農家も非農家も、すべての人がごく当たり前に家庭菜園を楽しむ世の中になれば……。そんな未来を夢見て、月刊『現代農業』では、新コーナー「みんなで農!」がスタートしました。トマトやキュウリ、ジャガイモなどを毎号ひとつずつ取り上げて、家庭菜園初心者のために名人農家が「野菜の気持ち」を代弁してくれます。ここでは、その第1回「トマト」の記事の一部を公開します。
茨城・伊藤健
水は病気の源
雨も水、湿度も水、地下水も水なんです。水が多いと、トマトは軟弱に育ち、病原菌も広がりやすくなります。葉に雨が当たると、あっという間に病気になってしまいます。湿度が高いのも苦手。土に多くの水があると、すぐに細い根(毛細根)がなくなります。トマトは適度な水以外は嫌いなんです。
家庭菜園ではできるだけ薬は使わずに、おいしいトマトをつくりたいですよね。そのためには極力、雨や水がかからないように栽培することです。
植え付け後、根が活着するまでは水をやりますが、あとは我慢。必要以上の水を与えないほうが病気も減り、糖度も上がり、健康なトマトが育ちます。
雨に当たらないようにする工夫も必要です。簡易的な雨よけハウスがあれば、葉を守ると同時に根への水の管理もしやすく、おすすめです。
穴を掘って、肥料を埋める
水を控えるので、肥料をうまく効かせなければトマトは育ちません。
まずは、トマトをつくるところの土全体に肥料を混ぜます。三要素(チッソ・リン酸・カリ)の入った肥料、石灰、苦土をそれぞれ1株あたりひとつかみずつまいて、スコップか管理機で耕耘。
次に、苗を植える場所の下にも堆肥と肥料を埋めます。スコップで幅 30cm、深さ 50 cmの穴(溝)を掘って、落ち葉やワラなどでつくった堆肥を厚さ 20cmほど敷き、三要素入りの肥料を1株につきひとつかみまきます。ここで1株あたりバケツ1杯(10〜20L)くらい、たっぷり水をやってから、埋め戻します。その上に高さ20 cmほどのウネを立てて、マルチを張って定植。
根が活着するまでは、1日おきに3回ほど、1株あたり500mlくらいの水をやりますが、以後はなるべく控えます。根は埋めてある堆肥と肥料を目指して下へ伸びていきます。地下深いところは水分が安定しているので、いつでも肥料を吸えます。これが「水を与えなくても肥料を効かせる」コツです。
トマト栽培にチャレンジ! の前に知っときたいこと
理想は「逆ピラミッド形」
初心者が失敗しやすい点は、水と肥料のやりすぎです。
例えばトマトを8段収穫するとします。8段目をとる際、茎の様子を見て、1~4段目が親指より太くて、5段目以降が小指より細くなっていたら失敗です。トマトは水と肥料が多くて初期に樹が太くなりすぎると、病気になりやすく、味が悪くなります。
理想は1段目より2段目、2段目より3段目というように、徐々に樹が太くなっていく逆ピラミッド形。4段目以降は同じ太さ(小指程度)を維持できれば成功です。
肥料が効きすぎると、樹が太くなり……
この続きは2024年1月号をご覧ください
伊藤 健 いとう けん
64歳。「身体がほしがる、おいしいトマト」を目指して、自然農薬(2003年5月号)や代かき太陽熱処理( 05年10月号)などの技術で、減農薬・減化学肥料栽培に励む。新規就農希望者や家庭菜園初心者など、幅広い層にトマト栽培のアドバイスをしている。
2024年1月号からスタートする新コーナー「みんなで農!」には、以下の記事も掲載されています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。
- 【新連載 菜園始めてホンマによかった】食べたい野菜は自分でつくるに限る 田中由香里
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