ローテーション防除に「RACコード」を活用する農家が増えてきました。栽培品目が少ないうちはローテーションもしやすいですが、品目が多いと大変です。今回は、多品目農家の実際の活用方法をご紹介します。
RACコードに関するアンケートにお答えいただくと、ローテーション防除にもってこいの「RACコード一覧」(PDFデータ)をダウンロードすることができます。
滋賀・榎本成志
「RACコード」ってなに?
数字とアルファベットを組み合わせた記号で、農薬を作用機作ごとに分類したもの。例えば殺虫剤なら有機リン系は、ネオニコチノイド系はなど、すべての農薬に「IRAC《アイラック》コード」がある。同様に、殺菌剤には「FRAC《エフラック》コード」、除草剤には「HRAC《エイチラック》コード」がある。違うコードの殺虫剤を交互に使えば、害虫の抵抗性発達を遅らせることができる。ようは「系統」と同じなのだが、RACコードは、より厳密に分類された国際基準だ。近年、農薬のラベルに表記されるようになってきた。
「抵抗性害虫」の発生がなにより怖い
10年ほど前、農薬の効きが悪くなったと感じたのは、コマツナにつくアブラムシ防除のとき。当時は農薬の知識が少なかったので、ウララやアルバリン(スタークル)を連用しがちだった。そんなとき、普及員さんの「RACコードを見て農薬を選んでくださいね」という一言で、防除にRACコードを利用し始めた。いま、コマツナにつくアブラムシにはアグロスリンも登録があるとわかり、フーモンなどの気門封鎖系の農薬も混用しながら3剤をローテーションしている。抵抗性アブラムシの出現を抑えている手ごたえはある。
1シーズンで何度も農薬を散布するナスなどにも、薬剤抵抗性が付かない気門封鎖剤を積極的に使うようにしている。費用が高くつくものが多いが、一番怖いのは農薬の効きが悪くなる「抵抗性害虫」が出ること。コナジラミ対策などには、やはり高いが抵抗性が付かないボタニガードES(微生物農薬)を組み入れている。
RACコードで分類して保管
年間50品目程度をつくる多品目農家なので、使う農薬の数が多い。使いやすいように農薬ボトルのキャップにRACコードを書き、基本的には「同じコード」で分類。ダニ剤などのように「用途が限定される」剤はコード関係なくひとまとめにして整理している(最初の写真)。袋に入っている農薬は、入浴剤などのプラスチックの空ボトルに移し替えている。パッケージが個性的なので、たくさんある農薬の中から容器の外観で簡単に判断できていい。
一つ一つ希釈倍率を確認するのが手間なので一覧表にし、パウチして農薬を調製するところに置いている。夏場の暑いときでもうっかりミスを防止できる。農薬コストもバカにならないので価格と標準的希釈倍率で10Lあたりの単価表を作り、使うときの参考にしている。ただ、安くても効きの甘さを感じる農薬は、使わないようにしている。
農薬の抵抗性を付けない工夫
農薬を選定するときは次のようなことに注意している。ブロッコリーのヨトウムシやアオムシなどの防除を例にした。
まず、異なるコードの農薬5剤ぐらいをローテーションする。このとき、グレーシアなどの新規薬剤に頼りすぎないようにしており、エルサンやランネートのような昔からよく効くといわれる定番の剤も組み入れている。
そして、どこかで抵抗性の遮断でBT剤を混用する。ちなみにBT剤は耐雨性に欠けるので、晴れが続きそうなときに使う。
収穫前日でも散布可能が多く作物の登録が多いディアナSCやアファーム、プレバソンは切り札剤として取っておく。基本となるローテーションには入れないようにしている。
散布のタイミングに応じた薬剤選定
ローテーションを組むときは、適用だけでなく栽培期間から考えて、どのタイミングにどの剤を使うのかも大事。IGR系(昆虫成長抑制剤)は、ブロッコリーがこれ以上あまり大きくならないタイミング(収穫30日くらい前あたり)で散布。浸透性がないので、大きくなっている途中に散布すると、薬効が不安定になるのでは、と考えている。IGR系の中では適用も広く殺卵効果もあるカスケードを選ぶことが多い。
浸透性がない剤は残効が長く、逆に浸透性がある剤は残効が短い傾向があり、農薬を選ぶときにどちらの剤か必ずチェックしている。たとえば、同じジアミド系でもプレバソンは浸透性があり、フェニックスは浸透性はないが、残効に優れているので栽培終盤に使うことが多い。特性を意識して散布できると防除もうまくいくと感じている。
(滋賀県草津市)
現代農業2024年6月号「RACコードでローテーション防除2024」コーナーでは以下の記事も収録しています。
- 殺虫剤・殺菌剤のRACコードによる分類一覧
- 除草剤のRACコードによる分類一覧
- 新農薬情報 殺虫剤 殺菌剤 城塚可奈子/西岡輝美
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農文協 編
農薬の成分から選び方、混ぜ方までQ&A方式でよくわかる。たとえば、農薬の「成分」って何のこと? 商品名は違うのに成分が同じ農薬は多い? ミニトマトはトマトと同じ農薬でいいの? といった「基本的なことだけど大事な話」が満載。さらに、RACコードって何? 混ぜると効き目がアップする農薬は? 多品目畑で使いやすい農薬は? といった現場の悩みにも応える。農薬の効かせ上手になって減農薬につながる一冊!。