みどりの食料システム戦略。通称「みどり戦略」のおかげで今、有機農業がブームです。ただし、「有機農業」と一口にいっても、そのやり方はさまざま。課題もさまざまです。どこから始めたらいいのでしょうか?今さら聞けないような話も、先輩農家たちに聞いてみました――。
編集部
JAS認証を取得するのって、お金がけっこうかかるんでしょ?
相場は10万~15万円。認証機関によってピンキリです。
安い認証機関なら7万円くらい
有機JAS認証を得るには、認証機関(有機登録認証機関)で講習を受けて申請書類を提出、書類審査後に、審査員による実地審査を受ける必要がある。手間も時間もけっこうかかる。申請から取得まで数カ月は覚悟しておいたほうがいい。
お金もかかる。「申請手数料」「検査料」「判定手数料」「認証書発行手数料」「講習会費用」「講師派遣費用」「テキスト代」「審査員交通費」「年会費」など、認証機関によって名目はさまざまだが、合計すると初年度はだいたい10万~15万円が必要となる(3haで10品目程度を栽培する場合)。翌年以降の「更新費用」も安くない。
認証機関は全国に約50カ所。それぞれ個性があって、請求される費用もピンキリだ。

「地元の自治体で認証が受けられるなら、かなり安くすみますよ」 (株)シェアガーデンの武内智さん。有機JASの検査員で講習会等のサポートも行なう(倉持正実撮影)
千葉県八街市の農業法人・(株)シェアガーデンの代表で有機JASの検査員も務める武内智さん(2025年4月号p75、80)によると、「都内に事業所を構える大手認証機関は割高」なんだとか。初年度は20万円を超えるところもある。いっぽう都内の認証機関でも、有機農業推進協会(日本有機農業研究会の理事が設立)など、有機農業の推進活動を本気でしているような団体は「例外で安い」。同じ面積で価格が2倍も違うことがあるから、よく選んだほうがいいという。
自治体の認証は激安
また、民間団体ではなく「地元の自治体で認証が受けられる場合は、極めて安くすむ」と武内さん。
調べてみると、確かに安い。たとえば福島県であれば、県内で生産する個人農家(または法人)に限り、2万3000円で県から認証を受けることができる(個人農家で5圃場以内の場合。次年度以降の更新時に必要な確認手数料は1万6000円)。
福島県以外では石川県や鳥取県も、県が認証機関として登録を受けているため、認証費用がかなり安い。山形県鶴岡市や宮崎県綾町のように、市町村が認証機関となっている場合もある。岡山県では、県内のJAが主体となって立ち上げた団体が、認証機関となっている。こういったところも安い。
近ければ、検査員の交通費も安くすむ。認証機関を探すなら、まずは近場からだろう。
費用の補助もある
なお、JAS認証取得には今、国の補助もある。認証機関に払う事務費用(申請費や認証書発行費など)や検査費用(検査員の日当や交通費など)、講習会受講費のうち最大半額まで。新たに取得する場合なら20万円、認証の継続には15万円までの補助が申請できる。

それとは別に、市町村が独自に補助金を出してくれる場合もある。例えば群馬県前橋市では、認証取得にかかる経費の2分の1以内の額(上限7万5000円)を補助する。埼玉県加須市では、上限12万円で補助を出している。しっかり調べて活用したい。
『現代農業』2025年4月号の巻頭特集「今さら聞けない有機農業の話」では、この記事の他にも以下の疑問についても掲載されています。ぜひ本誌をご覧ください。
有機JAS認証のギモン
- Q.有機食品の加工や飲食店にも挑戦したい!
- Q.認証はすぐにとれない?
- Q.農薬や化学肥料以外にも、使えない資材があるんでしょ?
- Q.タネも有機じゃなきゃダメ?
- Q.ゲノム編集はどう考えるのか?
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