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〈燃料代ゼロ円作戦〉発電、不耕起、バイオトイレ…… 脱化石燃料化で千年続く農業へ

神奈川・仲野晶子

左から研修生、筆者、夫の翔、研修生。畑の作業小屋の前で

 神奈川県横須賀市で少量多品目の農業を営むSHO Farmの仲野と申します。SHO Farmは2014年に夫婦で新規就農し、農業の永続性を第一とした「千年続く農業」という哲学のもと営農をしています。千年続く農業を実現するために、無農薬、無化学肥料、地元の有機物資源の堆肥化、自家採種、不耕起、人材育成、ゼロウェイスト(ゴミを出さない生産と販売)にこだわった生産に取り組んでいます。

身近な農機を電動式に

 農園では、4年ほど前から脱化石燃料化に積極的に取り組んでいます。太陽光パネルで電気を得て、農業の必須品である刈り払い機は、ガソリン式からマキタのバッテリー式にすべて変更。現在3台を所有しています。マキタ社も脱化石燃料を明確に打ち出した会社で、農機具の電化に積極的に取り組んでいます。

 私たちのおすすめはマキタの40Vのバッテリー刈り払い機です。これはガソリン刈り払い機と同等のパワーがあり、さらに雨の中では使えないという電気の弱点も克服しています。バッテリーの刈り払い機は、燃料補給の手間がなく、燃料代もかかりません。排気はゼロ、騒音もガソリン式よりずっと小さく、早朝から使っていても近隣にご迷惑かけることはありません。同様に、チェンソーもバッテリー式のものに替えました。

作業小屋の屋根の南側に、350Wの太陽光パネルを2枚設置。作業しているのは研修生
太陽光パネルとつないだポータブル蓄電池(3.6kWh)。刈り払い機などのバッテリーを充電したりパソコンで事務作業したりするのに十分

統一してバッテリーを共有

 農機具をバッテリー式に替えるときに注意すべきことは、同じメーカーのものをそろえること。同じバッテリーが使えます。違うメーカーの農機具だと、別のバッテリーを購入しなければいけません。電化における課題は、とにかくバッテリーが高価のため、欲しい農機具だけでなく、そのメーカーが他にも汎用性のある機械を生産しているかどうか、調べておく必要があります。

畑の太陽光発電で充電

 農機具のバッテリーは、畑に備え付けた独立型太陽光発電システムで充電しています。この工事も自分たちで行ないました。パネルは地元の電気屋さんの訳あり品を格安で手に入れることができました。バッテリーはチャージコントローラー(電圧を調整)とインバーター(直流の電気を交流に変換)が内蔵されたポータブル蓄電池を、クラウドファンディングで購入しました。このタイプの蓄電池は、プラグをつなぐだけでパネルからの電気を充電できる簡単な設計になっているので、誰でも設置できます。

 パネルと蓄電池を選ぶもっとも重要なポイントは、どれだけのワット数の機械を、どれだけの頻度で使うのか、具体的に数字を出して計算することです。大きすぎる発電システムを用意してもコスパが悪いし、小さすぎる発電システムでは不足します。私たちの場合は、3.6kWhの蓄電池に350Wのパネルを2枚接続。これでほぼ毎日使う刈り払い機の充電、畑での事務作業(印刷、パソコン、Wi-Fi)は十分賄えています。費用は蓄電池、パネル合わせて40万円弱でした。

 また、太陽光発電自体は直流の発電になるので、直流で利用できるパソコンや携帯電話の充電など、できるだけ直流で使うことも電力消費を減らすコツとなります。オフグリッドな電力関係について詳しく知りたい方は、『わがや電力』(テンダー著、ヨホホ研究所)を読んでみることをおすすめします。

車の燃料費が月1.6万円減

 車は中古の三菱のミニキャブという軽バン型の電気自動車を購入し、自宅で充電して使っています。自宅には当初、太陽光発電装置はなく、購入した電気を使う形でした。自宅生活用電力に加え、野菜貯蔵用の業務用の保冷庫もある利用状況で、電気自動車導入前の電気代は月々5000円程度でしたが、導入後は9000円程度になりました。電気自動車の前のガソリン車では、月々のガソリン代に2万円ほどかかっていました。その燃料費が、4000円の電気代になったということです。

自家発電で電気代が激減

 さらに今年の6月に、県の「ソーラーパネルと蓄電池の共同購入事業」で自宅にも発電蓄電システムを導入しました(パネル、蓄電池合わせて約200万円)。自宅のほうは送電線ともつながっているので、電気が余った時には売電し、足りないときは購入しています。契約しているのは生活クラブエナジーという自然エネルギーにこだわった電力会社です。

 太陽光発電システムを入れたことで、これまで電気自動車を含めて250〜300kWhだった電力消費量が、50kWhに激減。9000円程度だった電気代が2000円に減りました。月々2000円で、家の全電気と、車の燃料費を賄っていることになります。さらに、ここに売電の収益が4000円ほど加わり、収支は2000円ほどの黒字です。

不耕起栽培で脱トラクタ

 不耕起栽培も脱化石燃料化に大きく貢献しています。トラクタはもともと所有しておらず、研修親の農家の方から借りて使っていましたが、昨年より不耕起的管理に移行することにしたため、今はトラクタをほとんど使っていません。耕耘機も出番はかなり減り、ウネ立てや緑肥の播種にたまに利用する程度になりました。今は軽のバンに載る小さな耕耘機1台と一輪耕耘機1台だけで、3haの農地を管理しています。

モアも組み合わせて省力化

 最近買ったスパイダーモアは混合ガソリン駆動ですが、とても便利です。スパイダーモアとガソリン式刈り払い機の燃料消費を比較すると、ガソリン式刈り払い機よりもスパイダーモアのほうが単位面積当たり少ない燃料で除草することができ、体力的にも格段にラクです。また、大きな緑肥を粉砕するときは、農協から歩行型のハンマーナイフモアを借りてきます。

 この点で100%脱化石燃料を達成しているわけではありませんが、機械をできるだけ使わない農法を選択し、バッテリー式の農機具を選んでいます。そしてバッテリー式がない農機具に関してはより消費量の少ない農機具を選び、さらに大型農機具はできるだけ所有せず、共同利用するようにして、燃料代、機械にかかる費用を削減しています。

薪も雨水もどんどん利用

 電力のみならず、農園ではさまざまなエネルギー自給の取り組みをしています。

 農園のストーブやキッチンには薪を使っています。電気を熱に変えるのは多量の電力を消費するため、じつはとても非効率ですし、熱であれば薪という資源で簡単に代替可能です。地元の工務店や造園屋さんと仲良くなっておくと、農園まで運んできてくれます。それらのお店は有料でせん定クズを廃棄しているので、タダで引き取ってくれる私たちのことを重宝してくれるのです。また、周囲には雑木林も多いので、薪の入手には事欠きません。

 雨水タンクは地元のガス屋さんから廃棄タンクをもらってきて(200Lステンレス製のとても立派なもので、これがゴミだなんて気が知れません!)、合計5台設置しています。水道も併設していますが、野菜の洗浄などはできるだけ雨水を利用するようにしています。

廃棄タンクを活用した雨水タンク。小屋は両屋根なので、2方向それぞれにタンクを設置して集水している
小屋にある薪のキッチン。お昼ご飯はここで調理

ニオイのないバイオトイレ

 畑のトイレは、穴を掘って、そこに便器を載せただけの大変簡素なものです。トイレの利用後は、せん定チップをかけるだけで、水は一滴も使いません。土壌と排せつ物が直接接しているため、余計な水分はすぐに抜け、排せつ物は微生物がたちどころに食べつくすため、まったくニオイもなく、虫も発生しません。

バイオトイレ。ニオイはまったくしない

 もしニオイがするようならチッソと水が多いことが原因として考えられるので、炭素源を多く加えて、炭素とチッソのバランスを取ります。虫が出るようなら土をかけて、虫ごと埋めてしまいます。穴がいっぱいになったら、別の穴を掘り新しいトイレとし、その掘った土は古いトイレを埋めるのに使います。古いトイレは半年ほどそのまま土の中で堆積させ寝かせておくと、完全に腐熟した堆肥となります。寄生虫の予防の観点から、念のため野菜には使わず、果樹の根元に施肥をしています。

 畑に簡易トイレを設置する方も多いかと思いますが、高価で不衛生な汲み取り式に比べて、目隠しの囲いと穴を掘るだけのトイレは圧倒的に簡単で安価で衛生的です。この方法は災害時にも役立つので、今すぐ取り組まなくてもぜひ覚えておくとよいと思います。

畑に建てたバイオトイレの外観。広さは4m2ほど。この中で掘る場所を3カ所作って順番に使っている
写真右:トイレの穴の深さはどれだけでもいい。写真はスコップで1mほど掘った様子。底に竹炭を敷いた
写真左:穴の上に切り抜いたコンパネを敷く。この上に便器を載せるだけで完成

大きなシステムから独立を

 もちろん、送電網からくるインフラを使うことも可能ですが、私たちが独立系にこだわる理由は、大きなシステムは持続不可能で、その生産過程にさまざまな不正義があることを、見て見ぬふりをしなければ利用できないことです。このような持続不可能性と不正義に加担することは、千年続く農業の哲学に反すると思っています。

 大きなシステムから独立することは、容易でないことは実践してきた私たちもよくわかっていますし、まだまだ依存しているところはたくさんあります。それでも、その問題点を直視し、できることから取り組み、その知恵を多くの人と共有することは、エネルギーが間違いなく課題となる将来において、もっとも必要なことであると確信しています。

(神奈川県横須賀市)

この記事のほか、11月号の特集では燃料代の節減に役立つ以下の記事も掲載しています。

  • 電気自動車で化石燃料ゼロ生活へ 中古ソーラーパネルで効率よく充電するには? わたなべあきひこ
  • 自作の太陽熱温水器でアッツアツの五右衛門風呂 近藤宏行
  • 「農家の節約術」にも役立つ!? 「みどり戦略」の支援措置について、農水省から 齊賀大昌

ぜひ本誌でご覧ください。

農家が教える 自給エネルギーとことん活用読本

農文協 編

3.11の大震災・原発事故以来、「節電」がアピールされて巨大かつ集中的管理の脆さが露見し、自然エネルギーに対する社会の態度は変わりつつある。しかし、大方の議論は国家的なエネルギー政策という観点から、「電力」を中心に再び新たな巨大インフラが話題に上る。しかし、そこからだけでは未来は拓けない。本書は、身の回りに眠っているエネルギーを暮らしに活かす、小さなエネルギー自給のさまざまな面を楽しく描き出す。人任せのエネルギー議論から一歩先に進むための、エネルギー自給実践の書。

ゼロエネルギー住宅

三浦秀一 著

エネルギーに興味を持っている人のなかには、自分の家でも再生可能エネルギー使ってみたい、作ってみたいと考える人も確実に増えている。だがエネルギーを選び、取り入れる手順や方法はわかりにくい。本書は著者自身がゼロエネルギー住宅をつくった経験を糸口に、そもそもZEHとはどういうもので、どこから手をつけたらよいか。エコが前進しているかどうかの尺度などなど具体的に解き明かしていく。主なエネルギー源として太陽光発電をカバーするが、とくに太陽熱や木質バイオマスなど熱利用や省エネにポイントにおく。