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【日持ちする品種・しない品種】一石三鳥の硬いモモ 「早生ワッサー」「なつっこ」

配送料アップ、輸送の遅延、輸送距離の削減などのいわゆる「物流2024 年問題」。現代農業2024年2月号「日持ちする品種・しない品種」コーナーでは、長時間輸送に耐えられる「日持ちする品種」と、地場産流通に特化した「日持ちしないけど、直売などで大人気の品種」のそれぞれを集めました。そのなかから、モモの記事を試し読みとして公開します。

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長野・ 牧野剛士

果肉は乳白色で甘く、酸味は控えめ。果肉がしっかりしているので、成熟してもあまり軟らかくならない
果肉は乳白色で甘く、酸味は控えめ。果肉がしっかりしているので、成熟してもあまり軟らかくならない

モモの配送は全量クール便の時代がくる?

当園のモモ栽培は祖父の代から始まり、私は2018年頃から手伝い始めました。おもに個人販売と農協出荷が中心で、ネクタリンの「サマークリスタル」「早生ワッサー」「スイートリッチ」と、白桃の「なつき」「あかつき」「川中島白鳳」「なつっこ」「川中島白桃」を栽培中。80aほどの面積ですが、多様な品種を育てているので、それぞれの特性や育てやすさがよくわかるようになってきました。

地球温暖化の影響で、当園のモモの配送はクール便が前提となりつつあります。22年までは常温配送がメインで、クール便は輸送に2日以上かかる地域にしか使用しませんでした。というのも、モモは一度冷蔵してから常温に戻すと傷みやすいし、設定温度が0°Cに近いと低温障害を起こして味や食感が悪くなるからです。

なるべく冷蔵は避けたいところですが、23年の猛暑は異常で、背に腹は代えられませんでした。品種によっては翌日午後に到着する地域でも、やむを得ず近所の冷蔵庫を借りて、8°C程度の低温で予冷してから出荷しました。

常温発送でも問題なかった品種

そんな温暖化という逆境のなかでも栽培しやすく、日持ちがよくて常温発送でも問題なく、消費者の評価も高いと感じた一石三鳥の品種を紹介します。

果肉が非常に硬い「早生ワッサー」

果皮は赤く、果肉は黄色。過熟果がほとんどないので、宅配にいい
果皮は赤く、果肉は黄色。過熟果がほとんどないので、宅配にいい

ワッサーは長野県須坂市にある、ネクタリンとモモの混植園で偶然発見された品種です。最大の特徴は果肉が非常に硬いこと。味はモモですが、硬めのリンゴのような食感がします。

ワッサーには早生、中生(スイートリッチ)、晩生があり、なかでも早生ワッサーが生産、販売の面で優れていると感じました。収穫適期の7月末から2週間近く樹上でならせておけるので、労働配分がしやすいですし、お中元とお盆の需要が重なる時期にピッタリ出せます。また、白桃は収穫後、常温で2~3日以内が食べる目安ですが、ワッサーは常温でも5日間はおいしく食べられます。

栽培も簡単で、人工受粉や袋掛けの手間もありません。スイートリッチと比べると若干糖度は劣るものの、23年はせん孔細菌病や灰星病などの被害果は半分程度。着色もよかったわりに日焼け果も少なかったです。

軟化でのクレームがない「なつっこ」

あかつきと川中島白桃をかけあわせた品種で、果肉がしっかりしています。個人配送で得られた感想ですが、23年は同時期に収穫する人気品種の川中島白鳳と比べて軟化などのクレームがありませんでした。また、長野市では収穫時期が8月上中旬なので、早生ワッサーと同じく、お中元とお盆の需要を満たせます。

川中島白桃などの白桃品種と違って人工受粉や袋掛けの手間も省けます。糖度は14~16度と高く、着色もよくて生理落果も少ない。さらに、せん孔細菌病への耐性もあると感じていて、無袋のなつっこのほうが有袋の川中島白桃や黄金桃よりも被害果は少ない印象でした。(長野市)

長期輸送日持ち-モモ ワッサーほか2402

筆者(31歳)。モモの他、リンゴ、イネを栽培。リンゴの受粉を兼ねた養蜂にも挑戦中

現代農業2024年2月号「日持ちする品種・しない品種」コーナーでは、以下の品種について掲載されています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

▼日持ちする、長期輸送に向く品種

皮が硬くてしっかりした肉質の大玉トマトれおん

葉が厚くて萎れにくいリーフレタス2種

観光イチゴ園傷みにくくて味のいい厳選3品種

常温で1週間は余裕!硬肉モモのまなみ おどろき

3週間も楽しめるリンゴ シナノリップ

▼日持ちしない、輸送に向かない品種

旨み感激の薄皮ミニトマト ほれまる

まぼろしのメロン 新芳露

1日しか楽しめない絶品イチジク

お盆需要に応えるモモ 夏雄美

甘ーい大玉の青ナシ かおり

メチャクチャ甘いキウイ紅妃の追熟販売

リピート不可避のブドウ玉しずく

種苗メーカーに聞いた日持ちする品種・日持ちしない品種

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農薬と肥料を使わなくても育つしくみ

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無農薬・無肥料栽培は農薬と肥料を使わないだけでは不可能。耕起と除草は行ない、低窒素の有機物を施用するなど、農薬と肥料を使わなくても育つ自律的養分供給システムをつくる道筋を解説