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ホーム » くらし記事一覧 » 農家直伝!びっくり料理 » 超おいしい!土手のカラシナ大活用

近頃、「交雑しやすいアブラナ科の植物は、地元の伝統野菜と交配してしまうおそれがある」とニュースがありました。土手のカラシナもそのひとつで、地域によっては除去作業が行なわれることも。しかし、ただ除去するだけというのも心が痛む……この生命力、いっそのこと食べてしまいたい!そんなときに活用できそうな、鈴木健二さん(愛知)のカラシナ活用法です。

愛知・ 鈴木健二

土手に群生するカラシナ。普通の菜の花より葉はゴワゴワしてトゲっぽく、葉は茎を抱かない

がっつり 野草を食べたい人に

「やあ、皆の衆。今日もお茶目に草ってこー」「おう!」という号令で「草ってる会」が始まります。3、4人集まっていた野草好きの隊員が、てんでに支度して鼻唄まじりで近所の「草畑」へ向かいます。

 僕たちは毎週火曜日を「草の日」とし、薬草博士・村上光太郎先生から受けた薬草魂を胸に、主にメナモミという薬草の栽培と、近場の野草で変なことをして遊ぶという趣味の仲間です。先生の本『食べる薬草事典』(農文協)などを道しるべに活動しています。

 今回はいろいろ遊べてしかもおいしいカラシナを紹介します。カラシナは、今では市販のタネもいろいろ出ていて栽培もされているようですが、畑の隅っこ、道端、土手、河川敷などに生えていて、たまに大群落をつくっています。冬から春にかけて楽しめて、ハコベなどと比べると、一摘み当たりのボリュームが大きく、「せめて週に一度はガツンと草を食べたい」派であり「その辺の草で未知の実験してみたい」組でもある僕たちには頼りになる野草なのです。

 春先にトウ立ちして、摘み菜で食べるころには見つけやすいのですが、冬の時期は地味で、ダイコンの葉っぱに似た姿で少し緑が濃く、トゲトゲした感じの草です。そのまま食べると、ピリッとしてほろ苦く、鼻へツーンと辛みが抜けた後、ほんのり青い甘みを感じる、ちょっと大人な食材です。目が慣れてくれば、堤防を車で走りながら、 50m離れた対岸のカラシナも発見できます(だっておいしいんだもん)。

仕込んだ粒マスタードを持つ筆者(中央)と「草ってる会」の仲間たち

卵でとじてたっぷり食べる

 摘みながらそのまま生でも食べられるし、ヨモギやカキドオシと一緒に手でちぎってラーメンに入れれば一歩進んだ味わいです。が、それではなぐさめ程度の量しか食べられません。おすすめは、刻んだカラシナに梅酢やフルーツ系の熟成シロップ、それか甘酢とあえておき、ご飯や麺にボンッと載せること。食欲を刺激してくれます。

 それでも「もっと草をっ!」という人には、僕たちがよくつくる「草度の高い」卵焼きをどうぞ。分厚いので火の通し方とひっくり返し方に少々コツがいりますが、難しくはありません。カラシナと摘んできた野草を刻んで卵でとじると、ガッツな草卵焼きの完成です(つくり方は現代農業2024年4月号p.231 )。 25cm径のフライパンでつくれば6~8人の草好きに満足してもらえるボリュームがあり、アレンジのしがいもあります。アミエビ、カツオ節、ニンジン、ジャガイモ、ベーコン、焼きのり、ゴマ……いろいろ試してみたくなりますね。僕は「卵はどこ?」って仕上がりの濃い深緑色で3cmくらい厚みのある「草焼き」の風情が好きです。ベースノートになる薬草の深いコクを卵と油が包み込み、ニンニクとコショウがハーモニーに加わる一つの楽曲のような味わい。あとはアドリブ三昧です。

 3月以降花芽がたくさん収穫できるときには、保存用に熟成発酵シロップ(これは花粉症に奇効があったりする)( 現代農業2023年3月号p.222 )や醤油こうじ漬け(つくり方は現代農業2024年4月号p.231 )を仕込みます。

ブラボーなフレッシュ粒マスタード

カラシナがらみでもうひとつ「つくっておいてよかったー」と涙したのが粒マスタードです。市販のマスタードシードを使って仕込めばあっという間ですが、ここは根性見せたいところです。なにせ、楽しくて、おいしい。

 6月頃、タネの熟したサヤを採ってきて、酢と梅酢で漬けるだけ。2週間くらいで食べ始められます。アレンジでハーブや香辛料を入れたマスタードもつくりましたがどちらも悶絶級でした。ソーセージやサンドイッチ、ナッツを練り込んだチョコクリームとも相性よく、合わない食材が思い浮かばない……。

クロモジのお茶や白ワインで蒸し焼きにした鶏肉に粒マスタードを添えた。鶏肉の旨みにツーンとした辛味とプチプチ食感がアクセントになってたまらないおいしさ

みんな大好きボディのきいた草キムチ

  3年前、岐阜の草仲間、マザきっちの思い付きでつくり始めた「カラシナの草キムチ」は草遊び界の総合芸術と呼びたくなるほどのおいしさです。

 基本の材料と、九つの要素を押さえれば、自由に材料を組み合わせて楽しめます(つくり方は現代農業2024年4月号p.234 )。

 材料をひとしきり混ぜ合わせたら、容器に蓋をして、なじむのを待ちます。虫が入らないように注意。1~2日に1度くらいかき混ぜて、1週間くらいで味がまとまったら仕込み終了。ここからは熟成していく過程を楽しみながら食べていくわけです。約1カ月は若い食感を味わいながらお試し程度で、その後はガッツリ発酵したキムチを楽しんでください。熟成するにつれて酸味は増しますが、バラバラだった素材に一体感が出て旨みが上がります。

 仕込んで一週間後、800gに小分けした袋を草ってる会のメンバーやお店の常連さん(じつは野草を使ったパンを販売しています)に次々と投げつけました。評判もよく、いい弾丸です。

*

 思いつくままに書いてきましたが、身近で手に入りやすく遊べる、使える、そしておいしいカラシナで、ぜひみなさまにもいろいろつくっていただき、お互いの業の深さを自慢し合いたいと願っております。ではでは、ご武運をお祈りしております。
(愛知県小牧市)

現代農業2024年4月号「超おいしい!土手のカラシナ大活用」では、以下のレシピも掲載しています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

  • 「草度の高い」卵焼き
  • カラシナのナバナ醤油こうじ漬け
  • カラシナキムチ

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野草とハーブのレシピ

農文協 編

おなじみの草だんごから、花のエキスと砂糖を煮詰めたたんぽぽ蜜、スギナの蒸しパン、どくだみ入り生春巻きなどオドロキの味まで。お茶、化粧水、芳香蒸留水も。見慣れたいつもの道が草や花の宝庫に変わります!