現代農業WEB

令和6(2024)年
3月29日 (金)
弥生
 先負 壬 辰
旧2月20日

あああ

ホーム » 2022年 » 1月号 » 脚立なし、樹を見下ろして収穫!?(上) カキの二本主枝・一文字仕立て

脚立なし、樹を見下ろして収穫!?(上) カキの二本主枝・一文字仕立て

和歌山県紀の川市・田口晃さん

収穫直前の樹上脱渋のカキ(刀根早生)と田口晃さん(2021年10月7日、写真はすべて依田賢吾撮影)

年配の人も若い人もラクなのが好き

「100歳現役を目標にしとるんよ」

 そう豪語する田口晃さん(77歳)のカキ畑にお邪魔して、思わず息を呑んだ。目線より下の位置にズラリと果実がなっている……。

「カキの樹を見下ろすことなんてないやろ」。ニヤリと笑う田口さん。30年ほど前に考案したという樹形「一文字仕立て」を見ると、100歳現役も大げさではなさそうに思えてくる。

 この樹形の特徴は、なんといっても樹高の低さ。脚立がなくてもほぼ100%果実に手が届くので、高齢農家も安全に作業できる。脚立の上り下りから解放されて、能率もグンと上がる。「安全で快適、だから楽しくなる」。そんな一文字仕立てに魅力を感じて、近ごろ近所の農家仲間が続々と取り入れ始めているそうだ。「田口さんの畑見してもろうて、ほれこんでしもうてな」と、いち早く目を付け、2022年で定植5年目を迎える辻田誠さん、御年85歳。ようやく成園になったウメの樹を切ってまで取り入れたという。「自分も歳いってくるし、作業のしやすさがええな」と目を輝かせる。

 三浦俊久さん(44歳)は新たに土地を買って植えた。「実家のカキ園だと6〜7段くらいの脚立を使ってましたからね、これならと思いまして」。定植して3年目の若木の基部付近には早くも実がいくつかなっていた。三浦さんの作業を見た安部あんべ豊さん(49歳)も、「脚立作業でバタバタしないのがいいな」と思い、20年秋に20aで新植。「年配の人もやし、将来カキをつくり続けたい人にもいいで」と田口さん。

超低樹高。すべての枝葉に光が当たるので、株元周辺にもたくさんいい果実がなる
辻田誠さんと4年目の堀内早生。21年は落葉病で葉が落ちてしまった。22年から収穫予定

シンプル動線との合わせ技で時短

 作業がはかどる理由は、低い樹高と主枝が一文字に伸びたシンプルな樹形だけでなく、畑のレイアウトにもある。

 田口さんはすべての畑に軽トラの通路を確保して、そこを起点に直線の動きだけで、せん定から新梢管理、摘果、袋掛け、防除、収穫までをできるようにしている。動線もシンプルなので「あれ、あの樹は摘果したっけか?」という迷いや見落としがなくなり、サクサクと身体が動くようになる。低樹高とシンプル動線の合わせ技で、「収穫なら、普通の樹形と比べて半分くらいの時間でできるで」。

魚の骨のような成り枝で秀品揃い

「高品質のカキがたくさんとれるのも、この樹形のよさやね」と田口さん。

 一般的な開心自然形のような樹形だと、枝が上下に重なって下枝の日当たりが悪くなり、品質にバラつきが出る。しかし一文字仕立ては、魚の骨のように成り枝を配置するので受光態勢がいい(本誌173ページ上写真)。基部付近も玉が太り、色がのり、糖度が上がる。

 実際、地元JAのカキの等級は4段階(形や色で評価、「赤秀」〜「ム印」)で、田口さんは毎年上位二つの割合が6:4。それより等級の低いものはほとんどない。階級は7段階(大きさで評価、「6L」〜「M」)だが、1本の樹に200個ほどしかつけないため「4L(300g前後)」以上がバンバンとれる。樹上脱渋柿は4Lが200円前後だから、1本の樹の稼ぎは、ざっと4万円ほどとなる計算だ。なお、この仕立ては6年目で成園化し、10a当たりの収量は県の平均程度(約1.8t)を得られるそうだ。

この続きは2022年1月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください

*月刊『現代農業』2022年1月号(原題:カキの二本主枝・一文字仕立て)より。情報は掲載時のものです。

今月号のイチオシ記事

 2022年1月号の試し読み 

今月号のオススメ動画

今号のオススメ動画は画像をクリックするとルーラル電子図書館へ移動します。動画は公開より3ヶ月間無料でご覧いただけます。

大判 図解 最新果樹のせん定

農文協 編

どこをどう切れば花芽がつくのか。毎年きちんと成らせるには、どんな枝の配置をすればよいのか。実際の樹を前に悩む疑問に応え、だれでもわかるせん定のコツを15種の果樹別に解説。活字も図も写真も見やすい大型本

果樹 高品質多収の樹形とせん定

高橋国昭 著

ビックリするような収量と品質をあげるには、光合成生産(物質生産)の量を増やし、それをいかに多く果実に分配するかが勝負。それをベースに高品質多収栽培の理論を確立し、生育目標、樹形とせん定、栽培法を解説。