北海道・三栗祐己
現代農業(2021年4月から1年間)の人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を加え、webオリジナル連載として復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちで作りながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家。当時誌面に載せきれなかったお話も含めて、月に2回お届けします。
こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。
これまでの連載では、家・電気・水の自給自足についてお伝えしてきました。
今回からは、自給自足に欠かせない要素、わが家の「食の自給」について紹介させていただきます。
買うのは肉と魚だけ
わが家は、食も自給することを目指しています。
「第7話 わが家の電力自給」でもお話ししましたが、うちでは冷蔵庫を使っていません。
「冷蔵庫がないと、乳製品や、肉・魚はどうするの?」
という質問をよくいただきます。
乳製品については、アレルギー体質の娘に合わせた食事をしていたら、家族全員があまり食べなくなりました。
肉・魚は、さすがに自給は難しいので、食べたいときにはスーパーに行って買います。
冷蔵庫がないので、買ったらすぐに調理して食べきります。肉・魚を食べるたびにスーパーに買いに行く必要がありますので、だんだんと食べる頻度が減り、今では週に1回程度になりました。
スーパーで野菜を買わない実験
そんなわけで我が家の食は、常温保存ができる、野菜や保存食がメインです。
これで、春から秋までの野菜はなんとかなります。しかし問題は、畑が雪で埋まってしまう冬です。
そこで、大根や人参などは土の中に保存します。ダイコンが立つくらいの穴を畑に掘って、野菜を立てて、その上をワラなどで覆います。雪が積もると、その断熱効果で凍りつくことはないので、掘り返しては食べることができます。
以前はこの冬の期間は、さすがにスーパーで野菜を買っていました。でも、秋野菜をうまく保存すれば、一年中、スーパーで野菜を買うことなく暮らせるのではないか。そんな好奇心から、わが家ではもう4年以上「スーパーで野菜を買わない実験」を継続中です。
「パーマカルチャー研究所」ですから、暮らしそのものが実験なのです。
冬用に保存する野菜
我が家の家庭菜園のようす。80坪ほどの家庭菜園で、自分たちで野菜をつくっているほか、定期的にお手伝いさせてもらっている有機農家から、野菜を分けていただくこともあります。
ああ待ち遠しい、春の野草ライフ
カボチャやダイコン、タマネギ、キャベツ、ハクサイ、ゴボウ、ニンジンなどを雪が降る前に収穫、農家からも分けていただき、冬の間はずっとそれを食べます。12月から3月末までの約4カ月分ですから、家の中は野菜だらけ。それでも春を迎える頃には、かなり尽きてきます。
そして「あぁ、もう、いよいよ食べる野菜がなくなってきたー」と思っていると、雪が溶けた地面からフキノトウが顔を出します。野菜の尽きてくるこの時期ですから、「食材が地面から出てきたー!」という感動があります。
フキノトウを皮切りに、4〜5月はフキの葉っぱやギョウジャニンニク、アズキナ、ウド、タンポポ、ヨモギ、ミツバ、ツクシ、スギナなど、食べられる野草や山菜が少しずつ出てきてくれます。本当に助かります。
これらの食べ方ですが、ミツバやアズキナはお浸しにして、ヨモギやスギナなどはそのままおかずとしては食べにくいので、お米と一緒に混ぜておむすびにして食べたりします。
必然的にこの時期は、ご飯の消費量が多くなります。
野菜を育てるには、大変な時間と手間がかかります。そして、家庭菜園初心者の僕らの技術では、収穫できるのはどんなに早くても5月下旬です。
ところが野草は、なんの世話もすることなく、雪解けと同時に勝手に生えてきてくれます。もちろん、下処理が大変だったり、少し筋っぽかったり、野菜の食べやすさやおいしさにはかなわない面もあります。
でも、「スーパーで野菜を買わない実験」を続けるわが家にとっては、とてもありがたいものだと感じています。
ちなみに、食べられる野草の見分け方ですが、わが家はもともと都会暮らしのサラリーマン家庭ですから、野草など、「フキは食べられるらしい」くらいの知識しかありませんでした。
僕たちの場合は、先輩ご夫婦と何度も一緒に野草採りに出かけ、その食べ方を教わり、一つ一つ覚えていきました。ひとりで本を読んで学んでも、結局不安になって食べられません。食べられる野草のガイド本などは、人から教わった後の復習用とすることをおすすめします。
野草を食べてみたければ、慣れている人に現地で一種類ずつ教わるのがベストです。身近な親や親戚に聞いてみると、案外、「昔は、こういうものも食べたんだよ」なんて、喜んで教えてくれるかもしれませんよ。
野草ご飯――わが家の人気レシピ
ここからは、妻の執筆です。
我が家で定番の春の野草おにぎりたちをご紹介します。
ヨモギのおにぎり
ヨモギを沸騰した湯で湯がく。*ヨモギは繊維が硬いので、なるべく小さいものや穂先のやわらかい部分のみを摘む
ぎゅっと絞って刻んで、ほかほかご飯に塩と一緒に混ぜ込んで握る。
新鮮な春の気持ちになりますよ。
フキのおむすび
フキを塩でいたずりして、さっと茹でる。
その後、水に晒して一晩アク抜きする。
刻んで塩とご飯と混ぜて握る。
ミツバのおむすび
ミツバを沸騰した湯でさっと湯がいて、搾り、刻む。
ほかほかご飯に、刻んだミツバとお醤油を適量を入れ混ぜ、握る。
スギナのおむすび
スギナを沸騰した湯で3分くらいゆがく。
水を切って細かく刻む。
ほかほかご飯に刻んだスギナ、細かくしたおかか、白胡麻と塩を入れて握る。
*
以上です。
ぜひ、みなさんのお好きなようにアレンジして、刻み昆布を入れたり、炒りゴマを入れたり、醤油味をつけて刻んだお揚げを入れたりして楽しく召し上がってみてください。
次回(12月上旬)は、「みんなで畑づくり 柵の設置、定植」について紹介します。お楽しみに。
- 第1話(6月12日) 私のパーマカルチャー
- 第2話(6月26日) 極寒のマイホーム
- 第3話(7月10日) 雨漏りとペンキ塗り
- 第4話(7月24日) トイレを手作りする
- 第5話(8月21日) お風呂を手作りする
- 第6話(8月28日) 断熱のお話
- 第7話(9月18日) 我が家の電力自給
- 第8話(9月27日) 北海道大停電 頼りは太陽光発電と人のぬくもり
- 第9話(10月13日) 水を自給する
- 第10話(10月25日) 暖房を自給する(前編)
- 第11話(11月9日) 暖房を自給する(後編)
- 第12話(11月28日) スーパーで野菜を買わない実験
- 第13話(12月15日) みんなで畑づくり 柵の設置、定植
- 第14話(1月5日) ニワトリ小屋づくり(前編)
- 第15話(1月22日) ニワトリ小屋づくり(後編)
- 第16話(2月20日) 食の自給① 梅干し&納豆
- 第17話(2月29日) 食の自給② 麹、味噌、醤油
- 第18話(3月15日) 食の自給③ 冬を乗り切るための漬け物づくり
- 第19話(4月9日) 食の自給④ 薪ストーブを使ってつくる干し野菜&おやつ
- 第20話(5月16日) 服作り(前編)
- 第21話(6月24日) 服作り(後編)
- 第22話(9月13日) 石けん作り
- 第23話(10月予定) 暮らしから学ぶ
\祝単行本化!/
1年間にわたり現代農業WEBで連載してまいりました本連載が、単行本になりました!
北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。著書『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』(農文協)が発売中。
(写真提供:金本綾子)
三栗さんも執筆している単行本「自分で地域で 手づくり防災術」が2023年11月1日に発行予定です!
自分で地域で 手づくり防災術
農文協 編
手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。自然に逆らうのではなく、自然の力を生かしたり、回復させたりしながら災害を小さくする知恵や技が農村にはある。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給や、スコップと草刈り鎌を使い空気と水の流れを回復させる「大地の再生」、水田の貯水機能を活かした「田んぼダム」、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアを収録。
↓こちらの本にも三栗さんの記事「オール電化から電力自給開始で、電気に愛着のある暮らし」が掲載されています。ぜひご覧下さい。
小さいエネルギーで暮らすコツ
太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる
農文協 編
輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。
パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン
ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳
都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。