マメ類の発芽は川砂でやるといいと言われますが、やってみると水分調節が難しく、さらに砂は重い。現代農業2024年3月号では、培土にバーミキュライトを用いた山下正範さん(兵庫)の工夫が紹介されています。この記事は試し読みです。詳細はぜひ本誌にてご覧下さい。
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兵庫・山下正範

大人気の初夏どりエダマメ
75歳のじいさんです。水稲1haと露地野菜(約30品目)40aを無農薬有機栽培しています。米と野菜セットの宅配のほかは、全量自前の直売所で売っています。6~7月に収穫するエダマメやトウモロコシは「おいしい」といつも完売。3本200円で束にして売っていますが、葉を落として束にしている途中でお客さんが買っていくほどです。
さて、編集部からバーミキュライト100%の培土で早出しエダマメの出芽率が95%になったやり方を紹介しなさいとのこと。原稿を書くにあたって調べたこともあるので、それも交えながら紹介します。

軽くて肥やしっ気のないバーミキュライト
以前ふつうのダイズを育苗したとき、ポットに畑の土を詰めてタネを播いてたっぷり水やりしたら、ほとんど腐ってひどい目にあったことがありました。そこで、福島県の東山広幸さんが常々マメの育苗に肥やしっ気はいらないと言っていたので、試しに海砂をセルトレイに詰めてタネを播いてみたのです。水を吸ったトレイの重いこと重いこと。その上発芽率は2割程度で、さんざんでした。水を吸って膨れあがったタネが砂の中で腐っていました。
次に軽くて肥やしっ気のないバーミキュライトと砂の量を半々くらいにしてエダマメの育苗に挑戦。それでもトレイは重たいし、発芽率も半分程度でした。ならいっそのことバーミキュライト100%にしてみたらどうだろうとやってみたら、結果は上々。発芽率が95%に上がりました。
給水後、時間を置いて播種

僕は、72穴のセルトレイにバーミキュライトをすりきりいっぱい詰めて、水を張ったトロ船にドボンと浸けて底面給水しています。みるみる水を吸って色が変わり、セル全体に水が行き渡るのです。
トロ船から上げて数時間から丸1日置いて水を落ち着かせてから、1穴2粒ずつタネが隠れるくらい指で押し込み、海砂でこんもり覆土します。覆土は重いほうが苗の持ち上がりが少ないと考え、砂を使っています。湿ると色が変わるので、育苗中の上からの水やりの目安にもなってくれます。
10日ほどしたら初生葉(本葉)が展開して、セル内で根巻きするので2本立ちで定植します。ふつうはトンネル栽培する時期ですが、ハトよけと保温のために不織布を二重にベタ掛けです。

砂が余剰水を吸収してくれる!?
バーミキュライト100%培土と砂覆土で発芽率が上がった理由を考えました。ダイズの育苗培土に赤玉土を使っている話をよく聞きます。調べてみたら赤玉は通気性や保水性、保肥性に富むと書いてあり、バーミキュライトの性質と同じようです。
岡山県農業研究所の大久保和男さんの「黒ダイズ品種『丹波黒』のセルトレイ育苗において種子の置床方向が出芽に及ぼす影響」という試験研究があります。そこで、丹波黒の乾燥種子はかん水抵抗性がきわめて弱いため、播種直後の育苗トレイへ大量かん水するのは避け、床土には含水率55~60%の用土を使い、播種後24時間は無かん水で種子がゆっくり培土から吸湿した後にたっぷりかん水するとあります。
要するに、播種直後の過湿に弱いということ。僕はエダマメのタネを播いたあとに乾いた砂で覆土をしています。この覆土がタネ周りの余分な水気を吸い、発芽に適した含水量に調整してくれているのかもしれません。

安くて軽いバーミキュライト
バーミキュライトの値段の安さと軽さ、なにより発芽率のよさにハマってしまいました。バーミキュライトは農協から1袋(50L)1,820円で買っています。スイートコーンやインゲン、エンドウなどタネ内に養分が蓄えられ育苗培土に肥やしっ気がいらない品目の育苗に愛用しています。
兵庫県でエダマメの定番といえば丹波黒大豆。おいしいのですが、暑い夏を越え、10月中旬の収穫期を迎えるころにはマメは虫食いだらけ、日照りの年にはかん水も必要です。葉が大きく葉数も多いので調製作業も大変です。いっぽうこの育苗方法で早生の「おつな姫」を早どりすれば、7月下旬まで無農薬でもきれいなものが収穫できます。葉数も少ないので束にするのもラク。ぜひお試しください。
現代農業2024年3月号では「発芽のコツと裏ワザ 新情報」と題して、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。
- 発芽揃いビシッ メロンの播種後に酸素発生剤 寺坂祐一
- 【ネギお悩み相談2】発芽が揃わないのはなんで? 横山和彦
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農家が教える 野菜の発芽・育苗 コツと裏ワザ
農文協 編
自分で苗をつくれば、コストカットになるのはもちろん、雑草や病害虫に負けず強くそだつ。培土づくり、芽だし、播種、定植までの育苗のコツと、エダマメの断根挿し木増収術などの裏ワザを写真でわかりやすく紹介。
★「別冊現代農業 農家が教える 野菜の発芽・育苗 コツと裏ワザ」を書籍化したものです。