北海道・三栗祐己
現代農業(2021年4月から1年間)の人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を加え、web限定で復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちで作りながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家。当時誌面に載せきれなかったお話も含めて、月に2回お届けします。
薪ストーブで暖房を自給
薪ストーブのイメージ
薪ストーブと言えば、素敵でぜいたくなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
- 薪という自然がつくり出してくれたエネルギーを使える
- 遠赤外線で室内全体と、身体の芯から暖まる感覚がある(多くの薪ストーブユーザーの体感)
- パチパチと心地よい音を立てて燃えてくれる
- ゆらめく炎で癒される
薪の入手法
このように魅力たっぷりの薪ストーブなのですが、「薪を自給する」のは、相当にハードな仕事です。
薪ストーブに馴染みのない方はご存知ないかもしれませんが、薪は意外と高価なのです。そして、毎年その調達に頭を悩ませているユーザーも多いです。
うちでは、山家さん所有の山の敷地から、毎年30〜40本ほど木を切り倒して、春から秋の間に薪の準備をしています。
家族総出で薪作り
山から木を切り出して薪になるまで
2018年にここに移住してからは、毎年、山の木を切って薪作りをしています。今でこそ、作業に慣れましたが、最初の頃は、初めて扱うチェーンソーに四苦八苦していました。
それでは、素敵な薪ストーブライブの裏に隠された苦労(でもけっこう楽しい)のようすをご覧ください――。
木を切り倒す
まず、立木(たちき)をチェーンソーで切り倒すわけですが、これはけっこうな恐怖感が伴います。そもそも僕は、林業に関してはシロウトです。山家さんに教わりながら、見よう見まねで木を切っていきます。
数百キロはありそうな木が、もしも自分側に倒れたら……。
チェーンソーで数百kgはありそうな木を倒した
チェーンソーで玉切り
木は切り倒しただけでは、当然薪にはなりません。その後、枝を切り落とし、薪ストーブに入る長さ(40〜50cm程度)に、チェーンソーで切断します。この作業を「玉切り(たまぎり)」と言い、40〜50cm毎に切ったものを「玉切り材」と呼びます。
木を切り倒した後は、ひたすら玉切りです。
「玉切り」のようす。薪ストーブに入る長さ(40〜50cm程度)に切っていく
チェーンソーはメンテナンスがいのち
チェーンソーを使った玉切りは、一見簡単そうですが、しばらくすると切れが悪くなります。そんなときは、チェーンソーの刃にヤスリで目立て(研ぐこと)をする必要があるのですが、これがなかなか難しく、地道な作業となります。
そのほかにも、原因は様々ですが、チェーンソーという機械はすぐに調子が悪くなります。 チェーンソーを使うこと自体は簡単ですが、メンテナンスはけっこう難しいということが分かりました。
以下は、これまでに見舞われたチェーンソーのトラブルです。
- チェーンオイル(チェーンの回転をよくするための油)が出なくなる
- エンジンをかけるためのスターターのヒモが、引っ張った後に元に戻らなくなる
- チェーンが「外れる」「ゆるむ」
- チェーンソーを落として部品が折れる
- チェーンソーが倒れた木の下敷きになって破損
以上、数々のトラブルを経験しながら、山家さんからは逐一対処法を教えてもらっています。
玉切り材を運ぶ
木を切る森と家とは距離が離れているので、玉切り材は年季の入った「八輪車」という運搬車に積んで運びます。
玉切り材の年輪を数えてみると、なかには樹齢約40年の大きな木もあり、どうりで八輪車に載せるだけで一苦労するわけです。(推定重量30kg以上)。
八輪車
薪割り
運んできた玉切り材を、今度は山家さんの自作したエンジン式薪割り機(詳しくは次回)で割っていきます。この機械、どんなに太い玉切り材でも、一発で割ってくれる、文字通り百人力です。これでようやく、薪ストーブに入るサイズの薪となります。
山家さんが自作したエンジン式薪割り機。一体どのように動くのか、次回動画入でご紹介します
薪を積む
薪を割ったら、積んでいきます。大量の薪を積むのは一苦労です。果てしない作業が続きます。
あったまる
ここまで準備をしてようやく、冒頭で述べた素敵な薪ストーブライフとなります。
毎年、この薪作りを終えると、自然エネルギーを使って暖をとることの喜びと大変さを感じます。
2週間毎の煙突掃除や、週一の灰の掻き出し、室内に舞い散るススの掃除など、他にも大変なことはありますが、それらをひっくるめても、やっぱり薪ストーブは、最高です!
次回(11月上旬)は、今回登場した薪割り機や薪小屋のDIYと、山家さんの話などです。お楽しみに。
- 第1話(6月12日) 私のパーマカルチャー
- 第2話(6月26日) 極寒のマイホーム
- 第3話(7月10日) 雨漏りとペンキ塗り
- 第4話(7月24日) トイレを手作りする
- 第5話(8月21日) お風呂を手作りする
- 第6話(8月28日) 断熱のお話
- 第7話(9月18日) 我が家の電力自給
- 第8話(9月27日) 北海道大停電 頼りは太陽光発電と人のぬくもり
- 第9話(10月13日) 水を自給する
- 第10話(10月25日) 暖房を自給する(前編)
- 第11話(11月9日) 暖房を自給する(後編)
- 第12話(11月28日) スーパーで野菜を買わない実験
- 第13話(12月15日) みんなで畑づくり 柵の設置、定植
- 第14話(1月5日) ニワトリ小屋づくり(前編)
- 第15話(1月22日) ニワトリ小屋づくり(後編)
- 第16話(2月20日) 食の自給① 梅干し&納豆
- 第17話(2月29日) 食の自給② 麹、味噌、醤油
- 第18話(3月15日) 食の自給③ 冬を乗り切るための漬け物づくり
- 第19話(4月9日) 食の自給④ 薪ストーブを使ってつくる干し野菜&おやつ
- 第20話(5月16日) 服作り(前編)
- 第21話(6月24日) 服作り(後編)
- 第22話(9月13日) 石けん作り
- 第23話(10月予定) 暮らしから学ぶ
\祝単行本化!/
1年間にわたり現代農業WEBで連載してまいりました本連載が、単行本になりました!
北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。著書『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』(農文協)が発売中。
(写真提供:金本綾子)
三栗さんも執筆している単行本「自分で地域で 手づくり防災術」が2023年11月1日に発行予定です!
自分で地域で 手づくり防災術
農文協 編
手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。自然に逆らうのではなく、自然の力を生かしたり、回復させたりしながら災害を小さくする知恵や技が農村にはある。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給や、スコップと草刈り鎌を使い空気と水の流れを回復させる「大地の再生」、水田の貯水機能を活かした「田んぼダム」、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアを収録。
↓こちらの本にも三栗さんの記事「オール電化から電力自給開始で、電気に愛着のある暮らし」が掲載されています。ぜひご覧下さい。
小さいエネルギーで暮らすコツ
太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる
農文協 編
輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。
パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン
ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳
都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。