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【家族4人で幸せ自給生活】第11話:暖房を自給する(後編) 山家さんと薪ストーブ、薪小屋作り

北海道・三栗祐己

現代農業(2021年4月から1年間)の人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を加え、webオリジナル連載として復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちで作りながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家。当時誌面に載せきれなかったお話も含めて、月に2回お届けします。

家賃は「薪払い」

前回お話したとおり、薪ストーブに欠かせないのは燃料の「薪」です。その薪はけっこう高価で、薪ストーブユーザーの悩みの一つです。

我が家で使用する薪は、毎年、山家さん(*)と協力して作っています。山家さんのお宅では、暖房に灯油ストーブはいっさい使わず、薪ストーブのみという生活を20年以上続けています。生活に必要な多くのものを自給自足している山家さんは、家も薪ストーブも、さらには今回紹介するエンジン式の薪割り機まで自作です。

山家規男やまかきくおさん。我が家が住んでいる山のオーナーで、自給自足の先輩。三栗家から50メートルほどの所にお住まい。

薪割り機
山家さんと自作の薪割り機。毎年どこか調子が悪くなるが、そのたびに山家さんがすぐ修理します。

しかし、山家さんご夫妻も80歳を超え、最近は薪割り機を使っても量が作れなくなってきました。

そこで我が家の出番です。薪割り機の修理は山家さんが担当、一方、薪づくりは、山家さんのうちの分も含めて我が家(妻と子どもも)が担当することになりました。元々ぼくたち家族は、山家さんのご厚意でこの場所に住まわせていただいていますので、せめて家賃代わりになればと、山家さんの薪づくりをかってでました。言ってみれば、家賃は「薪払い」です。

薪の原料となる木は、春から秋の間に山家さん所有の山林から、毎年30〜40本ほど切り出して準備します。ちなみに、山家さんの山林の面積は、およそ15,000坪(東京ドーム約1個分の広さ!)。その大部分は開拓せずに残してあります。

薪づくり
山家さんが所有する山林から木を運び出しているようす

山家さんと薪

山家さんはこれまでに薪ストーブをなんと50台以上も手作りしています。それが話題となって、新聞や雑誌に掲載されています。それらの紙面には、山家さんの哲学とも言える次のような記載がありました。

  • 燃料が薪しかない時代、ストーブ作りは半ば必要に迫られたことから得た技術だった
  • 少年だった頃は、子どもたちは自分の部屋でバラバラに過ごすのではなく、家の中心に薪ストーブがあり、そこにみんな集まって過ごしていた
  • 昔は循環型の生活で、今よりも心は豊かだった

山家さんが、なぜ、これほど手間をかけて薪ストーブや薪割り機を自作し、薪を調達しているのか、その背景がわかる記事でした。

超強力!手作り薪割り機

薪割り機に玉切り材をセットした状態

山家さんが作った薪割り機をご紹介します。この超強力な薪割り機は、クレーン車などの油圧部品を取り外して、それらを溶接して作ったものです。

山家さんと一緒に薪割り作業をするときは、いつも下の写真のように、山家さんが機械を操作する担当、僕が薪割り機に「玉切り材」(木をストーブに入る長さに輪切りしたもの)を置く担当です。

山家さんが薪割り機を操作し、僕が玉切り材を設置する担当で、一緒に薪づくりをすることもある

この薪割り機はどんなに巨大な玉切り材(木を輪切りしたもの)でも片っ端から割っていきます。(そのようすがわかる動画もぜひご覧ください)

【動画】大家さん自作の超強力薪割り機!
(写真14,15 30分ほど作業をしただけで、これぐらいの量の薪が作れる。このペースは驚異的で、例えば、この量を斧で割っていたら1日かかってしまうほど)
30分ほどの作業でこれぐらいの量の薪が作れる。このペースは驚異的で、例えば、この量を斧で割っていたら1日かかってしまう

薪小屋作り

我が家の薪置き場は2箇所。1箇所目はこちら。この程度の量では、ひと冬ぎりぎり越せるか、やや不足
我が家の薪置き場は2箇所。1箇所目はこちら。この程度の量では、ひと冬ぎりぎり越せるか、やや不足

毎年、寒くなってくると心配なのが、薪の準備のことです。いいえ、うそです。すでに雪解けの4月頃から、その年の冬の薪の心配をしています。冬は冬で、「薪を使い切ってしまわないか」と、また薪の心配をしています。つまり、僕らは年中薪の心配をしているわけです。「薪のストックの心配がなくなるくらい薪を作り貯めしておきたい」ところですが、薪を保管する小屋にも限界があります。そこで、薪小屋を拡張することにしました。そのときのようすをご紹介します。

(写真18 2箇所目。小屋の左の空きスペースに着目)
薪小屋の隣の空きスペース(角材が立てかけてあるところ)

「薪小屋作り」と聞くと、大仕事のようですが、薪小屋には壁や床は不要で、屋根作りが中心です。上の写真の長い角材が立てかけてあるところに新たに屋根を作りました。普通の小屋作りに比べたらラクなものです。

①現在の小屋の隣に鉄骨(足場組み立て用)を設置し、その上に、木材を固定する

足場組み立て用の鉄骨を設置
すでに使っている薪小屋の隣に「足場組み立て用の鉄骨」を設置、固定する。これがそのまま小屋の柱(骨格)となる

②①の上に屋根を支える部分を作る

(写真19 屋根を支える部分。屋根の上に雪が積もると数百kgの重さになるので、廃材をいくつか組み合わせて強度を高めた)
屋根を支えるいわゆる垂木(たるき)。屋根の上に雪が積もると数百kgの重さになるので、廃材を複数組み合わせて強度を高めた

③屋根材を打ち付ける

(写真20、21 ここまでできればあとは簡単。屋根材を打ち付けるだけ)
②の垂木の上にトタンの屋根材を打ち付ける。

完成!

屋根材も廃材を活用。多少サビはあるが機能は十分

2回にわたって、我が家の薪ストーブライフをご紹介しました。僕がほぼ1年中、薪のことを考えていることがおわかりいただけたと思います。大変な作業もありますが、やはり自分で作った薪(=自然エネルギー)で暖まれるのは格別です。

今年(2023年)も薪の準備は秋のうちに完了! 薪ストーブを焚ける冬が待ち遠しいです。

薪ストーブ
薪ストーブは飽きない

【クイズ】これ、なーんだ?

シラカバの皮
シラカバの皮
これはシラカバの皮(樹皮)。木を倒した直後にカッターで簡単にはがすことができる

正解:白樺の皮

「がんび」と呼ばれる、「シラカバ」の皮(樹皮)です。

薪に火をつけるためのが着火剤(焚きつけ材)として使います。マッチ1本で火をつけただけで勢いよく燃えるので、着火の時に超便利です。

次回(11月下旬)は、「食の自給」について紹介します。お楽しみに。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。(写真提供:金本綾子)

三栗さんも執筆している単行本「自分で地域で 手づくり防災術」が2023年11月1日に発行予定です!

自分で地域で 手づくり防災術

農文協 編

手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。自然に逆らうのではなく、自然の力を生かしたり、回復させたりしながら災害を小さくする知恵や技が農村にはある。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給や、スコップと草刈り鎌を使い空気と水の流れを回復させる「大地の再生」、水田の貯水機能を活かした「田んぼダム」、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアを収録。

↓こちらの本にも三栗さんの記事「オール電化から電力自給開始で、電気に愛着のある暮らし」が掲載されています。ぜひご覧下さい。

小さいエネルギーで暮らすコツ

太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる

農文協 編

輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。

パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン

ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳

都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

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