特集
雑草を抑え、天敵を殖やし、土を育てる
カバークロップ & 生き草マルチ
現代農業2023年5月号の巻頭特集、聞きなれない言葉かもしれませんが、今、大注目の技術です。ざっくりいうと、作物が植わっていない時期の緑肥などを「カバークロップ」、作物の生育期間中に通路などを植物で覆うのを「生き草マルチ(リビングマルチ)」といいます。
緑肥は刈らずに倒す
さて、今月はトップ記事でレイモンド・エップさんという北海道在住のアメリカ人が登場します。有機農業歴28年の大ベテランですが、4年前から今話題の耕さない農業を実施し、土がガラっと変わったといいます。その要となる技術が、7~12種類のカバークロップ(緑肥)の混播と、羊の放牧、そして緑肥を刈らずに倒すワザでした。緑肥は粉砕してすき込むのが一般的ですが、刈らずに倒すだけなら、夏草を抑えるマルチの役割を果たし、草が分解されるのを待たずに即、夏野菜の定植ができます。クモやカエル、カマキリなどの天敵の隠れ家としてもぴったりで、病害虫に強い畑になるようです。レイモンドさんはアメリカ発の「ローラークリンパー」という草倒し用のトラクタ装着型作業機を自作していますが、トラクタのバケットで押し倒してもいいし、小規模なら人力によるドラム缶や、足で踏むタイプの「フットクリンパー」も使えます。適期はイネ科の春草が出穂する5~6月にかけて。今年はたくさんの方に挑戦していただきたいところです。
「生き草マルチ」は通路に最適
通路をカバーする生き草マルチのコーナーでは、ビックリする報告が掲載されています。岡山の奥野さんによると、露地ナスの通路にイネ科雑草を生やしておくと土着天敵が活躍してアザミウマ害がなくなり、ピカピカのナスが収穫できるというのです。宮城県の研究では、タマネギの通路に大麦を栽培すると、やはりネギアザミウマを防除できるとのこと。なんでも、肉食系のゴミムシや、アブラムシの天敵として有名なヒラタアブの幼虫がアザミウマを捕食するそうで、難防除害虫の対策にも生き草マルチが大変効果的とのことでした。また、近年のゲリラ豪雨による土壌流亡対策にもカバークロップや生き草マルチは有効で、「裸地をつくらない」ことは、土づくりや環境保全の面から、スタンダードな考え方となりそうです。
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その他のコーナーも見どころ満載です。タイトルだけですが、ご案内します。ぜひ本誌をご覧ください。
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