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【サツマイモ品種】これって奇跡 !?  貯蔵なしで、おいしい焼きイモ あまはづき

『現代農業2023年2月号』の巻頭特集「ジャガイモ&サツマイモ」の中から、編集部イチオシの記事を公開します。焼きイモや干し芋といえば、「べにはるか」という品種が有名ですが、おいしく食べるには収穫後にじょうずに貯蔵する必要があります。神奈川県の伊藤綾乃さんから、貯蔵なしでも甘い「あまはづき」という新品種について、実際につくってみた感想をご紹介いただきました。

神奈川・伊藤綾乃

掘りたてをオーブンで焼いて食べ比べ。あまはづきは1カ月貯蔵したべにはるかと同等の食感だった
掘りたてをオーブンで焼いて食べ比べ。あまはづきは1カ月貯蔵したべにはるかと同等の食感だった

 養蚕農家に生まれました。父が他界したのを機に、ちょっと規模の大きい家庭菜園のつもりで畑の管理をスタート。研修も受けずに始めたので、約1.2ha(実際の作付けは60a)の畑に四苦八苦しています。
 女性一人のワンオペ農業なので、体力や腕力の制限があるなか、どんな作物をどのくらい作付けるのが自分に適しているのかを模索中です。今年はサツマイモ、トウモロコシ、ネギを主軸に、果菜・根菜・葉菜を少量ずつ組み合わせています。
 サツマイモは、流行りのねっとり・しっとり系3品種、「べにはるか」500株、「シルクスイート」500株、「ふくむらさき」200株。新品種の「あまはづき」の苗は30本入手できました。

「あまはづき」の苗。農研機構のサイトに出ている種苗店を検索して購入。すぐに売り切れるので、販売のタイミングを何度も見計らって入手できた
「あまはづき」の苗。農研機構のサイトに出ている種苗店を検索して購入。すぐに売り切れるので、販売のタイミングを何度も見計らって入手できた

つるが繊細、茂りが薄い

 あまはづきを栽培しようと思った一番の理由は、掘ってすぐからしっとりした焼きイモになる、という特性です。配達や宅配のお客さんから「今年のおイモはまだですか?」とよく聞かれ、貯蔵期・熟成期間を置かずに焼きイモをおいしく食べられる品種を探していました。
 まずは、べにはるか、シルクスイートと条件を揃えて栽培し、どのような違いがあるか観察しました。
 一番気になったのは、つるが繊細で葉の茂り方の密度が他の品種より低いこと。見かけ上、生長が遅いと感じたので、栽培期間は130日間(5月24日定植、10月1日掘り取り)にしたのですが、これは判断を誤ったと思います。1個の重さが500g以上のものも多く、焼きイモにするには大き過ぎました。

十分かつほどよい甘み

収穫直後のあまはづき。4 月下旬に植えれば8 月収穫が可能な品種
収穫直後のあまはづき。4 月下旬に植えれば8 月収穫が可能な品種

 気になる味について、同日に掘ったあまはづき、べにはるか、シルクスイートの3品種を同条件(太さ、温度、加熱時間)で焼きイモにして試食しました。あまはづきは他の2品種に比べてしっとり感と甘さが楽しめる焼きイモとなり、本当に驚きましたし、奇跡のようでした。
 食感は1カ月ほど貯蔵したべにはるかと同等。甘さは、熟成期間を経たべにはるかには劣りますが、十分かつほどよい甘みがありました。家族、イモの販売先の製菓店さんに試食してもらって好評でした。
 また、果肉色が大変よいのも特徴かと思います。濃いめの黄色で食欲をそそるし、製菓などで色を活かしたお菓子作りが期待できそうです。

 専用貯蔵設備がないため、イモの保管や種イモの保存が課題です。保存性が悪いと聞きますが、確かに傷みが出るのが早く、収穫より約40日経過した頃から変色が始まっているものがあります。種イモ用には、掘り取りをギリギリまで遅らせ、保存期間をできるだけ短くしようと試しています。

(神奈川県相模原市)

2023年2月号では、この記事のほか、「あまはづき」を試験導入した鈴木一男さんの栽培記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

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半自動定植機によるサツマイモの植え付けのようす
*クリックして動画をご覧ください

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