷち」「つぶつぶ」「もちもち」など様々。雑穀は、健康や代替肉など、持続可能な食料生産と食生活という点で改めて見直されています。従来産地が高齢化で生産量が落ちている一方、国産雑穀のニーズは旺盛。いま“稼げる”チャンスともいえます。雑穀の産地といえば、東北のイメージですが、今回の連載の舞台は、タカキビやアワの在来種がつくられている沖縄。雑穀づくりのおもしろさ、島の農家のこと、農耕儀礼などを、沖縄雑穀生産者組合組合長の中曽根直子さんにご紹介いただきます。

*連載タイトルの「ちばる」とは沖縄の方言で「頑張る」の意。よくチバリヨーって聞きますよね

●●などの五穀を使ったハンバーグ。ヴィーガン・フルコースのなかの一皿(かつて浮島ガーデンがレストランだった頃に提供していた)
雑穀をつかったヴィーガン料理のフルコース(かつて浮島ガーデンがレストランだった頃に提供していた)

1・2話で、むかし沖縄では在来の雑穀がたくさん栽培されていたことや、戦後、それらはほとんど消えてしまったため、現在、沖縄雑穀生産者組合で復活すべく栽培していることをお伝えしました。今回は、雑穀を使ったアメイジングなヴィーガン料理の世界へ、皆さんを誘いたいと思います。

感動の肉もどき料理

20年前、体を壊したことがきっかけで、雑穀料理の第一人者である大谷ゆみこさんの元で、(世にも不思議な)雑穀ヴィーガン料理を習いました。どんなお料理かと言うと、「それぞれの雑穀の味わいや特徴を活かして、お肉やお魚、卵・乳製品の味わいをつくり出す」というものです。穀物が動物性食材の味わいになるなんて、にわかには信じられないですよね。食べたことがない方は、「もどき料理でしょ?」と思われるかもしれません。でも私にとって、雑穀でできたお肉もどき料理は肉の臭みがなく、とても食べやすく、そして優しく滋味あふれる味わいで、最初に食べた時は感動しました。

①タカキビタカキビ(お肉の代わりになる)、モチキビ(卵の代わりになる)、アワ(チーズの代わりになる)、アマランサス(魚卵の代わりになる)
タカキビ(お肉の代わりになる)
、アワ(チーズの代わりになる)、アマランサス(魚卵の代わりになる)
アワ(チーズの代わりになる)
、モチキビ(卵の代わりになる)、アワ(チーズの代わりになる)、アマランサス(魚卵の代わりになる)
モチキビ(卵の代わりになる)
、アマランサス(魚卵の代わりになる)
アマランサス(魚卵の代わりになる)

沖縄で栽培されている動物性食材の味わいになる雑穀

雑穀の種類と料理のイメージ

どの雑穀が何の味になるのか、具体的に説明すると、タカキビは赤茶色でひき肉のように見えるので、ハンバーグやミートボールになります。ヒエは白くてクリーミーなので白身魚に。モチキビは色も味わいも卵そっくり。アワは塩麹や酒粕などを加えると、まるでチーズ味です。

そんな驚きの雑穀料理をみっちり3年間習ったおかげで、私はベジタリアンになり、健康をとりもどし、人生が好転、大好きな沖縄へ移住することができました。2011年には那覇で自分のお店をもつことができ、今では雑穀の生産組合(沖縄雑穀生産者組合)を立ち上げ、島々で五穀をよみがえらせる活動を行なっている、本当に夢のようです。

写真3)雑穀を使った(もどき)料理 ①タカキビのハンバーグ、②アワのピザ、③ヒエのうなぎ、モチキビの卵丼
タカキビのハンバーグ
うなぎもどき
ヒエのうな丼
写真3)雑穀を使った②アワのピザ、③ヒエのうなぎ、モチキビの卵丼
アワのピザ
モチキビの卵丼

雑穀を使った(もどき)料理 

小浜島の小中学校で雑穀と環境問題の授業

さて、つい最近、竹富町立小浜小中学校でタカキビを使ったヴィーガン・ハンバーグの給食と、「食と環境問題」をテーマに授業をさせてもらいました!今年89歳になる島の名物オジィ竹本真良さんが栽培したタカキビを、昨年、授業の一環で中学1年生が収穫・脱穀を行ないました。今回、そのタカキビをつかって、栄養士の先生がヴィーガン・ハンバーグをつくって下さいました。

その先生は私がお渡ししたレシピをもとに試行錯誤しながら、子どもにも食べやすいようにと、野菜やパン粉を多めに加えて、ふわっと軽い感じに仕上げてくださり、子どもたちも「お肉が入っていないのにハンバーグの味がする!」と大好評でした!

給食後には、私がなぜ菜食を続けているのか、なぜ島々で雑穀栽培をしているのか、その理由について、「食と環境問題」と題して、授業をしました。

小浜島小中学校での授業風景
小浜島小中学校での授業風景

授業ではまず、以前に比べ、気候変動を感じるか?と質問すると、小学生の実に半分近くの子が手を上げました。その大きな原因のひとつが私たちの食に関係があることを話しました。

過去100年の間に私たち人間はどれほど地球環境を壊したでしょうか。2度の世界大戦、そして農薬や化学肥料を大量に使って規模拡大(企業化)する「工業型農業」を展開し、大地や海、空気を汚染しました。

いま、アマゾンの森林は牛のエサとなる大豆畑を開墾するために火を放たれ、森林火災が至るところで起こっています。また、家畜の放牧のために森が伐採され、すでにフランスの国土1つ分が消えてしまっていて、今も毎年、鹿児島県くらいの大きさの森が消えている。このまま伐採し続けると、50年ほどでアマゾンの森林は完全に消滅してしまうと言われていることを子どもたちに伝えました。

さらに、畜産で使われるバーチャルウォーター(その食料をつくろうとしたときに、どのくらいの水が必要になるか)についても解説しました。例えば、たった1個のハンバーガーをつくるのに500mlのペットボトルの約2000本の水が使われます。一方で、安全な水が手に入らない人は世界に22億人とも言われ、毎年52万人もの子どもたちが汚れた水でいのちを落としています。その他、日本では6割の食料を輸入に頼りながら、1700万トンもの食料を食べ残していること、飢餓に苦しんでいる人々が世界に8億人もいて、5秒にひとりの子が食料不足によってなくなっていること、でも世界には80億人が十分食べるだけの食料がすでに栽培されていること、家畜のエサとして使われている穀物を貧しい地域に分配すれば、世界から飢餓がなくなること、などをお話しました。

写真7)小浜島小中学校のタカキビ・ハンバーグ給食
小浜島小中学校のタカキビ・ハンバーグ給食

さて、今回の学校給食では、たった1.5kgのタカキビでなんと80人分のハンバーグをつくることができたそうです。タカキビ、優秀ですよね!

いや〜それにしても島の小学生はかわいかったです。駆け寄ってきて、「ハンバーグ、美味しかったです。ありがとうございます!」と笑顔で伝えに来てくれたり、「うちのお父さん、牛飼いなんだよ。私の牛もいるんだよ。草の上にいるから大丈夫だよね?(工業型農業ではないから問題ないよね?という意味)」と話かけてくれたり。授業を通して子どもたちに、島で食べ物をつくることの重要性、島の農家さんを応援することを伝えられて嬉しいです!この日のようすは地元紙「八重山毎日新聞」で大きく取り上げていただきました。

雑穀を使った加工食品

さて、私が運営しているレストラン「浮島ガーデン」では、昨年から雑穀を使ったヴィーガンの冷凍食品をつくっています。一番人気は餃子。久高島産のハダカムギが豚肉代わりに入っていて、さらに石垣島の伝統的な米味噌「やいま味噌」がいい仕事をしてくれています。ただし、お値段は少し高めです。そもそも雑穀の買取価格が高く、さらに使っている食材はほぼオーガニックなためです。でも、餃子は一般的なものよりもビッグサイズで食べ応え十分、1つで大満足なので、ぜひ、食べてみて欲しいです。

*浮島ガーデンは2024年4月中旬に再開予定

第4話は、島に残る雑穀の農耕儀礼についてお伝えします!

写真1*高キビタカキビ畑に立つ筆者(波照間島のとんちぇ農園)

中曽根 直子(なかそね なおこ)

北九州市生まれ。五穀料理研究家。沖縄雑穀生産者組合 組合長。

2011年、島野菜と雑穀を使ったヴィーガン・レストラン「浮島ガーデン」を那覇にオープン。沖縄の在来雑穀の復活と種の保存、生産拡大のため「沖縄雑穀生産者組合」を立ち上げる。料理教室や農業イベント(農家と消費者をつなぐマルシェ)、食の映画祭など主催してきた他、沖縄雑穀生産者組合や島野菜の宅配「ベジんちゅ」を立ち上げるなど様々な活動を通して、沖縄の長寿復活に全力投球中。

インタビュー映画のご紹介「ユバナウレ 〜五穀の祈り〜」

昨年夏に撮影したインタビュー映画をご紹介します。

30分程度の短い映画ですが、半世紀以上、五穀栽培に携わってきた竹富島の長老をはじめ、タカキビ栽培をスタートさせた元サトウキビ生産組合長など、島々の農家さんたちが登場します。なぜ、この映画を撮ったのか、詳しくは沖縄雑穀生産者組合のYouTubeに書いてありますので、ぜひ、読んで下さい。インタビュー、面白いですよ〜。

そだててあそぼう

アワ・ヒエ・キビの絵本

古澤典夫 編

及川一也 編

沢田としき 絵

雑穀類は、長寿食やアレルギーを抑える効果などで注目されている、野性的で栄養タップリのパワフル作物。古代ヨーロッパ人や、お米より古くから縄文人も食べていた大切な主食だった。雑穀の栽培と料理に挑戦しよう。

進化する雑穀 ヒエ、アワ、キビ

新品種・機械化による多収栽培と加工の新技術

星野次汪 著

武田純一 著

ヒエ・アワ・キビを現代に甦らせる、健康機能性と省力機械化栽培最新情報

みうたさんのからだにやさしい雑穀レシピ

ごはんからおかず・スープ・おやつまで

江島雅歌

浸水なし!気軽に、手軽に楽しく使うのがみうた流。キビやタカキビの炒めもの、押し麦のサラダ、ヒエのポタージュ、キヌアのゼリーなど、いろんな食感、おいしく大変身。からだに元気をくれる雑穀8種のレシピ60。