2024年6月号（減農薬特集：吸汁ゲリラカメムシ）の読みどころ

2024年5月23日（木）18:00〜放送のラジオ番組「NHKラジオニュース」に、『現代農業』編集部の伊藤が出演します。トークテーマは、「知って欲しいカメムシ」。『現代農業6月号』を片手に、ぜひお聴き下さい。

吸汁ゲリラ　カメムシ――叩き方＆活かし方

2024年6月号減農薬特集のテーマはずばり、カメムシです。タイトルには「吸汁ゲリラ」という言葉を入れました。今回新しく作った造語です。カメムシはセミやアブラムシ、タガメなどの仲間で、針のような口を植物に挿して体液を吸う「吸汁性害虫」です。そして、仲間同士でコミュニケーションをして集団行動をする大変かしこい昆虫のようなのです。あの臭いニオイのなかにはフェロモン物質が含まれていて、仲間を集めたり、警報を出すなどの機能があるため、畑には突然ゲリラ的に襲来してくるのです。

グルメなカメムシ

野菜や果樹を吸汁するカメムシは、じつは本当の好物が他にあったりするそうです。たとえば、ナスを吸汁するミナミアオカメムシはイネ科やマメ科の種子が本命で、ナスはとりあえず吸ってみて「おいしくないなぁ」と次々に挿していく、ちょっとタチの悪い「あそび」をするよう（p42）。イネやマメの収穫、畔草刈りが近くであると、突然一斉にやってきたりします。果樹カメムシの御三家はヒノキやスギの球果と呼ばれる果実が大好物。果樹に及ぼす被害の大きさやタイミングは山の球果の豊凶と深い関係があるそうです。また、専門家の間では「カメムシ年度」なるものがあり、これを使うとカメムシ発生を予測するのにとても便利です（p54）。

カメムシの生態を利用する

イネのカメムシでは、ここ数年とても厄介なイネカメムシの発生が目立っています。従来のアカスジカスミカメなどはアゼ草から侵入するため、アゼ草刈りのタイミングなどで被害を減らすことができたのですが、イネカメムシは林の落ち葉の下などから直接飛んできて、イネに産卵するため、アゼ草刈りでの防除が通用しません（p75）。しかも吸汁のし方が厄介で、出穂したてのモミの付け根を加害するので、不稔モミが発生してしまいます。穂が垂れずに、米が実らない秋の田んぼは、なんともガッカリな光景です。対策は出穂期前半の薬剤散布しかないのですが、今回、埼玉県でセイバンモロコシというイネ科の雑草が重要なエサになっているという最新情報が寄せられました。やっかいだけど、相当な偏食家のカメムシなので、生態をうまく利用すれば有効な手立てが見つかるかもしれません（p78）。

農家の味方「天敵カメムシ」

一方、害虫を食べてくれる「天敵カメムシ」の存在にも注目しました。ピーマンのウイルス病である黄化えそ病を媒介するアザミウマという大害虫がいますが、これを食べてくれるのがタバコカスミカメです。20年ほど前から高知県で利用が始まり、鹿児島や宮崎、岡山などの西南暖地で土着天敵として活躍してきました。それが温暖化の影響で近年は関東にも土着しており、茨城県のピーマン産地でもなくてはなない農家の味方になってきました。10年ぶりに産地の篤農家を訪れた赤松カメラマンが、ハウス内の激変ぶりを写真レポートで紹介しています（p80）。