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【家族4人で幸せ自給生活】第3話:雨漏りとペンキ塗り

北海道・三栗祐己

こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。前回の連載では、「極寒のマイハウス」と題して、断熱構造のない我が家(=プレハブ)について紹介しました。なんと、このプレハブ、昭和62年製で、かつ10年以上も放置されていたもの。当然、その中で暮らしていくには色々と問題が出てきます。ということで今回は、プレハブの雨漏りのお話です。

家族総出で屋根のペンキ塗り
家族総出で屋根のペンキ塗り

雨漏りがペンキで直る?!

僕たちがこの札幌の山奥に移住してきたのは、2018年の8月14日。この年の8月は、北海道にしては珍しく、まるで僕たちを歓迎するかのように(?)、何日も雨が降り続きました。でもこの歓迎の雨、全然ありがたくありません。

バケツや洗面器、ジョーロなど、ありとあらゆる容器を総動員
あらゆる容器を総動員して雨漏り対応

案の定、移住した翌日から大量の雨漏りに見舞われます。特にトイレの雨漏りがひどく、バケツや洗面器、ジョーロなど、ありとあらゆる容器を総動員し、雨水を貯めては捨てるを繰り返しました。

山家さん(前回にも登場した自給自足の先輩)に相談すると、「屋根にペンキを塗ると雨漏りは収まるよ」とのアドバイス。いやいや、ペンキで雨漏りが止まるなど、聞いたことがありません。最初はまったく信じられなかったのですが、それ以外に方法も分からず、とにかく試してみるしかありません。

プレハブの屋根に上がってよくよく見てみると、屋根は、鉄板と鉄板が継ぎ合わさってできています。その、継ぎ目の部分から雨が浸入して雨漏りになるのではないか。まずはその継ぎ目にペンキを塗ることにしました。自給自足生活の最初の仕事は、屋根のペンキ塗り、家族総出での挑戦となりました。

継ぎ目にペンキを塗る
継ぎ目のみにペンキを塗る

そして次の雨の日……体感ですが、雨漏り「8割減」を達成!

とりあえず、

「山家さんの言っていたことは本当だった…」

ペンキの効果に希望を感じた僕らは、次の晴れの日に、再び屋根のペンキ塗りを実施。今回は、さらに念を入れて、継ぎ目と、さらに屋根全体にもペンキを塗りました。そうすると、雨漏りはほぼ収まりました。

家族でペンキを塗って雨漏りを止めた。このことが、我が家全員にとって、大きな自信となりました
家族総出でペンキを塗って雨漏りを止めた。このことは、我が家全員にとって大きな自信となった

トイレに行くため壁を破る

我が家は、もともとあったプレハブAと、後から入手したプレハブB(2つのプレハブがセット)をくっつけて配置してあります。「くっつけて」とはいっても、中で部屋が繋がっているわけではなく、それぞれが独立した箱です。なので、プレハブどうしを直接行き来することはできず、例えば、居間からトイレに行く場合、一度外に出てからトイレがあるプレハブに入る必要があります。実に不便です。

そこで、プレハブどうしをつなげるためにしたことは実にシンプル、プレハブの「壁破り」を行ないました。これも初めての仕事ですが、これはもう要領などありません。壁に穴を空けたり、はがしたり、毎日少しずつ壁の穴を広げること2週間……。

「壁破り」のようす

今からこの壁に穴を開けます!
のみとハンマーを使って壁を剥がしていく
プレハブAとBがつながった瞬間!
壁紙や板を剥いでプレハブどうしが完全につながった

ついにプレハブAとBがつながりました!
「これで、トイレに行くのにわざわざ外に出なくていい!」
普通の家に住んでいれば、まず、味わうことのできない感動です。

破ったところから、再び雨漏りが…

しかし、試練はまだまだ続きます。プレハブAとBの壁を破ったわけですから、当然、そこにはわずかながらすき間が空いてしまいました。

タンクを接続していないトイレ
プレハブAとBのすき間

そのすき間から風が吹いてきます。雨も降ってきます。そしてタイミング悪くこの時、台風が直撃。泣きそうになりながら、急いで余っていた木材やビニールで壁のすき間をふさぎ、プレハブの上を覆うように屋根を自作しました。

そうして見事、再び雨風をしのげる住まいとなったのです。

プレハブどうしの隙間の上を覆うように屋根を自作した

雪解け時期には、再び雨漏りが発生

台風による雨漏りから半年、すっかり安心していたのですが、翌年3月の雪解けシーズン、再び雨漏りが発生してきました。

屋根にペンキで塗装したにも関わらず雪解けとともに再び雨漏りする?僕の仮説は、こうです。

  1. 冬の間に、雪が屋根に降り積もる
  2. その雪が、室内の熱で解けて水になる
  3.  解けた水が、再び氷点下になって凍る
  4. 屋根の継ぎ目に付着した水や、ペンキに含まれる水分が凍ることで、水の体積が膨張する
  5. この水の「融解」「凍結」の繰り返しで、屋根の継ぎ目が開いてきて、雨漏りが発生!

その証拠に、ペンキを塗りなおしたそのまた翌年、雪解けシーズンになるとやはり再び雨漏りするのです。

ですから我が家では、毎年6月のペンキ塗り作業が恒例行事になりました。

今回お話したような、家の改造や修繕はたしかに大変ですが、暮らしに関わる作業を家族全員で行なうと、仕事が終わったときの喜びを共有できたり、団結力がアップしたりするので、必ずしも困ったことだけではないなと思うようになってきました。

次回(7月18日予定)は、ライフラインの中でもとくに重要な、トイレを手作りするお話です。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。(写真提供:金本綾子)

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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