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『現代農業』100年のあゆみ

楠本雅弘

農家向け月刊誌では日本初

『現代農業』は2022年3月、創刊100年を迎える。学会誌や団体の機関誌にはいくつか例もあるが、農家向けの市販月刊誌が創刊100年を祝うのは、おそらく本誌が初めてであろう。ちなみに、広く読まれている『家の光』(家の光協会)は、1925年5月号創刊で、同97年になる。これに続くのが『農業および園芸』(養賢堂)と『農耕と園芸』(誠文堂新光社、旧『実際園芸』)の2誌で、1926年の創刊である。

 いうまでもなく、『現代農業』の発行者は(一社)農山漁村文化協会(農文協)であるが、その農文協は2020年3月に創立80周年を迎えた。ということは、農文協よりも、『現代農業』のほうが18年も歴史が長いことになる。

 そこで、『現代農業』と農文協にまつわる故事来歴を振り返ってみることにしよう。

何度も変えた誌名

 みなさんは、成長するにつれて呼び名が変わる「出世魚」を知っていると思う。そう、代表的な出世魚のブリは幼魚から成魚になるまでに、関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ(関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリなど、地域によって違うこともある)と呼び名が変わる。同じように『現代農業』も誌名を(そして内容も)何回か変えることによって、100年間を生き抜いてきたのだ。その経過を次ページの図にまとめてみた。これなら一目瞭然で、文章でクドクド説明するよりもずっとわかりやすい。

 100年の歴史といっても、誌名が『現代農業』になってからすでに62年目なので、ほとんどの読者が『農村文化』という時代があったことをご存じないのも当然であろう。しかし、世間は広い!

 現在の定期購読者の中には、祖父の代、つまりは『農村文化』の時代から継続して購読しているお宅もある(本誌p254)。もしかすると、みなさんの中にも年末に倉を整理したら『農村文化』があった、という方がいるかもしれない。

誌名を変えた三つの要素

 さて、ではなぜ誌名を変える必要があったのだろうか。そのヒントは、図の〈時代背景〉に項目を列挙した。それぞれの時期に、農業・農村をとり巻く政治、経済、社会の状況が大きく変化し、解決すべき新たな問題や課題が発生したことが第一。

 次に本誌の主な読者層はどのような人びとだったのか。時代の推移と共に読者層が変化し、読者が本誌に求める記事やテーマ(ニーズ)も変化していったことが第二。

 逆に、本誌の編集方針として、社会や読者にどのような論点を提起し、情報を提供し、何を訴えようとしたのかが第三。

 以上の三つの要素の組み合わせによって、本誌の記事内容が変化していき、それを表現(アピール)するのにふさわしい誌名が決められる。もっとも、発行者側としては、せっかく社会に広く知られるようになり、定着した誌名を変えることには躊躇もあり、変えたくないというこだわりもある。

 そこで、誌名と発行者の関係や、発行者の発行目的、主な読者層とその変化などを整理したのが表である。

 こうしてみると、発行(編集)者の目的と誌名はピッタリ重なりあっていることが確認できる。

『現代農業』の誌名改称経過

 さて、ではなぜ誌名を変える必要があったのだろうか。そのヒントは、図の〈時代背景〉に項目を列挙した。それぞれの時期に、農業・農村をとり巻く政治、経済、社会の状況が大きく変化し、解決すべき新たな問題や課題が発生したことが第一。

 次に本誌の主な読者層はどのような人びとだったのか。時代の推移と共に読者層が変化し、読者が本誌に求める記事やテーマ(ニーズ)も変化していったことが第二。

 逆に、本誌の編集方針として、社会や読者にどのような論点を提起し、情報を提供し、何を訴えようとしたのかが第三。

 以上の三つの要素の組み合わせによって、本誌の記事内容が変化していき、それを表現(アピール)するのにふさわしい誌名が決められる。もっとも、発行者側としては、せっかく社会に広く知られるようになり、定着した誌名を変えることには躊躇もあり、変えたくないというこだわりもある。

 そこで、誌名と発行者の関係や、発行者の発行目的、主な読者層とその変化などを整理したのが表である。

 こうしてみると、発行(編集)者の目的と誌名はピッタリ重なりあっていることが確認できる。

『現代農業』の誌名改称経過

編集発行の中心人物は古瀬伝蔵

 表を見てわかることは、『清明心』を除いて『農政研究』から『農村文化』まで、編集発行の中心人物は、長野県の木曽郡大桑村出身の古瀬伝蔵であったことである。そして1922年3月、愛知県碧海郡依佐美村野田(現在の刈谷市野田町)の農村青年たちが創刊した農村文化雑誌『清明心』。これも、青年たちが師と仰ぐ農村指導者・山崎延吉を説得して、古瀬伝蔵が編集発行者となったのである(1926年9月号より)。

 形式的には別の形に見えるが、古瀬の手によって、両誌は実質上「合併」したのであり、その結果『農政研究』は文芸欄を充実させて読者を青年層のリーダーたちへ広げようと試みている。

 1941年、『農村文化』と改名すると、誌面は文学・芸能が中心となり、『清明心』の時代へ先祖返りしたように思える。

 筆者は、本誌の2021年2〜12月号に「農文協80年史こぼればなし」を連載した。本稿と合わせて読み直していただくと、より理解が深まると思う。

(農山村地域経済研究所所長)

誌名の変更経過と、発行者(編集者)・発行目的・主な読者の相互関係

この続きは2022年1月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください

*月刊『現代農業』2022年1月号(原題:『現代農業』100年のあゆみ)より。情報は掲載時のものです。

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農家、地域に学んで進めてきた農文協の出版の歩みを、大きな影響力をもった作品を中心に編集者自身が綴る。作品へ思いや反響が農家力、地域力の歴史と今を照らし出す。

人間選書236 農家と語る農業論

守田志郎 著 玉真之介 解説

無機的合理性を絶対視する近代科学主義と進歩主義への深い懐疑をベースに農耕する者の目線で描いた農業、農学論。耕すことの歴史、農地所有論、商業資本と農業、流通、むら・共同体の歴史と理論、技術・農法史論など。