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【ますます人気拡大】育苗ハウスでラズベリーの土のう袋栽培

国産ラズベリーの需要は増え続けているが、課題は、病気や暑さ対策など。秋田県で15年前からラズベリー栽培に取り組む佐々木さんの記事(現代農業2024年1月号)を試し読みとして一部公開します。

秋田・佐々木雄幸

実が大きい「チルコチン」。夏季結実性品種(一季成り)。2年枝に実をつける。7月に収穫
実が大きい「チルコチン」。夏季結実性品種(一季成り)。2年枝に実をつける。7月に収穫

国産ラズベリーに需要あり

 秋田県五城目町で主食用米を10ha、ラズベリー4品種を12棟のハウス(うち6棟が水稲育苗と兼用)で栽培している。

 1982年、秋田県立農業短大(現・秋田県立大学)卒業後、派米農業研修生として2年間、ワシントン州ウェナチの近くにあるオロンドという小さな町のフルーツカンパニーで修業した。100haほどの(現地では)小さな農場であったが、最新技術を取り入れた経営を行ない、パイオニア的な存在であった。帰国後、果樹農家になろうという夢と野望を持っていたが、小さな規模では立ちゆかなかった。以後、水田面積を増やし、稲作専業となった。

 ラズベリーは15年前、町長の「町に新たな特産品を」という呼びかけに応じ、栽培を始めた。町内の農家に呼びかけ7人で「五城目町キイチゴ研究会」を設立した。ちょうどその頃、私の母校に北海道大学から今西弘幸准教授が赴任し、ラズベリー栽培を普及したいとの話があった。さっそく産学共同研究という形で、大学と一緒に取り組むことになった。

 秋田の気候、風土に合った品種、苗木の繁殖、栽培技術、営業、代金の回収、その他もろもろ。始めて5年ほどで研究会の生産者は20人以上に増え、収量は2t、収入は全体で400万円を超えた(現在は会員の高齢化により収量は1tほど)。

 ラズベリーの輸入量は年間3000tを超えているが、国産はその1%にも満たない。「国産のラズベリーが欲しい」という要望は、北海道から沖縄まで各地からたくさん寄せられているが、需要に応えきれない状況である。

ラズベリー土のう栽培_ 3

土のう袋でコストダウン

 果樹栽培は全般的に、開園にあたっての初期投資が大きい。モモ・クリ3年、カキ8年といわれるように、収入を得るまでの期間が長い。しかしラズベリーなら定植の当年から収穫できる(秋季結実性品種の場合)。

 ただしラズベリーは耐寒性は高いが日本の高温多湿は苦手。病気を抑制するには、ラズベリーの花が咲く前に雨を避けることが必要だ。雨除け施設をつくるとなるとコストがかかるが、「ポットに用土を入れ、水稲育苗ハウスを利用して雨除け栽培をするのはどうか」という大学からの提案があった。稲作農家の私はさっそく、育苗後のハウスにラズベリーのポットを持ち込んで、雨除け栽培に取り組んだ。

 しかしここで問題が発生した。用土が20L入るプラスチックポットは1個700円もする。1000ポットで70万円は大きなコストである。

 そこで考えたのが土のう袋である。ストロングタイプの土のう袋は1袋45円。1000袋で4万5,000円。まあ、これだったら晩酌を少し控えめにしたらやれるかもしれない、と思ったのである。

垣根仕立てに好都合

2月、夏季結実性品種の越冬の様子。残した枝を結果母枝として、7月から収穫を始める。この土のう袋はラズベリー専用のハウスに置き、移動しない
2月、夏季結実性品種の越冬の様子。残した枝を結果母枝として、7月から収穫を始める。この土のう袋はラズベリー専用のハウスに置き、移動しない

 ポット栽培(土のう袋)で取り組んだことで予期せぬ利点があった。ラズベリーは地下茎を伸ばし、春から夏にかけて地下茎から吸枝(サッカー)を地上に伸ばして実をつける。地植えで長年栽培すると、この吸枝の発生が横に広がっていく。つまり作業通路がなくなるのだ。私は作業効率化のため垣根仕立てをしているが、これができなくなる。その点、土のう袋で根域制限すると、垣根仕立てを維持しやすい。

 樹は6~7年で更新する。そのかん、土のう袋は十分保つし、根づまりもしない。

上から「ワインダーイエロー」と「ハノーバー」。どちらも夏季結実性品種(一季成り)、7月収穫
ラズベリー土のう栽培_ 6

「ワインダーイエロー」と「ハノーバー」。どちらも夏季結実性品種(一季成り)、7月収穫

暑さ対策、土の軽量化

 ラズベリーは寒さに強く、1mの積雪があっても問題はない。いっぽうで夏季は冷涼な気候で順調に生育する(15~25℃)。そのため暑さ対策で夏はハウスに寒冷紗を被覆する。しかし昨夏は35℃を超える日が7月下旬から8月いっぱい続き、対策しても実が肥大しにくかった。これ以上暑くなると設備投資が必要となるだろう。

 ラズベリーは土質を選ばないが、総じて排水性のよい用土に定着する。私は軽量化も兼ねて、山土にモミガラ20%……

この続きは2024年1月号をご覧ください

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