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【家族4人で幸せ自給生活】第4話:トイレを手作りする

北海道・三栗祐己

こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。2018年8月から始まった我が家の山暮らし。住む家は、工事現場でよく見かけるようなプレハブです。プレハブは、雨風をしのぐことはできますが、電気・ガス・水道などのいわゆるライフラインには最初は接続されていません。ですから、今後暮らしていくためには、これらを自分で何とかするしかありません。今回は、そのライフラインの中でもとりわけ重要な、トイレを手作りしたときのお話です。

トイレ設置後、しばらくは毎回バケツやジョーロで水を補給して使っていました
トイレのタンクへの給水はジョウロで大丈夫??

まずはトイレ

僕たちが暮らしているところは、山暮らしの師匠の山家さんとそのお仲間が20年以上前に開拓した土地です。そして、今、僕らが住んでいるプレハブは、もとは山家さんの開拓仲間が住む予定でしたが、それがキャンセルとなり、そのプレハブを譲り受けたものです。

ですから、幸運なことに、僕たちが移住してきたときにはすでに山の伏流水を水源とした水道と、下水の処理システム(「土壌浄化法」という処理方法)がある状態でした。

水回りで、まず取り組むべきことは、「水道管を家まで延長すること」と、「トイレとお風呂を設置すること」です。

排水を下水管に接続する
排水用の管(灰色の塩ビ管)を下水管まで伸ばして接続する

さっそく、手探りで進めるトイレづくりがはじまりました。

トイレを自分で設置することのプレッシャー

トイレ本体は、これもラッキーなことに、ここに住む予定だった人が残していってくれたものがありました。ですから、この本体を床に固定して、水を流すための給水管と、し尿を流す下水管をそれぞれ本体に接続すれば完成です。

トイレ本体
トイレ本体

と、言うは易しで、この作業はかなりの恐怖が伴いました。この下水管の接続に失敗すれば、し尿を含む水が家中に広がってしまいます。それだけはなんとしても阻止せねばなりません。この家に住めるかどうかは、このトイレ接続作業にかかっているのです。

ネットで調べると、トイレの排水の接続には「接続部品」というものが必要とわかり、さっそく、ホームセンターで買ってきました。一式で2,500円程度のものです。取り付け前に付録の説明書を穴が空くほど熟読し、いよいよ接続作業開始です。

便器と排水管を「接続部品」でつなぐ

接続部品と排水の穴
①接続部品と下水管(穴)
②①の排水穴に接続部品をはめ込む
②①の穴に接続部品をはめ込む
床と便器の隙間から水漏れするのを防ぐためのパッキンを取り付ける
③床と便器の隙間から水漏れするのを防ぐためのパッキンを取り付ける

どうにかこうにかトイレを下水管に接続! 作業中、普段見ることのできない、トイレの下の穴などを見ることができました。 ただし、いきなりトイレの本番は怖いので、何度も何度もバケツの水を流してから試しました。

普段見ることのできないトイレの下の穴 し尿が流れていくところ
普段見ることのできないトイレの下の穴 し尿が流れていくところ

結果……水漏れなし! 安堵しました。

設置作業が終わったようす
便器の設置完了!

タンクに水を補給することの大変さ

トイレを設置してほっとしたのも束の間、また新たなハードルが……。

便器は設置できたものの、まだ、流す水を貯めておくタンクは取り付けていません。タンクの取り付け方も煩雑そうだったので、このまま直接バケツで水を流していればいいかなぁと、安易に考えていたのですが、山家さんからアドバイスがありました。
「バケツで流していると、水の量が足りなくて、いずれトイレが詰まっちゃうかも知れないよ」
そんなことになっては大変です。すぐに、タンクを取り付けることにしました。

タンクを接続していないトイレ
まだタンクが接続されていない状態のトイレ

そして、いざ、バケツで水をタンクに入れて、タンクのレバーをひねってみると…

ジャッ。

ん? 少量しか出ません。バケツ1杯程度の水では、まったく足りないのです。

こんどは、2杯入れてみました。

ジャーッ(約3秒)。

2杯でも足りません。さらに、3杯目を入れて、ようやく並のトイレの水量が確保できました。

あとで調べると、平均的なトイレのタンク容量は13L程。うちで普段使うバケツに換算すると、約3杯分ということになります。

その後、バケツでタンクに水を補給するのは大変なので、ジョウロになりましたが、どちらにしても、重労働です。13Lの水を入れるには、ジョウロで3往復する必要があります。

自動給水機能つき、画期的な(!?)トイレの完成!

自動給水の水洗トイレの完成です-12
水を流すたびにタンクに自動給水される水洗トイレの完成です

これは、早急に水道管をタンクに接続する必要があります。ということで、今回もまた山家さんに指導を乞い、外から水道管を引き入れ、トイレのタンクに接続しました。

すると、なんと素敵なことでしょう! トイレの水を流した後、自動でタンクに水が貯まるではありませんか! 自動給水の水洗トイレの完成です。

いやぁ、普通のトイレって本当に便利ですね~。

このように、「暮らしに必要なものを一つずつ、自分で作ってみると、当たり前のことに感動できるようになる」。そんなことに気がついた、トイレの設置作業でした。

次回(8月中旬予定)は、お風呂をDIYするお話です。お楽しみに。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。(写真提供:金本綾子)

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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