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超早出しスイートコーン 扇風機を設置して 晩霜被害ゼロに

現代農業2023年3月号「野菜・花」コーナーの記事のなかから、イチオシ記事を試し読みとして公開します。これは、市販の扇風機と中古発電機を組み合わせてスイートコーンの遅霜対策システムを自作した池川さん(山梨県)の記事です。

山梨・ 池川雄二

筆者(65歳)と防霜に使っている扇風機
筆者(65歳)と防霜に使っている扇風機

超極甘スイートコーンが 大人気

 私は甲府盆地の南端にある市川三郷町上野地区で、自己所有の水田や依頼されて耕作するようになった水田など合わせて8haで水稲を、田植え前の水田約1ha を利用して甘みの強いスーパースイートコーン( 甘々娘 )を栽培しています。
 播種日を変えて収穫時期をずらしていますが、そのうち約 25aは5月末に収穫する超早出しスイートコーン( 2008年4月号p151 )です。果物類が豊富に出回るシーズンより前に直売所に出荷でき、味や品質も優れているため、売れ行きは良好。生産が需要に追いつかない状況が続いています。

4月の晩霜で全滅

 栽培を始めて 20 年余りになりますが、最も頭を痛めたのは盆地特有の気象条件による晩霜被害でした。超早出し栽培の場合、二重トンネルを張ったウネに2月初めに播種、3月中下旬に内トンネルを外し、4月上旬に外トンネルも取ります。ところが、2014年4月10日と18年4月20日に霜に遭い、スイートコーンがほぼ全滅。自然災害ならどうしようもないとあきらめていました。
 そんなとき、たまたま出かけた静岡で、一面に広がる茶畑に大きな扇風機(防霜ファン)が林立している光景を初めて目にしました。これはいったい何のために設置されているのか。とても気になり、茶を栽培している友人に尋ねたところ、3月後半から4月後半に扇風機を回して晩霜対策をしているのだと教えてくれました。そうだ!これなら、私のつくっているスイートコーンの晩霜対策に応用できる。
 さっそく、扇風機を畑で利用できるシステムを考え始めました。

4月上旬にトンネルを外した甘々娘。これから扇風機を置く。4月下旬までに晩霜に遭うと被害が大きくなる
4月上旬にトンネルを外した甘々娘。これから扇風機を置く。4月下旬までに晩霜に遭うと被害が大きくなる
4月後半に晩霜害を受け、全滅した超早出しスイートコーン
4月後半に晩霜害を受け、全滅した超早出しスイートコーン

9万円で 扇風機と発電機をゲット

 水田の裏作として栽培しているので、茶畑や果樹園と同じような設備(防霜ファン)を設置することはできません。では、どのくらいの大きさの扇風機を、10aあたり何台設置したらいいのか?あれこれ悩みましたが、とりあえず挑戦するしかないと思い、費用や機種などを頭の中でイメージしてみました。しかし、相当大規模な設備になりそうで、コストを考えたらやはり無理だったかと思うようになりました。

 その年の夏、近くのホームセンターで店内に並んでいる扇風機を眺めていると、ふと晩霜対策のことが頭に浮かび、10台を衝動買いしました。業務用の少し大きな扇風機で1台6000円ほどだったので、総額6万円ほどです。
 次に発電機の値段を見ると、 10万円から30万円まで幅があります。安いものは能力が低くて実用的ではなく、パワーのあるものは高額で手が出ません。友人から「そんなものは中古でいくらでもあるよ」教えてもらい、近くの中古屋さんで3万円で手に入れました。

脚立の上に設置

超早出しスイートコーンの畑( 2 5 a )。畑の中の扇風機は、脚立が通路をまたぐように設置。西端のものはアゼ上に置いた。作物には直接風を当てず、上空の冷気が攪拌されるように風を上向きに送る
超早出しスイートコーンの畑(25a)。畑の中の扇風機は、脚立が通路をまたぐように設置。西端のものはアゼ上に置いた。作物には直接風を当てず、上空の冷気が攪拌されるように風を上向きに送る

 静岡の茶畑で見たような高い位置に扇風機を設置するのは難しかったので、6尺(約1.8m)の折りたたみ式脚立の上に載せて使うことにしました。あとはどこに置くかです。実証的なデータもなかったので、とりあえず20m間隔で通路に設置。就農前に住宅設備業を営んでいたときの腕を活かして、扇風機と発電機をつなぎました。
 扇風機のスイッチを入れてから発電機を試運転すると、10台が一斉に回り出します。自分ながら感動です。しばらく眺めていると、近所の人たちが興味深そうに近づいてきて、いろいろなことを聞かれました。
 無事に動作確認できたことに力をもらい、翌年の4月からスイートコーンの畑に置くことを決めました。

天気予報を見てスイッチオン

 扇風機はトンネルをすべて取る4月上旬までに畑に置きます。夕方のニュースで霜予報が出たら、その日の深夜0時に発電機を動かしに畑へ行きます。畑の上の空気をかき混ぜるように扇風機の首は上に傾けて、すべて東向きに並べて首振りモード。翌朝まで回し続けます。
 この効果もあってか、ここ3年は晩霜からスイートコーンを守ることができています。1日6時間ほど発電機を稼働するので軽油代は少しかかりますが、実際にスイッチを入れるのは年に数回だけ。全滅を防げるので大した経費ではありません。トンネルを外し、晩霜の被害を受けやすい4月下旬まで守ることができたら、十分です。

2023年3月号の「野菜・花」コーナーでは、この記事のほか、以下を掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 極上トルコギキョウの水やりの極意 兵頭衛
  • 【オランダ農業に学ぶ6】定植前に、光合成を高める計画 斉藤章
  • 【イチゴの未分化定植4】頂果房の収穫が始まった!(静岡・青島一欽さんほか)

農家が教える トウモロコシつくり コツと裏ワザ

農文協 著

本書は別冊現代農業「農家が教えるトウモロコシつくりコツと裏ワザ」を書籍化したもの(内容は変わりません)。トウモロコシ栽培のことならこれ1冊でOK。うまく発芽させるには? うまく受粉させるには? アワノメイガやカラス、ハクビシンを防ぐには? などの疑問に農家の実践で答える。早どり・遅どりのコツ、名人のつくり方、おいしい食べ方、収穫後の茎葉の活かし方まで、トウモロコシの魅力が満載。「どうしてそうするのか?」の疑問にはトウモロコシの生理生態をまとめた「絵で見る トウモロコシの育ち方」でよくわかる。

農家が教える 天気を読む 知恵とワザ

農文協 編

 天候に左右されることの多い農業では、「天気を読む」ワザは昔から重要な農業技術の一つだったが、異常気象が続く昨今ではますます重要な技術。そこで、『現代農業』から「天気を読む」ワザを扱った記事を集めて、読者に提供する。さらに、「天気を読む」という技術の実用性だけでなく、「自然との付き合いを楽しみながら、農業をやろうではないか」(若梅健司氏)というメッセージを読者に伝えたい。観天望気、指標植物の活用、寒だめしなどの農家の知恵から、気象データの活用まで、さまざまな視点からの知恵とワザを集めた。
*現代農業別冊を単行本化したものです。