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【地力アップ&肥料代減らし】借りた畑にはまず緑肥

千葉・武内智

農文協が運営する農業情報サイト「ルーラル電子図書館」で人気だった現代農業の過去記事より、すぐに実践できる情報を毎月1本ずつ公開します

この記事は、緑肥(植物)を新しく借りた畑の診断や、土の改善に役立てている武内智さんのお話です。

筆者(70歳)。(株)シェアガーデンの代表で、社員3人と有機野菜をつくる(倉持正実撮影、以下K)
筆者(70歳)。(株)シェアガーデンの代表で、社員3人と有機野菜をつくる(倉持正実撮影、以下K)
緑肥(りょくひ)とは…?

生育中のまだ緑色の植物を土つくりや養分供給に生かすこと。ウネ間や樹間にイネ科やマメ科などの植物を播き、栽培期間中に適宜、刈り取って敷き草などにする場合と、休閑期間に育ててすき込んだりする場合がある。昔から行なわれてきたが、肥料も農薬も値上がりするいっぽうの近年は、肥料効果の高いマメ科緑肥が注目されている。

農文協編 『今さら聞けない 農業・農村用語事典』 p98 「緑肥」より

畑の良し悪しがわからなかった

3月上旬、手前は緑肥のライムギ、奥はケール。前年は畑を休ませ、ライムギとソルゴーをすき込んでいるので、どちらも生育がよい(K)
3月上旬、手前は緑肥のライムギ、奥はケール。前年は畑を休ませ、ライムギとソルゴーをすき込んでいるので、どちらも生育がよい(K)

 農業への関わりは25年前の1997年、和食レストラン「濱町」や郷土料理店「北海道」などの外食企業を経営する傍ら、群馬県倉渕村(現、高崎市)に山林5haを開墾造成して農場を開設したのが始まりです。店舗で使う有機野菜を自社農場でつくりたい。社員教育の一環として、野菜の知識を深めたい。そんな思いを持って、農家の友人たちの協力で実現した農場です。

 その後、ワタミ(株)に呼ばれて、居食屋「和民」などで使う食材を生産するワタミファームを創業。最初は有機農業の仲間が多い千葉県山武市で野菜をつくり始めました。ここは有機農家たちが貸してくれた「いい畑」でした。

 そして、農場の全国展開。有機農業の仲間から借りた農地は普通に野菜ができましたが、行政の誘致で借りた農地はよさそうに見えるものの、作付けしてみると作物がまともに育ちません。農地では作物ができて当たり前、まさか野菜が育たないとは考えてもいませんでした。当時の私には、土壌の良し悪しを判断する力が備わっていなかったのです。

 畑の状態を上辺だけで判断してスタートし、作付けしてから土の悪さに気がつき、大きな赤字を出した農場も複数あります。野菜ができない農地の土づくりには5年、10年単位の時間と経費がかかります。当時、今のように緑肥で地力を診断する技術を身に付けていたら、もう少し赤字は減らせたと思います。

新規就農者には緑肥がおすすめ

 新規就農者はいい畑になかなか恵まれません。私もそうですが、耕作放棄地や化学肥料で疲弊した畑しか借りられない場合も多いようです。そういう人には緑肥がおすすめです。

 緑肥栽培は野菜づくりに比べれば簡単で、誰でも畑の良し悪しがわかります。そして、有機農業に欠かせない有機物の補給といった観点でも、緑肥は非常に重要です。

借りたばかりの畑にヘイオーツ。4月に播種、6月の状態。生育が早いのですぐに土の状態がわかる
借りたばかりの畑にヘイオーツ。4月に播種、6月の状態。生育が早いのですぐに土の状態がわかる

 また、緑肥を栽培しておけば、雑草対策にもなります。緑肥は生長が早いため、雑草が日陰になるのです。ヘアリーベッチに至っては、アレロパシー効果(他感作用)で雑草を抑制します。

 緑肥の経費は種類にもよりますが、タネ代が1kg500~800円として、1ha播種しても2万~3万円(播種量は10a3~4kg)。肥料代を考えれば安いものです。

ゴボウのウネ間にヘアリーベッチ。雑草を抑える
ゴボウのウネ間にヘアリーベッチ。雑草を抑える

土の物理性や地力を診断

自家製の堆肥。材料は収穫残渣や食品残渣、木材チップ、米ヌカなど(K)
自家製の堆肥。材料は収穫残渣や食品残渣、木材チップ、米ヌカなど(K)

 今の農場はワタミを退職したあと、若いスタッフに有機農業を教える場として6年前に開設しました。スタートは1.5haで現在は5.2ha。
 私は過去の苦い経験から、借りた畑ではすぐに作物を栽培しません。土壌分析もしますが、それは参考程度。まずは1年ほど緑肥で様子を見てから、つくる野菜を決めています。

 最初は生育の早いヘイオーツです。これで畑のおおよその状態がわかります。ヘイオーツの生育が思わしくなければ、ほとんどの場合、土の物理性に問題があります。次に根が深く張るソルゴーを栽培して水はけを改善します。物理性の悪さが深刻なら、サブソイラで耕盤を破砕しますが、それでも効果がなければ、バックホーで明渠や暗渠を掘ります。どんな農地であっても、物理性の改善が最重要ポイントです。

 緑肥の葉が黄ばむなど、微生物バランスや肥料分に問題があると判断した場合は、植物性の完熟堆肥を多めに投入(10a3~4t)。肥料分がほとんどない堆肥でも、微生物が十分にいるものであれば、土中の有機物を処理してくれます。『現代農業』で特集を組んでいたように、土中にある有機物を可給態チッソに変えてくれるのです(2021年10月号p102、2022年5月号p82)。

緑肥の使い分け

 農場では新規の畑以外でも「作付け前の緑肥」を原則にしています。ヘイオーツの他、クロタラリアやソルゴー、ライムギ、ヘアリーべッチなどを野菜の種類や季節によって使い分けています。ニンニクの作付け前には、根粒菌によるチッソ固定やリン酸補給をねらってクロタラリア。冬場に空いている畑ではライムギ。土壌の物理性改善にはソルゴー。ウネ間や株間の雑草対策ではヘアリーべッチといった具合です。

 これらの緑肥は花が咲く前の栄養豊富な状態で粉砕します。このとき、作業を効率的に進めるためにも、ハンマーナイフモアが欠かせません。粉砕後は1週間ほど置き、完全に乾燥しないうちにロータリですき込むのがポイントです。そうすることで緑肥の分解を早めます。

ソルゴー

アブラムシがつかない

 最近は、緑肥の状態がよければ、他の肥料を投入しないで野菜を作付けするケースも増えています。

 カリーノケールは露地30aとハウス20aで栽培していますが、一昨年までは鶏糞やボカシ肥料を入れて、チッソが多くなってしまったのか、必ずといっていいほどアブラムシが発生していました。そのため、捨てる分が多く、袋詰めなどの調製作業にも手間取っていました。去年は緑肥と完熟堆肥だけで作付けたところ、アブラムシが発生せずに生産性が飛躍的に向上。緑肥栽培を続けることで年々地力が向上し、畑はよい状態を維持できています。

 全国の耕作放棄地などで有機農業をやろうとしている若い方々には、絶対におすすめです。

その1
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その2
ABC

*月刊『現代農業』2022年5月号(原題:借りた畑にはまず緑肥)より。情報は掲載時のものです。

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