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カキ 脚立なし、樹を見下ろして収穫!?(中)主枝と成り枝のつくり方

和歌山県紀の川市・田口晃さん

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 1月号では、和歌山県の田口晃さんが考案したカキの「二本主枝・一文字仕立て」を紹介した。この樹形の最大の魅力は「脚立いらずの低樹高」で「高品質のカキを多収」できるところ。「安全、快適、楽しい」から100歳現役も目指せる。

 今回は、作業性のカギを握る「低い主枝」と、株元まで秀品が揃う「魚の骨のような成り枝(側枝)」のつくり方を紹介する。

二本主枝・一文字仕立てのカキの樹と田口晃さん(写真はすべて依田賢吾撮影)

定植後の切り戻しから低い

 低樹高への道は苗木(接ぎ木苗)の定植直後からはじまるので、はじめに少し触れておきたい。

 植え付け時期は12月。一般的な開心自然形の場合、定植後に接ぎ木部から上が50〜60cm残るように切り戻すが、田口さんはその半分の30cmほどの長さにする(下写真)。

「高い位置で切ると、それだけ主幹の位置が高くなって主枝も高くなるんよ。思い切って短くするんが大事」

写真右:他園の開心自然形のカキの株元。接ぎ木部から主枝分岐点(葉に隠れている)までは50cm近くある
写真左:田口さんのカキの樹の株元。接ぎ木部から主枝分岐点までは30cmほど

3年目の秋には主枝確立

 このような低い主幹から、6年目での成園化(収量約1.8t/10a)を目指して主枝を伸ばしていく。

「定植4年目から実をつけたいんで、3年目の秋までに主枝を確立したい。目標は3mやね」

 主枝をグングンと伸ばすためには、こまめな新梢管理が重要。田口さんが意識しているのは「かん水」「摘心」「秋の切り戻し」の三つだ。

かん水と摘心で新梢を伸ばす

 1年目は主枝候補枝の育成。春に発芽した5〜6本の新梢のうち、太くて30〜50cmに伸びた2本が、のちの主枝になる。

 カキは他の樹種と比べて植え傷みの影響が大きく、1年目の新梢伸長があまりよくない。

「放ったらかしにしていると、なかには数cmしか伸びないもんもありますね。そやから1年目はとくに、天気に合わせてマメに水やりします。それと摘心もやね。新芽の先を観察して、止まる頃に摘んでやればしっかり伸びますよ」

 新梢は5月に入ると、ある程度優劣がつくので、田口さんはその時点で候補枝になる2本を選ぶ。そして、伸長が止まる5月下旬頃に、先端から葉3〜4枚の位置で摘心。すると葉が大きくなり、芽も充実して先端から夏芽が出るので(二次伸長)、それを伸ばす。さらに、夏芽も8月以降に順次摘心して秋芽を伸ばしていく。

摘心後、夏芽を伸ばしているようす。撮影した6月30日の時点で、主枝は支柱(2m25cm)まで伸びた
主枝分岐点を斜め上から見たようす。矢印方向に出た枝を支柱に沿うように誘引すると、股裂けしなくなる

秋の切り戻しで強い新梢を出す

 1年目の秋になるとV字に支柱を立ててから、2本の候補枝を誘引して主枝にする。その際、のちに分岐点から裂けないように、少しひねりをつけるのがポイントだ(上写真)。

「これで将来の樹高が決まるんでね。ポキっといかんように気をつけながら、できるだけ低く誘引せなね」

 このとき、候補枝以外の新梢は基部から取り除いておく。残しておくと主枝と競合するからだ。

 主枝ができてホッと一息つく前に、もう一仕事。先端を切り戻して、翌年の春に強い新梢が出るようにしておく。なお、先端に残す芽は上図のように上芽か横芽がいい。下芽だと、支柱に当たって欠けてしまうことがあるようだ。

主枝を先端からみた図。秋に上芽か横芽で切り戻す。下芽は支柱に当たり欠けてしまうと、翌年の春に発芽しない
新梢が春以降に1m伸びたようす。撮影は10月7日

2、3年目にグンと伸ばす

 2、3年目も、主枝先端の新梢管理は1年目と同じ。かん水と摘心で夏芽、秋芽を出させて先端を伸ばし、秋に切り戻して翌春に強い枝を出させる。

「2年目はとくに伸びるんよ。夏芽と秋芽も合わせて、目標は1mやね」

 3年目には成り枝に結果するようになるが、グッとこらえて早い段階ですべて取り除く。そうすれば3年目も左上写真のように1mは伸ばせるので、秋には目標の3m近くまでいくのだ。

「4年目になればある程度樹冠は確保できてるんでね、摘心はしませんよ。でも毎年30cmくらいは拡げていきたいんで、新芽の伸びが悪い主枝は秋に切り戻しますよ」

上芽と下芽は出させない

 ただし、先端ばかりを気にしていると、思ったように主枝は伸ばせない。というのも、2年目以降は前年まで伸ばした部分から四方八方に新梢が出るからだ。

「そういう枝は主枝と競合するんでね、出さないようにせないかん」

 そこで、春先は上芽と下芽をすべてかきとる(芽の出方は前ページ図参照)。その後も、不定芽から出てきたものは芽かきや夏季せん定でこまめに取り除き、養分の浪費をおさえているのだ。

側枝の配置は20〜30cm間隔が理想的
下から樹を見上げたようす。株元まで色づきよく、大玉の果実がなっている

成り枝は捻枝した横芽

 一方で、横芽から出た新梢はのちに成り枝として使うので、取り除かずに残す。

 ただし、放っておくと次第に立ち上がってしまうので、5月下旬に捻枝をする(下写真)。すると枝の樹勢が弱まって、のちにいい果実をつける成り枝になる。株元までしっかりと光が当たるようになるのも、この捻枝がポイントのようだ。(編)

写真右:主枝の横芽から出た新梢を捻枝する前。矢印のようにひねる
写真左:捻枝後。プチっという音がするまでひねるとAの葉が180度回転した

記事といっしょに 編集部取材ビデオ


[ことば解説]

摘心(てきしん)
 新梢の先端を摘むこと。新梢の伸長を抑制しつつ、枝を生殖生長に向かわせる。果実への養分転流や、翌年のための花芽確保を目的とする。
誘引(ゆういん)
 側枝や新梢を支柱や棚、樹体の一部にヒモなどで固定すること。新梢の伸長を抑えることや、枝の配置をよくすることを目的とする。
不定芽(ふていが)
 外観ではわからない芽で、太枝の切り口付近に発生することが多いもの。陰芽や潜芽ともいう。
芽かき(めかき)
 芽を除くこと。おもにわき芽を除くことで養分の分散を避けて、残した芽にしっかり養分が届くようにする。
捻枝(ねんし)
 枝をねじって折り曲げること。ニホンナシでは、冬のせん定時に長果枝を棚付けする際に行なう。カキは生育期間中、枝の勢いを抑えるために行なう。新梢の伸長が止まり、花芽分化しやすくなる。


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倉橋孝夫・大畑和也 著

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