この記事は高知県の稲作農家・谷崎友一さんが、いま話題の手作り鉄資材「タンニン鉄」をイネの育苗に使ってみた実践(比較試験)です。試し読みとして一部公開します。詳しくは、ぜひ本誌にてご覧下さい。
タンニン鉄とは…?
タンニン鉄(フルボ酸鉄)とは、植物に含まれる渋み成分であるタンニンと鉄を反応させてつくる資材です。自然界の鉄はそのままでは動植物に吸収されにくいですが、タンニンと結びついてタンニン鉄の状態になると、吸収・利用されやすいミネラル分に変わります。
高知・谷崎友一
圃場で使用、発根効果を実感
高知県で水稲を5haほどつくっています。今回、『現代農業』でもたびたび紹介されている「タンニン鉄」をイネの育苗に使い、その効果を感じたので紹介してみようと思います。
タンニン鉄は本誌の特集にて知りました。渋柿と鉄とを反応させて作るとのことだったので、鉄にロータリ爪を使って2020年の収穫後に作製。翌21年の作から、対照試験をしつつ使ってみました。
この年は、圃場でのみ使ってみました。移植後に入水する際と、出穂50日前の茎肥時に水口から流し込みで施用。同じコシヒカリで隣接する圃場を使用区と未使用区に分け、観察を続けました(2022年7月号p96)。
すると、移植2週間後には根っこの生育に明らかな差が出ました。使っているほうが明らかに生育旺盛で、根が横に広がるように育っていたのです。その後の生育にも明らかな差が見られ、収穫直前のイネ姿は使用区のほうが圧倒的によくなりました。普及センターの方と見ながら、「根にいい影響がありそうだ」と感じていました。
翌年には出穂直前の「にこまる」で比較してみました。使用区では地上部近くの根っこの勢いが明らかによく、とくに毛細根が旺盛に発達。この毛細根により、肥料の吸収効率が上がるのでは?と予想しています。
昨年、育苗期間中に2回散布
さて、育苗へと話を戻します。うちの地区は、15年ほど前からジャンボタニシに悩まされており、移植苗は「なるべく頑強に活着早く」を心がけてつくる必要があります。自分は7~8年前から反射シート「太陽シート」を使い、根を先行させる育苗スタイルでやってきました。太陽シートでじっくりと出芽させ、出芽後はなるべく早く被覆を剥がすことで徒長を防ぎ、充分に根の張った活着のいい苗ができていました。
ここ数年、圃場でタンニン鉄を使用した経験から「苗にも使えるのでは」と思い立ち、昨年の育苗で実際に使ってみました。ただ、使うタイミング、量や濃度、回数などの指標がなく、完全な手探りです。とりあえず、以前から使っている発根促進剤の「ハッコンL」と同じように使ってみました。
まず、出芽後被覆を剥がした直後に散布。苗箱120枚に対して、水50Lにタンニン鉄10Lを加えてまきました。その後、2回目として第1葉展開後、3回目として第2葉展開後にも同量を散布しています。今回も使用区と未使用区を作りました。
移植後の活着もよくなった
1回目の散布から5日ほど経ち、根っこを観察したところ、使用区の主根から出ている側根の量が多く見て取れました。1回目の使用から20日後の比較でも、使用区のマット形成が明らかに根回りよく、根量も多く見えました。1本ずつ取り出して比べたところ、使用区のほうが上部の根の横への広がりが旺盛に見えます。また、側根の量も多く根が発達しているように見えました。
育苗の段階では、発根促進剤なみの「マット形成効果」が期待できると思います。また、根が旺盛に生育することもあってか、移植後も植え疲れすることなく活着していました。これも、タンニン鉄効果なのか……?
鉄は長めに浸けて濃度を上げる
圃場でも、育苗でも効果があるタンニン鉄ですが、手作り資材ゆえに成分が安定しない問題もあります。
2回目のタンニン鉄作製の際、鉄の濃度を計測してもらう機会がありました。すると、浸け込み期間が7日のものと15日のものには、成分量に数倍の差があったのです。渋柿の状態や鉄資材の種類などでも変わる可能性がありますが、以来、浸け込み期間を……
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