現代農業WEB

令和6(2024)年
5月5日 (日)
皐月
立夏 大安 己 巳
旧3月27日
こどもの日

あああ

ホーム » 連載記事一覧 » 北の国から 家族4人で幸せ自給生活 » 【家族4人で幸せ自給生活】第13 話:みんなで畑づくり/野菜の貯蔵術

【家族4人で幸せ自給生活】第13 話:みんなで畑づくり/野菜の貯蔵術

北海道・三栗祐己

現代農業で2021年4月から1年間掲載されていた人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を加え、webで復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちで作りながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家のお話です。月に2回お届けします。

苗の定植

こんにちは。パーマカルチャー研究所の三栗祐己です。

前回から引き続き、我が家の「食」の自給について紹介いたします。

労働の対価としてもらう米

手伝いに行っている農家の田んぼ。お米ができる姿に感動!
手伝いに行っている農家の田んぼ。お米ができる姿に感動!

手伝いに行った農家は……

原発事故をきっかけに、食に対する安全を意識するようになった我が家。知り合いの紹介で、2012年からお米は無農薬米・低農薬米をつくっている農家と契約し、直接購入しています。

その後、タイのパーマカルチャー・ファームに行って自給自足の暮らしに興味を持ちました。そこで暮らしていたときは、自分たちの食べる分を自分たちでつくっていたので、帰国後、そのような暮らしに少しでも近づけないかと考えるようになりました。

時が過ぎて2017年。人手が足りなくて困っている農家がいるから手伝ってみないか、という紹介をいただきました。農家を手伝って、代わりにハネ品の野菜などをもらえたら、タイの自給自足的な暮らしに近づけるかも。そう考えて、すぐに手伝わせてもらうことにしました。すると、驚いたことにそこは、うちが米を購入している農家だったのです。

「こんな偶然があるのか!?」。本当に驚き、いいご縁を感じました。

週に1度、8時間労働でお米をいただく

農家の「お手伝い」といっても、実際には労賃をいただくアルバイトです。

現在、雪に閉ざされていない4〜11月の間、週に1度だけ行って、約8時間の作業をしています。そうすると、ひと月に4~5回、1年間では35回ほどの労働をしていることになります。労賃はひと月で約4万円、年間では約30万円です。一方で、この農家から購入するお米は2022年は280kg、約15万円分でした。その他に、ダイコンやハクサイ、カボチャなどの野菜を買っています(ありがたいことに、ハネモノなどをタダでもらえることもあります)。

このようにお金のやり取りはありますが、僕としては農家にお手伝いに行き、その対価として米や野菜をいただく、という意識でいます。

非農家出身の僕にとって、田植えも初めての経験だった イネの生育が気になるなど、田んぼを見る目も変わった 手伝いに行く農家から年間300kg近くのお米を買う
非農家出身の僕にとって、田植えも初めての経験
イネの生育が気になるなど、田んぼを見る目も変わった 手伝いに行く農家から年間300kg近くのお米を買う
イネの生育が気になるなど、田んぼを見る目も変わった
手伝いに行く農家から年間300kg近くのお米を買う
手伝いに行く農家から年間300kg近くのお米を買う
雪が降る前に、その農家さんから冬の野菜をたくさん買わせてもらう
雪が降る前に冬の野菜をたくさん買わせてもらう

仲間と耕すコミュニティ菜園

山家さん(我が家の大家さん)の所有する広い敷地には、畑に適した場所があります。

そこで2019年、山家さんの自給自足仲間と我が家で協力して、コミュニティ菜園を作ろうという話になりました。

資材調達

この辺では、野生のシカやクマが畑の作物を荒らしてしまうので、畑を作る上で囲いは必須です。この囲いを作るというのは、大変な作業ですが、みんなでやれば恐れることはありません!

まずは資材調達から。それにしても、ここの皆さん、とにかく顔が広い。例えば、Sさん、知り合いから譲ってもらったと、大量の中古建築資材を運び込みます。

本格的な重機が登場
本格的な重機が登場

柵作り

①杭を打ち込む

まずは杭(足場パイプ)を打ち込みますが、そのやり方が豪快!バックホーで杭を運んできたら、バックホーのバケットを使って地面に打ち込んでいきます。

山家さん達は、これまでもこうやってバックホーの機能を駆使して、開拓したり色んなものを作ってきたのでしょう。

パワーショベルでパイプを打ち込む
バックホーでパイプを打ち込む

②杭を連結する

それぞれの杭を、金具を使ったり、連結用の部分に資材をつなげたりして、
ネットを張るための柵を作っていきます。

クランプ
パイプ同士をつなぐクランプ金具

③ネットを張る

柵ができたら、ようやくネット張りです。

ネットと柵で囲うと、畑らしくなってきました。

杭と杭をつないだらネットを張る
杭と杭をつないだら、ネットを張る

タネや苗を植えながら

ネット張りと同時進行でタネや苗を植えていきます。慣れてる人たちはとにかく作業が早い。ここからはさらに畑らしくなっていきます。

マメを植える息子写真
マメをまく息子
ジャガイモを植えるMさん
ジャガイモを植えるMさん

作業後はみんなで夕飯

作業後はみんなでご飯を食べます。

なんかもう……これだけで十分幸せです。

みんなで夕食を囲む
みんなで夕食を囲む

野菜の貯蔵で長い冬を生きながらえる

わが家では「スーパーで野菜を買わない実験」を行なっています(第12話参照)。家庭菜園もありますが、北海道の山奥なので、雪に閉ざされる12月から翌年5月下旬までは、野菜がほとんど収穫できません。そこで、野菜の貯蔵や保存食を作って冬の食糧を確保しています。

畑で、倉庫で、家の中で

貯蔵保存といっても、半年分の食料すべて家の中に置くと、生活スペースがなくなってしまいます。そこで、ダイコンとニンジンは屋外で保存します。

ダイコンが立つくらいの穴を畑に掘って、野菜を立てて、その上をワラなどで覆います。雪が積もると、その保温効果でダイコンもニンジンも凍りつくことなく、4月になっても食べることができます。

タマネギやカボチャ、ハクサイ、キャベツなどは家の中で保存します。雪が降る前には、家の中がこれらの野菜でいっぱいになって、生活空間が狭くなります。そして、家の中が広くなっていく(野菜が減る)とともに、雪解けの時期を迎えるのです。

土の中に保存
②
土から取り出す
④

ダイコンとニンジンは屋外で保存する。ダイコンが立つくらいの穴を畑に掘って、野菜を立てて、その上をワラなどで覆う(①②)。雪の保温効果で凍りつくことなく、4月まで食べることができる(③④)

干して、漬けて、ビンに詰めて

① 干し野菜にする

ダイコンは薄く切って薪ストーブの周りに吊るしておけば切り干し大根になります。
大豆やアズキなどの豆類も、薪ストーブで干します。秋はストーブの周りが野菜や豆類でいっぱいになります。

(写真31、32)ストーブの煙突の周囲で干し野菜をつくる
ストーブの煙突の周囲で干し野菜をつくる(カキは一緒に畑を作ったSさんの自宅になってものをいただいた。北海道でカキの木がある家はかなり珍しい)

② 春夏野菜はビン詰めや塩漬けにする
春夏野菜もビン詰めや塩漬けなどにすれば、冬の間に食べられます。トマトは大量にとれる時期にせっせとトマトソースにして、ビンに詰めて半年以上保存できます。キュウリも食べきれない分を塩漬けにして、冬まで持たせます。

春夏野菜のビン詰め。塩漬けにすれば冬の間に食べられる
春夏野菜のビン詰め。塩漬けにすれば冬の間に食べられる

③ 梅干しをつくる

毎年6月に梅干しを大量につくります。古いもので4年もの。冬に限らず、年中食べています。

自家製の梅干し。古いもので4年もの

④ 「三升漬け」をつくる

北海道の伝統保存食「三升漬け」もおすすめです。トウガラシ、醤油、こうじを同量ずつビンに詰めるだけ。長期保存できて、そのままおかずになります。

「三升漬け」。トウガラシ、醤油、こうじを同量ずつビンに詰めるだけ

⑤ 漬物にする

冬に入る直前の11~12月に漬物をつくります。

ハクサイでキムチを、ダイコンやニンジン、キャベツで北海道民のソウルフード「ニシン漬け」もつくります。

ハクサイのキムチ
ハクサイのキムチ

漬物にすると、長期間保存できておいしくなるだけでなく、倉庫や屋外に置いておけるようになります。さらに、家の中が広くなるので嬉しいです。

少ないエネルギーで暮らすためのコツは、文明が普及する以前の、昔ながらの知恵や伝統的な暮らしの中にヒントがあるのではないでしょうか。保存食や発酵食品をつくりながら、そんなことを考えています。

次回(12月下旬)は、「ニワトリのいる生活」について紹介します。お楽しみに。

三栗祐己
三栗 祐己(みつくり ゆうき)

北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。(写真提供:金本綾子)

三栗さんも執筆している単行本「自分で地域で 手づくり防災術」が2023年11月1日に発行予定です!

自分で地域で 手づくり防災術

農文協 編

手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。自然に逆らうのではなく、自然の力を生かしたり、回復させたりしながら災害を小さくする知恵や技が農村にはある。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給や、スコップと草刈り鎌を使い空気と水の流れを回復させる「大地の再生」、水田の貯水機能を活かした「田んぼダム」、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアを収録。

↓こちらの本にも三栗さんの記事「オール電化から電力自給開始で、電気に愛着のある暮らし」が掲載されています。ぜひご覧下さい。

小さいエネルギーで暮らすコツ

太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる

農文協 編

輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。

パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン

ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳

都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。

過去に月刊『現代農業』で連載された「北の国から、幸せ自給生活」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見ることができます。

この記事を見た人におすすめコーナー

 農家のくらし知恵袋