グルテンフリーの米醤油
夏(『現代農業』2024年8月号)に続き執筆の機会を頂きました、三栗沙恵と申します。札幌市の端にある山で家族4人で自給自足生活をしています。コンテナハウスに断熱材などを入れ、「住むためのお家」に変えながら暮らしています。日常で使うエネルギーも家族4人に必要な量にしたくて、冷蔵庫を手放してみました。そうして始めた保存食のある暮らし。味噌や梅干しづくりから始め、今ではさまざまな種類のお醤油をこうじから仕込むようになりました。
今回は、わが家の毎日の主食でもある玄米を使って仕込む、グルテンフリーの濃口醤油のつくり方をご紹介します。もともとパートナーが手伝っている農家のお米と大豆でお醤油がつくれないかと思っていました。まずは大豆、玄小麦(全粒小麦)、塩でつくる一般的なお醤油をつくって練習し、次に念願のお米を使ったお醤油仕込みをしました。材料の玄小麦を玄米に替えるだけです。ぜひトライしてみてください(詳しいつくり方は2024年12月号p226から)。
醤油瓶の中は小宇宙
材料を混ぜ合わせて仕込んでしばらくは、いくら混ぜてもこうじと水が分離したしょっぱいだけの水ですが、1年経つとすっかり混ざり合って色が変わり、よい香りを放っていると思います。これを搾ってみると、手づくりでしか味わえない新鮮なお醤油が味わえます。少ない量なら、コーヒードリッパーで濾すのがお手軽です。瓶の上にコーヒーフィルターを入れたドリッパーを置いてお醤油が落ちてくるのを待つ時間が楽しいです。
手前醤油の醍醐味は、搾りたての「なま」のお醤油が味わえることにつきます。市販のものは流通に乗せるため、火入れ(加熱)をして酵母の動きを止めてあるので、貴重な一滴ですよ。自分の手で丹精込めて育てたお醤油は本当においしい。
そして何よりも、食卓に「うれしい」が増えます。これから挑戦してみる方はぜひ、仕込んだ日の写真を撮っておいてください。変化していく瓶の中はまるで小宇宙。私は混ぜているだけですが、目に見えない酵母などの微生物が時間という助けを得て大自然の循環のようにゆっくりと変化をしていく様を感じることができます。それを見ていると、昔から引き継がれてきたこの知恵に感謝があふれ、未来まで残していきたいと思えてくるのです。そんな気持ちがうれしくて毎年、仕込みの手が進みます。
醤油粕までおいしく
できたお醤油は、まずはシンプルに冷奴や卵かけご飯でいただくとおいしいです。みたらし団子なんかも楽しいですよ。お醤油の違いを楽しむ方法としては酢:油:醤油=1:1:1のドレッシングもいいです。わが家は冷蔵保存が必要なドレッシングやマヨネーズなどを買わないのですが、お醤油などをアレンジすればいろんな調味料がつくれてしまうんですよ。
お醤油を搾った後の粕は、そのままの状態でしたらお肉の漬け床になりますし、わが家ではしっかり圧搾して、ストーブの上で炒って乾燥して保存しています。おかかや梅干しと混ぜておむすびにしたり、グラノーラやクッキーに入れています。
「冷蔵庫を使わずに保存できる食料をつくる」がわが家の通年のテーマで、先人の知恵が詰まった味噌や醤油などに対し、敬意と共にとても豊かな気持ちになります。皆さんもお醤油づくりを楽しみながら、引き継がれてきた恩恵をぜひ味わってみてください。
(北海道札幌市)
この記事の詳細は『現代農業』2024年12月号をご覧ください
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三栗祐己・三栗沙恵 著
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