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【通路に雑草の生き草マルチ】ぬかるみが改善し、ナスのアザミウマがいなくなった

もとが水田だった畑って排水に本当にしますよね。岡山県の奥野さんは、通路の雑草を芝生のように刈って管理することで、排水不良の畑を改良しています。現代農業2023年5月号の巻頭特集「カバークロップ&生き草マルチ」の記事の一部を試し読みとして公開します。

岡山県・奥野靖之

ナス畑の通路に雑草リビングマルチ
ナス畑の通路に雑草リビングマルチ

 冬春ナス産地で2年研修したあと、2006年にハウス4棟(20a)を借りて就農。なにもない状態から結婚して家族が増え、お客様が増え、販路が増え、面積が1haに拡大。
 現在の主な品目はミニトマトとナスです。ミニトマトはハウス栽培(50a)で、9月定植、 11月から翌年の6月末まで収穫。ナスは露地栽培(50a)で、ミニトマトのない7〜11月に収穫。
 どこにでもあるものではなく、探さないとないものをつくろう。生活になくてはならない野菜を目指し、食べた方を笑顔にしたい。そう思って、愛情を込めて栽培しています。

ぬかるみがひどい

 露地ナスの畑は水田跡の耕作放棄地を開拓したので、雑草が繁茂し、排水不良でひどいぬかるみでした。物理的な改良として、明渠と暗渠を設け、毎年大量のモミガラを入れています。それでもよくならず、雨が降るとウネとウネの間の通路がぬかるみ、1日200〜300㎏収穫するナスの台車を押すのが大変なときもたびたびありました。畑に板や防草シートを敷いたり、土を入れたりしました。
 有機栽培を勉強しているときに、リビングマルチを実践している農家を知り、うちでも試してみようと思いました。通路を植物で覆い、排水性をよくし、他の雑草を抑制する働きも期待したのです。
 まずは大麦の「てまいらず」を導入。メリットを感じましたが、水がたまる場所ではリビングマルチの芽が出にくい、枯れてしまう、タネ代が高いといった問題点もありました。

通路の草刈りを繰り返し、芝生のように管理

 リビングマルチが生えていない場所を観察すると、メヒシバやチカラシバ、エノコログサなど、イネ科の雑草が生えていました。タネも播かず、手入れもしていないのに、通路を覆っているのです。イネ科の雑草を活用してリビングマルチをつくってみよう、と思いました。
 ただ、雑草を放置すると、はびこって大変なことになります。ある程度の長さになったら草丈2cmくらいまで刈り込み、芝生のように整えることにしました。根は生きていて、2週間ほどでまた伸びてくるので、草刈りを繰り返します。
 刈り払い機でも大丈夫なのですが、私は中古で2万円ほどで買った小型のモアを使っています。これがあれば、簡単にきれいに草を整えることができます。モアが通りやすいように、通路の幅を広くすると管理がラクです。

雑草リビングマルチの管理

作業の邪魔になるくらい草丈が伸びたら刈る
作業の邪魔になるくらい草丈が伸びたら刈る

歩きやすく、刈り草が敷きワラ代わりになる
歩きやすく、刈り草が敷きワラ代わりになる
小型の自走式モアがあると便利
小型の自走式モアがあると便利

雑草の生き草マルチは いいことずくめ

 雑草リビングマルチ(生き草マルチ)のメリットは以下の通り。
・歩きやすい
 草刈りをしたあとは芝生の上にいるようです。
・刈った草が敷きワラ代わりになる
 夏の地温を下げる効果があります。
・緑肥になる
 炭水化物を供給し、ナスの生育がよくなります。
・泥はねを防ぐ
 病気になりにくく、ナスも汚れません。
・排水性がよくなる
 雑草の根が張ることで、通路のぬかるみが改善。収穫台車を押しやすくなりました。
・アザミウマの被害が減る
 害虫のアザミウマを食べる土着天敵が増えました。以前は月に1回、アザミウマ用の殺虫剤を散布していましたが、今はほぼなしです。ナスにも食害のキズはありません。

ピカピカのナス。アザミウマの殺虫剤を散布していないのに被害がなく、表面がきれい。通路の雑草で土着天敵を温存!?
ピカピカのナス。アザミウマの殺虫剤を散布していないのに被害がなく、表面がきれい。通路の雑草で土着天敵を温存!?

2023年5月号の特集「通路に生き草マルチ——生き物と一緒に」コーナーでは、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 大麦間作でタマネギに来るアザミウマが3分の1に 関根崇行
  • 通路にムギマルチ ナガイモ畑の抑草に、土壌流亡も減った 小笠原隆太郎
  • 生き草マルチは農家のためになる、地球のためになる 真木聡志
  • どうなる? 厄介な雑草で生き草マルチ(伝統農法文化研究所・木嶋利男さん)

農家が教える 草刈り・草取り コツと裏ワザ

農文協 著

刈り払い機のきほん、モア、鎌、ニワトリ、太陽熱、米ヌカ、チェーン除草など

多年生雑草対策ハンドブック

伊藤操子 著

やっかいな雑草の本体は地下にあり。多年草の特性と効果的な対策(草刈り、耕起、除草剤、防草シート、地被植物など)を平易に解説。草種ごとに地下部の貴重な写真とイラストを満載し、生態と管理法を具体的に示す