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令和8(2026)年
1月21日 (水)
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旧12月3日

あああ

【イネの育苗】倉庫で育苗、真っ黄色!? 超小力「弱苗」は弱くなかった

真っ黄色でひょろひょろのこの苗は、見た目からじゃわからない力を秘めていました。育苗ハウスやかん水、緑化作業は必要なしの超小力育苗をご紹介します。

新潟・新保善光さん

どちらも新保さんの苗。左が「弱苗」(写真はすべて依田賢吾撮影)
どちらも新保さんの苗。左が「弱苗」(写真はすべて依田賢吾撮影)

出芽後、棚に入れておくだけ

 もやしのように細くて真っ黄色――傍から見ると育苗に大失敗したようだが、新保善光さんにとってはこれがねらい通りの苗。育苗コストや時間をどこまで減らせるかという挑戦の成果でもある。

 「春の育苗にしかハウスは使わない。無駄ですよね。ビニール代も高くなってきたし……。それに苗並べってすごく大変じゃないですか。やらずにすむことは、なるべくしたくなくて」

 育苗方法はごくごく単純。播種後、倉庫内に苗箱を積み重ね、無加温で出芽させる。出芽後に苗運び用の棚に並べたら、苗取り板で取れるようになるまで、かん水もせずにほったらかすだけだ。「これ以上の省力化はできないんじゃないか」の言葉通り、ほとんどやることがない。

弱苗を持つ新保善光さん(69歳)。イネ11haのうち、弱苗でつくるのは6ha
「倉庫で育苗、真っ黄色!?  超小力「弱苗」は弱くなかった」より

弱そうな見た目だが......

 新保さんはこの苗を「弱苗」と呼ぶ。たしかに緑色のずんぐり健苗に比べ、ずいぶん弱そうな見た目だ。

 とはいえ、作業上のメリットは大きい。育苗器を使う手間やお金がかからないし、厚く播くから使う箱数も少なくてすむ。ハウスも以前は3棟あったが、育苗用のものは必要なくなった。春作業に余裕ができたので、家族がやっている直売野菜や、自然栽培米づくりを手伝っているそうだ。

 しかも新保さんによれば、生育が進みにくいから長く置いておけるし、植えたらすぐに活着・緑化してどんどん分けつしていくという。そう聞くと、全然弱い苗ではなさそうな……。

 本当の実力を確かめるべく、2024年作を追ってみた。

弱苗は無加温の乳苗

ハウスはいらない。出芽後、この棚にならべて7~10日間、暗闇のまま育苗。田植えできる完成苗になった。育苗棚には、1つにつき120枚の苗箱が入る。外側の苗は窓からの光が当たり少し緑化したが、あえてさせる必要はない
ハウスはいらない。出芽後、この棚にならべて7~10日間、暗闇のまま育苗。田植えできる完成苗になった。育苗棚には、1つにつき120枚の苗箱が入る。外側の苗は窓からの光が当たり少し緑化したが、あえてさせる必要はない

 さっそく倉庫の中に入ると、棚には弱苗がズラリ。外側は窓などからの光に当たって多少緑になっているが、中の苗は本当に真っ黄色だ。

 こう見るとまったく新しい技術に思えるこの育苗方法、じつは昔からのやり方が元になっている。「乳苗密播栽培」という稚苗より若い本葉1~2葉の苗を植える方法で、一時期は全国で普及されていた。加温して出芽させた後、そのまま育苗器内で黄色い苗に育てる。育苗日数が約1週間と大幅に短いうえ、種モミに胚乳が多く残るので活着しやすく、分けつ力も強いそうだ。

葉先に朝露がついている。育苗中は基本的にかん水しないが、極度に乾燥してこの露が出なくなった時だけはする
葉先に朝露がついている。育苗中は基本的にかん水しないが、極度に乾燥してこの露が出なくなった時だけはする

 新保さんは長くこの方法に取り組んできた一方で、不自由さも感じていたという。たしかに加温するとねらった日数で確実に出芽するが、その後伸びすぎて胚乳がなくなってしまったり、涼しい場所に苗を移す必要があったりするからだ。

 そこで、10年ほど前に無加温で出芽させて育ててみたのが弱苗の始まり。加温しない分生育が遅くなり、播種後20日程度までは棚に置きっぱなしでよくなった。新保さんの管理する田んぼは11haあるが、3回播種した苗を1カ月半ほどかけて植えていけるという。

育苗

普通の田植え機で移植可能

 新保さんが床土に使っているのはロックウールマットだ。乳苗栽培にも使われる軽量培土で、葉齢が若い弱苗の根がらみをサポートしてくれる。ここに乾モミで200g以上播けば弱苗でもマット強度の問題はなく、普通の田植え機で植えられる。苗丈は普通苗と同じぐらいあるので、欠株や浮き苗も出ない。除草剤も普通の使い方でオーケーだ。

弱苗の根。葉齢が若く根が少ない分、ロックウール培地でマット強度を補助する。ロックウールは、肥料が入っているタイプのほうが根張りはいい
弱苗の根。葉齢が若く根が少ない分、ロックウール培地でマット強度を補助する。ロックウールは、肥料が入っているタイプのほうが根張りはいい
ヨードチンキで種モミ内のデンプン量を調べた。普通苗はほとんど反応しなかったが、弱苗は黒く変色。デンプンがしっかり残っているので、田植え後スムーズに活着する
ヨードチンキで種モミ内のデンプン量を調べた。普通苗はほとんど反応しなかったが、弱苗は黒く変色。デンプンがしっかり残っているので、田植え後スムーズに活着する

弱苗の田植え

弱苗を移植して10日たった田んぼ(坪60株植え)。補植ゼロだが、欠株はほとんどない
弱苗を移植して10日たった田んぼ(坪60株植え)。補植ゼロだが、欠株はほとんどない
弱苗を植えたとは思えない青々とした姿。1株当たり本数は4本が目標だが、少しばらつきがある。茎数を増やし過ぎないよう、苗が沈まない程度の深水にしている
弱苗を植えたとは思えない青々とした姿。1株当たり本数は4本が目標だが、少しばらつきがある。茎数を増やし過ぎないよう、苗が沈まない程度の深水にしている

新保さんの田植えの動画が見られます(動画)

 さらに新保さんは、メーカーに頼んで田植え機の……

この記事の続きは現代農業』2025年4月号をご覧ください

『現代農業』2025年4月号の稲作・水田活用コーナーには、この記事の他にも以下の記事が掲載されています。ぜひ本誌をご覧ください。

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