北海道・三栗祐己
現代農業で2021年4月から1年間掲載されていた人気連載「北の国から、幸せ自給生活」が、新しい要素を盛りだくさんに加え、現代農業WEBで復活しました! 住まいや電気(太陽光発電)、水道などを自分たちでつくりながら、働きすぎず、穏やかに豊かに暮らしている三栗さん一家のお話です。半月に1回お届けします。
連載は、「食」の自給コーナーから、執筆担当は三栗さんの奥さん、沙恵さんです。
今回は、冷蔵庫のない我が家の冬の保存食、漬物づくりを紹介します。
11月、年内最後のハクサイ、キャベツ、ダイコンの収穫を終えると、雪下で保存する野菜をのぞいて、漬物にして保存します。
スーパーでよく売っている浅漬タイプの漬物とはちがい、ひと月くらいかけてしっかり漬け込んだ自家製の漬物は、糠や酒粕を使うことで、ビタミンやミネラルが補われ、酵母や菌の力で乳酸発酵もバッチリ。健康のために、「ご飯のお供」以上の働きをしてくれる優れ物です。
今年も長い冬を豊かに過ごすため、「ニシン漬け」「味噌粕漬け」「白菜漬け」「キムチ」「玄米漬け」「鮭の飯寿司」「へしこ」「鯖のかぶらずし」などを年末にかけて少しずつつくり、樽を増やしていきます。
玄米漬け
干し大根でつくる玄米漬け
子どもたちも大好きなダイコンの玄米漬け。ここでは11月には霜が降り始めるので、いつも10月末までには干し大根をつくっています。
つくり方は簡単。炊いた玄米と麹、塩、昆布、唐辛子を混ぜて、つけ床をつくります。そうしたら、つけ床→干し大根→つけ床と重ねていき、最後につけ床を1番上にして重しをかけます。3週間からひと月したら出来上がりです。
この干し大根づくりに欠かせない手作り道具をご紹介します。
この道具を使うまでは、ダイコンをヒモで縛って吊るして干していましたが、今は下の写真のような道具を使って干しています。これならば水分が抜けて細くなったダイコンを押さえ直すときも簡単です。
超簡単! ダイコンが落ちない手作り干しヒモのつくり方
まず、ビニールハウスを留めるハウスロープを適当な長さに切って、半分に折り、2cmほどに輪切りにしたホースに通していきます。そのホースのリングとリングの間にダイコンを挟んだら完成です。
キュウリの味噌粕漬け
夏に採れたキュウリを塩漬けにして11月まで保存し、その後、塩抜きをして、味噌粕(味噌と酒粕を混ぜた漬け床)に漬けていきます。
このときの漬け床は、味噌と酒粕を1:2の割合で混ぜてつくります。漬物と酒粕をミルフィーユ状にして重ねていきます。
我が家の粕漬けの定番は、キュウリとダイコン。甘めが好きな方は、漬け床をつくるときにザラメを入れます。我が家はこの時期、ヤーコンをいただくことが多く、そこから甘みが出るのでザラメは入れません。キュウリとヤーコン、キクイモなどを漬けます。料理のアレンジがしにくいヤーコンやキクイモも、簡単においしくなります。
簡単ニシン漬け
続いて、北海道のソウルフード、ニシン漬けをご紹介します。
以下の材料を刻んで、一斗用の漬物袋(20L)にガンガンいれてゆき、最後にトウガラシ、昆布、麹を入れて袋ごと混ぜ合わせれば出来上がりです。
材料:
- キャベツ 1個
- ダイコン 1個
- ニンジン 2本
- ショウガ 1個(中サイズ)
- 米の研ぎ汁に一晩漬けた身欠ニシン 6本くらい
- 麹(乾燥麹ならばあらかじめ少量のぬるま湯でもどしておく) 200gくらい
麹を除いた材料の重さの2.8%ほどの塩を入れて混ぜ、さらにそれらの2倍ほどの重さの重石をかけます。3週間ほどで完成です。
キムチ漬け
今年は本場のキムチづくりを教わる機会があったので、いつもお手本にしている農文協の書籍『これ、台所でつくれます』に掲載のレシピを少しアレンジして、旨味となる「アミの塩辛」を、「アジの塩辛」に変えてキムチを仕込んでみました。
家庭でつくる漬物なら、アレルギーや好き嫌いのある食材も他の材料に変えるなどしてつくることができます。さらに、辛さや甘さも家族に合わせられるので、食事の時間がより楽しくなります。
へしこ
昨年、思い立って魚のヌカ漬け「へしこ」を習いに行ってきました。理由は、へしこの魅力をもっと多くの人に伝えたいということと、家で余っている米ヌカ(自家精米なので)を活用したかったからです。
へしこにつかうイワシの旬(8~9月)になったので、やっと自力でつくることができました。
へしこは一年間の熟成期間を経て出来上がる北陸特産の漬物です。北海道は、北陸とは気候が違うので、へしこのなかの乳酸菌や酵母菌などの菌たちが生きやすい環境はどこかなっていつも考えながら熟成させています。北海道でもおいしくできるかはまだわかりませんが、電気エネルギーを消費する冷蔵庫に頼らず、おいしく魚を保存できる知恵を残していきたいものです。
鮭の飯寿司
北海道の冬の保存食といえば、鮭の飯寿司(いずし)。年に一度、お正月用につくる仕込みものです。
ですが、私はすでに今シーズン4回めの仕込み。というのも、飯寿司づくりのベテランを見つけるたびに、「ぜひ漬けるところを見せてください」って飛び込みで習ってくるもので(笑)。この飯寿司のように、「塩分に加え、乳酸菌の力も借りて腐敗を防ぐ」という先人の知恵に興味津々です。名人をたずねまわってわかったことは、飯寿司のつくりかたは、一つとして同じものはない!ということ。また、共通のポイントは「乳酸発酵をちゃんとさせる」こと。
我が家の「今年版」飯寿司がこちら。キャベツにダイコン、たくさんのショウガにユズ。それにレンコンも入っててんこ盛りです。
寿司のまわりは殺菌作用のあるクマザサで覆います。ハレの日を祝うかのように新巻鮭入です。
私にとって、漬物づくりは冬の暮らしを豊かにするための仕事。ご飯とお味噌汁、あとは漬物さえあれば十分満足、安心です。冬のある日、私がほかの手仕事に没頭していて家事をサボっていると、家族が「今日はどの樽を開けようか」と、漬物を選びはじめます。
漬物は、仕込みをちょっと頑張れば、長期にわたって食事つくりをラクにしてくれるものです。その年の実りに感謝しながら過ごす冬の食卓です。
次回(3月下旬)は、干し野菜とおやつづくりです。お楽しみに。
- 第1話(6月12日) 私のパーマカルチャー
- 第2話(6月26日) 極寒のマイホーム
- 第3話(7月10日) 雨漏りとペンキ塗り
- 第4話(7月24日) トイレを手作りする
- 第5話(8月21日) お風呂を手作りする
- 第6話(8月28日) 断熱のお話
- 第7話(9月18日) 我が家の電力自給
- 第8話(9月27日) 北海道大停電 頼りは太陽光発電と人のぬくもり
- 第9話(10月13日) 水を自給する
- 第10話(10月25日) 暖房を自給する(前編)
- 第11話(11月9日) 暖房を自給する(後編)
- 第12話(11月28日) スーパーで野菜を買わない実験
- 第13話(12月15日) みんなで畑づくり 柵の設置、定植
- 第14話(1月5日) ニワトリ小屋づくり(前編)
- 第15話(1月22日) ニワトリ小屋づくり(後編)
- 第16話(2月20日) 食の自給① 梅干し&納豆
- 第17話(2月29日) 食の自給② 麹、味噌、醤油
- 第18話(3月15日) 食の自給③ 冬を乗り切るための漬け物づくり
- 第19話(4月9日) 食の自給④ 薪ストーブを使ってつくる干し野菜&おやつ
- 第20話(5月16日) 服作り(前編)
- 第21話(6月24日) 服作り(後編)
- 第22話(9月予定) 石けん作り
\祝単行本化!/
1年間にわたり現代農業WEBで連載してまいりました本連載が、単行本になりました!
北海道札幌市の山奥で「パーマカルチャー研究所」を運営。パーマカルチャーとは、持続可能な暮らしのこと。家族4人で自給自足の暮らしをしながら、その暮らしから得られたパーマカルチャー的価値観を伝えることを仕事としている。著書『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』(農文協)が発売中。
(写真提供:金本綾子)
三栗さんも執筆している単行本「自分で地域で 手づくり防災術」が2023年11月1日に発行予定です!
自分で地域で 手づくり防災術
農文協 編
手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。自然に逆らうのではなく、自然の力を生かしたり、回復させたりしながら災害を小さくする知恵や技が農村にはある。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給や、スコップと草刈り鎌を使い空気と水の流れを回復させる「大地の再生」、水田の貯水機能を活かした「田んぼダム」、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアを収録。
↓こちらの本にも三栗さんの記事「オール電化から電力自給開始で、電気に愛着のある暮らし」が掲載されています。ぜひご覧下さい。
小さいエネルギーで暮らすコツ
太陽光・水力・薪&炭で、電気も熱も自分でつくる
農文協 編
輸入任せのエネルギー問題を再考!ミニ太陽光発電システムや庭先の小さい水路を使う電力自給、熱エネ自給が楽しめる手づくり薪ストーブなど、農家の痛快なエネルギー自給暮らしに学ぶ。写真・図解ページも充実。
パーマカルチャー 農的暮らしの永久デザイン
ビル.モリソン 著
田口恒夫 訳
小祝慶子 訳
都市でも農村でも、自然力を活かして食物を自給し、災害に備える農的暮らしの環境調和型立体デザイン。農地、家まわりの土地利用、水利用、家屋の建て方まで具体的に解説。経営システム全体で環境への適応をめざす。