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くん炭で、田んぼの地力ムラが劇的改善

滋賀・中道唯幸

くん炭を持つ筆者(63歳)。稲作は約40haで、そのうち33haは有機栽培や自然栽培
(依田賢吾撮影、以下表記がないものすべて)

合筆で極端な地力ムラに

 10年ほど前に3枚の田んぼを1枚に合筆したことがあります。1枚は以前から土作りを進めていた田んぼ、その隣2枚を新たに作付けることになりました。以前の耕作者は慣行栽培で有機物を入れるなどのことはされていません。さらにこの田んぼは田面が5cmくらい高い。

 これをレーザーレベラーで単純に均平化すると、土作りのできていない田んぼは貴重な作土が削られて、さらにやせた土になってしまう。合筆で作業性は上がるが、1枚の田んぼに極端な地力の差が出ることが簡単に想像できました。

 そこで、土作りができていない田んぼの作土はできるだけ圃場に残そうと、少し大きめのプラウで天地返しをして、作土を深部に移動させてから、表面を削って均平作業をしました。

 しかし、結果は期待はずれ。結局、削られた部分は公園にある砂場のような土になってしまい、保水力も保肥力もまったくない無残な結果に。夏場の田んぼを見れば一目瞭然です。以前からつくっていた田んぼは株も張り元気そのものなのに、削られてしまった部分は株が貧相で、いもち病や紋枯病、ごま葉枯病などが多発する悲惨な状況でした。

やせた土が一発で蘇った

 翌年慌てて地力のない部分にだけ、自家製の牛糞完熟堆肥を反当500kgほど投入。2年連続で入れたところ、少しは改善したものの、イネの免疫力も収量もイマイチでした。

 そこで3年目は堆肥とともに、モミガラくん炭を集中的に入れてみようと、反当800Lほど投入。くん炭は腐植のような力があると聞いていたからです。すると結果は見事で、昨年までの苦労が嘘のよう! イネも元気でいきなり立派な田んぼになってくれたのです。くん炭には、やせた土を劇的に改善できる効果があることを実感しました。

散布のコツは湿らせること

 くん炭は以前からJAで100L1袋を800円で購入し、有機圃場には使っていました。予算の都合で慣行栽培には使っていなかったのですが、これに味をしめた僕は、とくに地力のない田んぼにはすべて毎年反当500L程度のくん炭または木炭をまくようにしています。

 散布の仕方には少しコツがいります。くん炭は軽いので、風があると舞い上がってうまくまけません。試行錯誤の末、ブレンドキャスター(ミキサーに似た機械)を使って水を入れて攪拌し、湿らせてくん炭の比重を上げてやると、多少風があってもまけることがわかりました。

 ブレンドキャスターのホッパーに100Lのくん炭が20袋ほど入るので、そこに水を80Lほど混ぜればOK。

 くん炭や木炭の投入量は、初年度は乾燥重量で反当80〜100kg(約800〜1000L)、2年目からは50kg(約500L)を目安に、秋から春先の余裕のある農閑期にまくようにしています。

 自家製の発酵堆肥などに事前にくん炭を混ぜ込んでおけば、発酵菌には好条件になるし、一緒にまければ散布コストも大幅に削減できそうです。まだ試していませんが、今後やってみようと思っています。

くん炭は水で濡らしてから散布

ブレンドキャスターのホッパーへくん炭を投入。その後、大きな柄杓などを使って水を入れる
ホッパーの中でかき混ぜながら散布すれば、詰まることもなくスムーズにまける
乾いたくん炭は風が吹くとすぐに飛び散るが、湿っていれば飛ばされない

炭は「肥料の貯金庫」

 モミガラくん炭の成分は、ざっくり半分がケイ酸です。イネへのケイ酸補給は病害虫免疫力向上や高温障害軽減、食味品質向上など大きな力になります。

 また、炭には小さな穴が無数にあいていることから、保水力や保肥力の改善に効果があります。炭は肥料成分を吸着し、流亡を抑え、作物が欲しがるときに必要に応じて出し入れしてくれる「肥料の貯金庫」の役割も持っている。肥料代高騰の今、これが大きいと思います。

 さらに炭の小さな穴が微生物にとっては高級マンションのような居住空間で、根と共生する菌が作物と連絡を取り合いながら、必要に応じて養分を提供してくれます。

 土壌にこれらの力があると、僕たちの日々の肥培管理がラクになるだけでなく、肥料もムダなく使えて経済的にもラクになります。

ブレンドキャスターでくん炭を散布。散布幅は左右合わせて6m程度。散布時間は下準備も含めて1haで2時間ほど

CO2フリーにも貢献

 近年、SDGsなど環境改善の高まりでCO2フリーが意識されています。くん炭や木炭などの有機物を炭化して土壌に投入することは、大気に解放されるはずだった炭素を土壌にとどまらせることになります。これは、2015年にパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、フランスが提案して始まった「フォーパーミル」にも則しています。

 フォーパーミルとは、1000分の4(0.4%)のことで、もし全世界の土壌中の炭素の量を毎年0.4%ずつ増やすことができたら、大気中のCO2の増加量をゼロに抑えることができるという計算です。

 どんどん肥料が貴重になっている今、我々農家は炭を田畑に投入することで、微生物をはじめ多面的に地力が上がり、収量や経営の安定につながる。と同時に温暖化防止にも貢献できる。一石二鳥以上の効果があるわけです。

 農業は厳しいという話が聞こえてきますが、炭の力を考えるだけでも、まだまだワクワクできる面白い世界が続きますね。

くん炭散布のコツがよくわかる動画を期間限定で公開中です。

この記事のほか、2022年12月号では農家のモミガラくん炭の使い方がよくわかる以下の記事も掲載しています。

  • くん炭を株元にたっぷりまいたらアブラムシが激減 冨永篤史
  • 野菜苗、くん炭100%培土で根張りよし 阿南勝之進
  • 菌根菌・ミネラルがじわじわ効く タマネギ、ニンニク、エンドウ……越冬野菜がよく太る 森昭暢
  • モミガラくん炭の成分は? 効果は? 頼泰樹

ぜひ本誌でご覧ください。

現代農業特選シリーズ
DVDブック モミガラを使いこなす

農文協 編

このたび本とDVDの両方で、農家のモミガラ活用術保存版を編集しました。
モミガラは、日本に稲作がある限り毎年必ず生み出されてくる地域資源。いろんな技で使いこなしている人がいます。風のある日でもサラサラくん炭をやく方法、モミガラと米ヌカのマルチで雑草を抑える方法、ブルーシートで簡単に極上モミガラ堆肥をつくる方法、カキガラやトウガラシ入りモミ酢活用術などは、記事でもDVDでも楽しめて現場の空気感まで伝わります。月刊「現代農業」から生まれた本なので、農家の知恵と工夫が満載。

発酵利用の減農薬・有機栽培

松沼憲治 著

土着菌による手作り発酵資材で、減農薬・有機40年連作の農家技術を公開。土中発酵の土つくり、土着菌ボカシ、堆肥、モミ酢、乳酸菌液、黒砂糖液などの作り方・使い方を詳解。ハウスキュウリ、露地野菜、水稲栽培も