2024年1月号から始まった、野菜づくり入門の新コーナー「みんなで農!」。今回は品種の話です。普段から菜園教室を開いている先生役の農家に、「自分でつくって食べるなら、これ!」を教えてもらいます。現代農業WEBではその一部を試し読みとして公開中です。
長野・ 竹内孝功

求められているのは食べ飽きないもの
プロ農家の方が求める品種には、利益になるもの、例えば秀品率が高い、収穫量が多い、一斉収穫できるといった特徴があります。長年、菜園講師をしていると、自給用野菜の品種はプロ向きとは違うと思うようになりました。
菜園を始めた当初は、いいものが一気にたくさん収穫できるとうれしいものです。ところが、必要以上にキュウリやナスがとれると食べきれなくて、意外と困りものです。何より、毎日同じものを同じように食べるのは大変で、料理を工夫したり、模索したりして夕飯のバリエーションに苦労します。
自給菜園に向く品種の要素は、大きく分けて三つ。とにかく美味しい。育てやすい。ちょっと変わっていて、つくってみたい。毎年つくる定番野菜の基準は、やっぱり育てやすくて美味しいこと。食べ飽きないものが求められている気がします。
そこで、自然菜園スクールで2023年の酷暑にも負けなかった人気の品種をご紹介します。

とり遅れても皮が硬くならない、焼くとトロトロ

通常のナスは多くの養分を求めるため、肥料と水をたくさんやる必要があります。支柱への誘引など、お世話をしっかりして、収穫をこまめにすることが肝要です。
ナスは長く実をつけておくと樹と根の負担が大きく、樹勢が落ちてしまいます。しかも、実はすぐに大きくなり、皮が厚く、タネが入り、美味しくありません。週末家庭菜園では、収穫時になかなか畑に行けず、実が大きくなってしまったり、傷ナスや石ナス、ボケナスなどになってしまったり、美味しいタイミングを逃しがちです。さらに、猛暑、酷暑続きで生育が悪く、実の色落ちが目立ち、栽培と収穫が困難になってきています。
そんななか、在来青ナス(自然農法センター)は九州系なので暑さに負けず、無肥料でつくれます。しかも、週に一度の収穫でも皮が硬くならず、タネも入りにくく、加熱するとトロトロ。もともとの色が紫ではなく緑なので、色落ちはしません。多収穫できないからこそ、食べきりで自給にぴったりのナスです。
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現代農業2024年2月号では、「在来青ナス」の他に、竹内さんおすすめの2種「八町きゅうり」「サンマルツァーノ」についての解説も掲載されています。ぜひご覧ください。
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育種して次世代につなげる
自給に向いた品種は育てやすいだけでなく、そこそこ収穫でき、食べ飽きない食べ方ができ、保存もでき、購入できない美味しさが一番の魅力になります。私の夢は、自給菜園に向いた野菜の品種を育成し、次世代につなげること。
まだまだ各地には在来種や伝統野菜があり、あまり出回らない魅力あふれた品種があると思います。ぜひ皆さんも発掘して自家採種して、一緒に次世代に引き継げたらと思います。(長野市)

竹内 孝功(たけうち あつのり)
著書に『これならできる!自然菜園』『苗で決まる!自然菜園』(いずれも農文協)など (依田賢吾撮影)
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野菜の本気を引き出す
竹内孝功 著
無農薬・無肥料・半不耕起でも野菜が強く育つためには、根っこ優先のコンパクトな若苗づくりが大切。本書では写真・イラスト豊富に、自然菜園の育苗のやり方を解説。畳1畳のスペースでできるミニ温床、トマト雨よけ支柱でつくれるミニ育苗ハウス、ベランダでできる「陽だまり育苗」など、家庭菜園にぴったりの育苗環境づくりも提案。野菜36種の特性と失敗せずに苗を育てるポイント、定植後の管理を解説。定植がラクなタマネギのセルトレイ育苗、寒冷地でも秋ジャガがたくさんとれる夏の芽出し術など、裏ワザも多数紹介。