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サトちゃん流ダブル管暗渠施工(下)塩ビ管で、水をスムーズに流す

 

福島県北塩原村・佐藤次幸さん

マークは本誌134ページに用語解説あり
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サトちゃんこと佐藤次幸さん。昨年バックホーを購入し、暗渠の自主施工に挑戦した(写真はすべて倉持正実撮影)

 稲作作業名人のサトちゃんは、昨年暗渠を自作し転作圃場の排水改善にチャレンジした。目標は、ソバのよく育つ畑。前回(1月号)は、バックホーでの穴の掘り方を紹介した。今回は、暗渠管の作製と設置について――。

メインはあくまで塩ビ管

 昨年12月号でも紹介したように、サトちゃん考案の「ダブル管暗渠」は塩ビ管とコルゲート管の2種類を使ったもの。細かい穴のあいたコルゲート管は集水性や排水性に優れるため、これ一本を暗渠とする場合が多い。しかしサトちゃんによると、ダブル管でおもに排水を担うのは塩ビ管。コルゲート管はあくまで補助で、砕石などの疎水材の代わりなのだという。

「コルゲート管が水を塩ビ管に受け渡して、確実に水を排水するイメージ。コルゲート管だと下から水が逃げちゃうけど、塩ビ管は一度水が入れば抜けることなく流れるし、コルゲート管より丈夫でつぶれにくいのも利点よ」

 塩ビ管メインの暗渠は、今回施工した圃場の性質にも合っている。というのも、「常に水が湧き出る場所」がピンポイントでわかっているため。その水が管に入るよう設置すれば、ストレートに効率よく流れていくわけだ。

ステップドリルでラクラク穴あけ

 ところで、サトちゃんが買ってきたのは通常の安い塩ビ管。当然、入り口は両端にしかなく、管の側面からの集水はゼロ。これでは、コルゲート管から水を受け取れないが……。

 サトちゃんによると、側面部分には自分で穴をあけるのだという。とはいえ、しっかり集水するためには、2cm程度の大きな穴をあける必要がある。ドリルビットやホールドリルで大きな穴をあけると、時間がかかったり、中にゴミがたくさん入ったり、仕上がりが汚くなったりしやすい。そこで、サトちゃんが使っているのが、ひみつ道具の「ステップドリル」だ。

 このドリル、先から元にかけて細かく段が付いていて、どこまで挿し入れるかによって穴の太さを変えることができる優れもの。しかも、小さい穴を段々と広げていく形なので、負荷もかかりにくい。一瞬でまん丸の穴があくので、作業はガンガン続いていく。

 穴のあけ方は自由自在だ。水源などたくさん水を集めたい場所では大きな穴にしたり、多めにあけたり、単純に水を流したい場所では、確実に流れるよう穴を少なくしたり。自主施工だからこその調整が利くのだ。


ステップドリルでの穴あけ作業

写真右:ドライバーなどにステップドリルを装着して穴をあける。1穴当たり5秒もかからず、みるみる作業は進む。塩ビ管はホームセンターで購入
写真左:ステップドリル。タケノコ型で、どの段まで挿し込むかによって、穴の大きさを調整できる。金属用や木工用など用途別に売っていて、径の種類もさまざま。サトちゃんのものは約1500円
写真右:穴の間隔は使う目的に合わせて調節する。数多くあけたほうが集水性は高まるが、当然管の外に漏れ出す水が増えるし、耐久性も落ちる
写真左:今回あけた穴。ドリルの最大である2.2cm径。なめらかできれいな穴になる

サンダーでの代用

試しにサンダーでも穴をあけてみた。サトちゃん曰く「長く切れ込みを入れるわけだから、ドリルの穴より強度は弱くなる」
サンダーで大きな穴をあけると吸水性がぐんと向上するが、耐久性がかなり落ちる。細かく切れ込みを入れるだけならややマシだろう、とのこと

防草シートで目詰まりなし

 できあがった塩ビ管は、前回掘った穴に敷いていく。ソケットを使い、水源から水尻までつなげたら、水が勢いよく排水路に流れ出てきた。続けて、コルゲート管を敷いていく。こちらは単純に、塩ビ管に寄り添わせるように敷設。そして、最後に田んぼのアゼに使う「防草シート」を入れる。

「管をくるんで砂や石が入らないようにして、目詰まりを防ぐわけよ。このシート、入れたのと入れないのとじゃ、暗渠の持ちがぜんぜん違う。水はちゃんと通すから、集水性も下がらないよ」

 管をくるんだ上から、さらにもう一枚防草シートを敷けば、土や石への対策は完璧。最後は上からバックホーで土をかけ、埋めてしまったら完成だ。

 暗渠からは水が流れ続け、水はけの悪さはだいぶ解消。昨夏は目標のソバを播くことができた。だがしかし、ここでソバがガッツリ実っている姿を紹介することはできない。なんと、イノシシの食害で、かなりみすぼらしい畑になってしまったのだという。

「今度は獣害対策か。これはこれで、工夫のしがいがあるってもんよ」(編)


ダブル管暗渠の設置

塩ビ管を敷く(下図「暗渠施工の予定図」の②のあたり)。集めた水が抜けないよう、あけた穴は横か上を向ける。前回バックホーで大きく穴を掘ったので、スペースに余裕をもって作業可能
圃場は11aほどの元水田。上手のほうで清水が湧く部分(①)があり、それを抜くための水みち施工が今回のメイン。圃場中央にも地中からの水湧きがあるので、そこにも管を延ばした
直径10cmのコルゲート管を塩ビ管に沿わせて延ばし、下に防草シートを敷き入れた。サトちゃんによると、場所によっては、どちらかの管をもう1本入れるなどしてトリプル管にすると、集水性や耐久性がより高まるという
土や砂の混入を防ぐため、防草シートで二つの管をくるむ。水は通すので、集水性は問題ない。古いラブシートでも代用可能(この圃場中央部の一部の暗渠で使用)
一番水が湧いてくる場所(上図「暗渠施工の予定図」の①)。塩ビ管やグレーチング、木の枝などを使って大きな集水スペースを作った。今回の暗渠は、おもにここからの排水が目的
防草シートでくるんだダブル管の上に、周囲の木を伐採した際に出た枝などを敷き並べる。管の周りになるべく空間を作ることで集水性が上がる。モミガラなどを使ってもいい
その上からさらに防草シートを敷き並べ、土や石の混入をさらに減らす
バックホーを使って土で埋め戻し、鎮圧したら作業終了。トラクタで上を通っても、塩ビ管はそうそう潰れない。この年は他の圃場も合わせ250mの暗渠を設置。資材代は20万円もかからなかった(業者に頼むと1m当たり1万円)
水尻部分(上図「暗渠施工の予定図」の③)。この直前部分までダブル管で、最後だけ塩ビ管のシングルになっている。湧き水が排水路に流れ出てきた。これで、圃場のぬかるみは大きく改善された

記事といっしょに 編集部取材ビデオ


[ことば解説]

コルゲート管(こるげーとかん)
 表面形状が凹凸によるコルゲート(波型)になっている管。有孔のものは、暗渠管として広く使われる。凹凸形状によって管を曲げやすく、運搬が容易。直径や穴のあき方にはさまざまな種類がある。


著者紹介

佐藤次幸(さとう・つぐゆき)

福島県北塩原村在住。「月刊現代農業」(農文協)でおなじみのサトちゃん、『イネつくり作業名人になる』著者。 水田と、ハウスや露地で野菜やハーブを栽培する。「農業には捨てるものがない。すべてが資源」という佐藤さんは、「ムダ」なことが大嫌い。だからイネも自分で育っていけるよう仕組む。畦草は牛のエサ。米も野菜も自分で販売する。自分が食べるものは自分でつくる。発想ゆたかに仕事も暮らしも楽しむサトちゃんを追う。

■イナ作作業名人になる!シリーズ
「イナ作作業名人になる!第1巻 春作業編」
「イナ作作業名人になる!第2巻 秋作業編」
「イナ作作業名人になる!第3巻 耕耘・代かき 現場の悩み解決編」
「イナ作作業名人になる!第4巻 乾燥・調製・精米 現場の悩み解決編

農家になろう3 イネとともに」


 

サトちゃんのイネつくり作業名人になる

佐藤次幸 著

「ケチケチ精神」で「常識」をひっくり返す!定年帰農も新規参入農家もこの1冊で大丈夫! 農家のバイブルと評判の『現代農業』で大好評の、「サトちゃん流」合理的なイネ作業のコツを一挙公開。重い物は軽く、人力作業を減らす…身体をラクに、作業を楽しく、しかも倒伏知らずの作業術は、懐にもゆとりができて、家族に笑顔を生み出すこと必至。本書は、イネ作業の着眼点、上手なやり方はもちろんのこと、サトちゃんの常識にとらわれないイナ作設計と経営スタイルも収録。イネを作り続けること=その地に暮らし続けること、サトちゃんは「オレ流スローライフ」と言う。

DVD イナ作作業名人になる!第1巻 春作業編

農文協 企画・制作

忙しい春作業も無理なくこなし、時間も燃費も少なくてすむサトちゃんのコメづくり。受託作業オペレーターも兼業農家も貴重な土日を無駄なく使えて、補助作業者もラクになる作業改善の工夫が満載!

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