ここまでわかった! 共生菌の力―菌根菌ネットワークを活かす―
2024年の10月号、土壌肥料特集は、菌根菌の世界に迫りました。菌根菌といえば、根と共生して、根が吸収しづらいリン酸を集めてきてくれるいいヤツ。そんなイメージでしたが、それだけではない。土の団粒構造をつくる主役でもあるようです。
菌の世界を案内してくれる達人登場!
目に見えない菌の世界、その働きは頭の中で想像するしかありませんが、菌根菌の胞子の美しさを顕微鏡写真で見せてくれ、畑の土の胞子の数や菌糸の長さを具体的な数値で示してくれる達人がいました。それは、なぜかバイクのヘルメットを作る会社の社員さんなのですが、そんな達人と一緒に農家の畑を訪問。菌根菌による菌糸ネットワークが発達しやすい、省耕起や不耕起の畑で土を採取し「宝石みたいに美しい胞子の写真」を撮りました(p36、41)。しかも、菌糸の長さはたったの1g中に20m以上。驚くべき長さだと思いませんか? こいつがスゴイ役割を果たしているようなのです。
菌根菌は「第二の根」
たとえば、リン酸以外にもチッソや亜鉛などを集めてくれる。根と共生することで作物が異常気象や病害虫にも強くなる。そうした菌根菌の働きと、それを殖やすポイントも、Q&A方式で専門家に聞いてみました(p48)。菌根菌は「第二の根」とも呼ばれますが、植物が陸上生活を始め、根を獲得する3億5000万年前よりも以前から共生していたそうで、むしろ「根の元祖」とも呼べる存在のよう。ロマン溢れる話ですね。そんな菌根菌は土中で根と共生するだけでなく、チッソ固定細菌や根圏微生物、糸状菌などさまざまな微生物と助け合いながら生きています。そのようすも図解記事でわかりやすくまとめました(p56)。
話題の「菌ちゃん農法」を大解剖
そして、これら菌根菌を中心とした菌糸ネットワークによる助け合いの輪に植物が参加することで、無肥料・無農薬の野菜づくりが可能となる。これを、どんな場所でも、素人でもできるようにマニュアル化したのが、いま話題の「菌ちゃん農法」です。菌ちゃん先生こと、吉田俊道さんの圃場にお邪魔し、土のなかで何が起こっているのか、「菌ちゃん農法」を大解剖した記事も必見です(p62)。
トマト名人に聞く菌根菌たっぷりの育苗培土づくり
その他、岐阜の夏秋トマトの大産地にて、周囲の農家が「何時間でも眺めてられます」というほど惚れ惚れする姿のトマトをつくる名人が、じつは土着の菌根菌たっぷりの育苗培土をゼロ円で自作していたという報告(p74)もあります。
アメリカやオーストラリアの研究
巻頭特集の最後には、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)の先進地であるアメリカやオーストラリアの研究者を紹介しながら、菌根菌が土中の炭素貯留に大きく貢献していることや、糸状菌と細菌のバランスから畑の健全性を見る新視点を提案しています(p90)。
最新の話題が盛りだくさんの特集となりました。
その他のコーナーも見どころ満載です。タイトルだけですが、ご案内します。
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