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シャインマスカットの次にくるのはどれ? シャインの血を引く着色系品種を極める

現代農業2023年2月号品種特集の中から、編集部イチオシの記事を公開します。近年、ブドウの人気品種といえば、爽やかな黄緑色のシャインマスカットですが、この記事の茨城県の深谷一郎さん・聡さんによると、シャインを親に持つ赤や黒色の着色系品種もおすすめだそうです。ぜひご覧ください。

茨城県笠間市・深谷一郎さん、聡(さとる)さん

「シャインマスカット」(以下、シャイン)の勢いが止まらない。2007年に苗木が出回ってからというもの、作付面積は拡大し続け、22年産では「巨峰」や「デラウェア」などを抜いてトップに躍り出た。生産量が増えても、人気ゆえに相場も右肩上がりだ。

 そんなシャインを親に持つ「種なし」「皮ごと」品種も、この間次々と生まれた。13年1月号からの連載「シャインマスカットを極める」で登場した深谷一郎さん(68歳)と息子の聡さん(40歳)によると、とりわけ着色系のものには「品種カタログを超えた魅力」があるようだ。

直売では色物のほうが喜ばれる

 現在、加温約30a、無加温(雨よけ)約50aで20品種ほどのブドウをつくり、ほぼ全量庭先で直売する深谷さん親子。一郎さんの代からブドウ専業農家になり、これまでに植えたブドウは、なんと100品種近く。シャインの子供の着色系、青系品種も一通り栽培し、そのなかで採算が合うものだけを残して経営の柱に据えている。

聡さん(以下、聡)「大産地と違って茨城はほぼ100%直売。どこの家も、お客さんの層に合わせて房の大きさや単価を変えてます。品種も、動きのあるものに絞っています」

 対面販売ではお客さんの反応が直接返ってくるので、本当に喜ばれるブドウがわかるし、つくれる。シャインの子供の着色系品種も評判がいいようだ。

一郎さん(以下、一)「もちろんシャインは鉄板だけど、最近お客さんの考えが変わってきたね。数年前までは『色物はシャインとセットで買う』程度だったのが、『シャインはどこにでもあるから、ここでしか買えない珍しい色物が欲しい』っていう声が増えてきた。なかにはシャインを横目にして、色物だけ買う人もいますよ」

「店に並べておくと、自然と色物に目が行くみたいですね。SNS時代だし、青系よりも映える色物のほうが喜ばれてます」

下の図は、現在、深谷さんが栽培しているシャインの子供の着色系品種(一部)をまとめたもの。「色つきのシャイン」として、お客さんにはどの品種も魅力的に映るようだ。

カタログの色じゃなくてもいい

 しかし着色系品種の場合、温暖化などによる着色不足が近年問題となっている。その点はどう考えているのか。

「茨城の夏は暑いでしょ。加温はスタートが早いから大丈夫だけど、無加温は終盤に近づくにつれて、やっぱり色づきは悪くなります」

「でも、カタログに載っているような色にしなくても大丈夫ですよ。うちは直売なんで、色よりも味重視。必ず房尻の粒を食べて納得できる房しか収穫しません。そのときにカタログのように色づいてないことはよくあるし、かえってそのほうが喜ばれる品種もありますよ」

着色管理で黒い品種を赤で売る

 しっかりと味がのっていれば、色はさほど問題ない。そういって見せてもらった2枚の写真(下)を見比べてビックリ。どちらも黒系の「富士の輝」で、右がいわゆるカタログの色。左が「赤富士」として店に並べているものだが……、うっとりするほど美しい。

「赤のほうが見栄えがいいでしょう。糖度は変わらないのに、二つを並べておくと赤を選ぶお客さんが多いですね」

「富士はシャインの子供のなかでもつくりやすい品種。粒が肥大するのに裂果しない。糖度も高いし棚持ちもいい。色もしっかりつきます」

 じつは無加温でも比較的黒にしやすいといわれるほど、富士の輝は着色がいい。そんななか、深谷さんは袋を使い分けた着色管理をしている。

「加温なら確実に黒くなるんですけど、その時期に赤で欲しいってお客さんもいるんですよ。だから、黒に仕上げる房は透明の袋をかけて、赤の場合は白い袋をかけたりしてます」

「赤富士」にした状態と、カタログの「黒」。色と粒の大きさとが相まって、一度見たら忘れられなくなるほどインパクトがある。目標は1 粒30 〜40g、1 房1kg 以上

 

 同じような話だと、赤系の「スカーレット」は、下のようなピンクの房を欲しがるお客さんもいるそうだ。好みに合わせて色をガラリと変えられるのは、着色系品種ならではの魅力である。

 ちなみにスカーレットは比較的糖度の上がりが早い品種。収穫適期は色ではなく、味で見極めたほうがよいそうだ。

本来は赤。糖度がのればこのような色でも売れる。粒揃いがよくきれいな房型に仕上がる品種なので、贈答用にもピッタ リ。目標は1 粒23g 前、房1kg 前後

フルメットで個性を際立たせる

 先ほどの図にある品種をつくりこなすうえで大事なのがフルメットの使い方だ。

 フルメットとはホルモン剤の一種で、ブドウではジベレリン処理に併用することで着粒を安定させたり、・・・

この記事の続きは2023年2月号をご覧ください

2023年2月号では、この記事のほか、「ねらい目着色系ブドウ品種」と題して以下の記事を掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 手が止まらない クイーンセブン 渡辺康弘
  • 色、大きさ、味に驚き! 真沙果 飯塚芳幸
  • 福島生まれの黒系早生品種 あづましずく 武井浄

ブドウ大事典

農文協 著

原産地、来歴から形態・生理・機能、品種生態、生育過程と技術、施肥と土壌管理、整枝、剪定などブドウ栽培の基礎情報を網羅、「種なし・大粒、皮ごと」時代の品質向上・省力技術も詳しく解説。精農家25事例を収録。

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ブドウ・シャインつくりこなしの新技術/休眠期施肥から生育期施肥へ
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ブドウ・シャインつくりこなしの課題と最新技術、ロケット整枝&これっきり摘粒の農家事例、カンキツ効率的年1回施肥法など省力・低コストの新肥培管理、ナシの盛土式根圏制御栽培法、果肉障害、発芽不良対策など。