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【果菜の作業コツのコツ 】Vo.14(最終回) 定植後からの防除では遅すぎる!

現代農業に2004年から14回にわたり連載した「果菜の作業コツのコツ」を週1回(全14回)期間限定でお届けします。キュウリの大産地、宮崎県の研究者だった著者の経験と観察、農家との付き合いの中でつかんだ果菜つくりの極意満載、目からウロコです。*本連載は再編・加筆され、2023年2月に単行本化されました。

元宮崎県総合農業試験場・白木己歳

「幼い苗は薬害受けやすい」はウソ
「幼い苗は薬害受けやすい」はウソ(現代農業WEB)

薬剤にコートされていない葉をなくす

 果菜栽培を無農薬で成り立たせるのはむずかしいが、使用量はできるだけ減らす工夫をしなければならない。農薬にはいろんな種類があり施薬の仕方も多岐にわたるが、以下に述べることは、主に化学農薬である「水和剤」や「乳剤」の散布を念頭に置いている。

 農薬の使用量を減らすには、一回一回の防除効果を上げることにより、総使用回数を減らすやり方が近道である。効果を上げるためには、十分な薬量をていねいに散布することが基本になるが、防除のタイミングも重要である。

 たとえば、キュウリの“親づる摘心直前”のベト病防除がそのよい例だろう。この時期、キュウリは生育スピードが非常に早く次々に葉が展開する。言い換えると、薬剤にコートされていない葉が次々に展開する。これに曇雨天の条件が重なると親づる葉にベト病が激発し、これが、子づるから孫づるへと伝染していく。そのため、この時期の予防は非常に価値の高いものである。

 こういうタイミングはどの果菜にもある。もちろん果菜により対象病害虫は異なるし、タイミングとなる生育ステージもすべて重なるわけではないが、全部の果菜に共通する不可欠の防除時期がひとつある。それが、苗の時期の防除である。

 農薬散布は、病害虫の発生を見る前に行なうのが鉄則である。いったん発生させると、そこが伝染源となって、次々に新たな伝染源が生まれ、防ぐことが困難になる。農薬の使用量を減らそうとするあまり発生前の散布をしぶっていると、結局はひんぱんに散布しなければならず農薬の使用量が増える。発生前散布は、苗の時期の散布から始めなければならない。苗の時期の散布は、農薬の使用量を減らすための鉄則である。

薬剤でコートされた葉を多く(自根苗)
薬剤でコートされた葉を多く(自根苗)
表1 最初の防除
表1 最初の防除

「幼い苗は薬害受けやすい」はウソ

 苗に農薬を使用する場合、本圃で使用する薬液の濃度よりも薄くして使用する例を見かけるが、これは改めたほうがよい。農薬は指定された濃度で使用しないと効果は期待できない。薄くして使う理由に、幼い苗は大きくなった株より薬害を受けやすいという考えがあるようだが、そういうことはない。

表2 苗の散布液の濃度
表2 苗の散布液の濃度

接ぎ木苗は発芽揃い時が適期

 なお、接ぎ木苗と自根苗とでは、育苗期間内の防除適期が少しズレるので注意が必要。本圃に出すまでの間にいつでも防除できる自根苗は、初期に防除の必要がないようであれば、苗がある程度大きくなって防除したほうが、薬剤にコートされた葉数を多くして本圃に出せるので有利である。いっぽう、接ぎ木苗は順化中の防除ができず、その期間内に病害虫が発生すると手の打ちようがない。それに、今、増加中の断根接ぎ木は順化期間が長く、加えて多湿の弱光下におかれるので、病害が発生しやすい。このため防除をして接ぎ木をすることになる。防除時期は発芽が揃った時点がベストである。

 いずれにせよ、防除の前歴を持たせて本圃に出すのが減農薬への近道である。

表3 接ぎ木の有無と最初の防除
表3 接ぎ木の有無と最初の防除

*月刊『現代農業』2005 年7月号(原題:定植後からの防除では遅すぎる!)より。情報は掲載時のものです。

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著者

白木己歳(しらきみとし) 1953年宮崎県生まれ、宮崎県総合農業試験場などに勤務したのち2012年に退職。現在は菱東肥料㈱顧問のかたわら、シラキ農業技術研究所を主宰。国内外(ベトナム、台湾など)で技術指導を行なっている。著書に、『トマトの作業便利帳』『写真・図解 果菜の苗つくり』『キュウリの作業便利帳』、『果菜類のセル苗を使いこなす』、『ハウスの新しい太陽熱処理法』いずれも農文協刊。