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【こんなときどうする?平飼い養鶏】「無洗卵って大丈夫?」と聞かれた

現代農業2023年5月号から「平飼い養鶏」の連載がスタートします。現代農業WEBでは、その連載第一回分を試し読みとして公開します。著者は、薬剤などを使わない昔ながらの自然卵をつくっている村内智子さん(長野県)です。

長野・ 村内 倫子

無洗卵を売りにしたい

 長年教職に就いていましたが、体を壊して食の大切さを痛感し、根本的に暮らし方を変えようと模索して出会ったのがニワトリでした。平飼い養鶏の本を読みあさっては 20羽で実践、ニワトリと遊んでいるうちに「これが生業になるなら幸せだな」と思い、高山村で皆さんの理解とご縁を得て2019年に開業しました。
 できるだけ輸入に頼らず、純国産鶏「あずさ」「もみじ」「さくら」を選び、未利用資源や発酵飼料を与えること。抗生物質や薬剤はフリーでヒナから育てる。そして「無洗卵」での販売にこだわっています。
 卵の表面にはクチクラ層という、いろいろな菌の侵入を防ぐ機能を持つ薄い膜があります。一般的な卵のほとんどは、汚れや雑菌を落とすために次亜塩素酸などで洗うので、クチクラ層は残っていません。無洗卵は本来のバリア機能のおかげで、一般の卵より日持ちします。もともと卵は保存食だったそうで、そんな昔ながらの自然卵をつくりたかったこと、また薬剤などを使わないことも売りにしたいと、当初から考えていました。

サルモネラと卵の関係を説明

「むらたま」。ネットで1個200円、村内直売所で1個100円

 開業して2年が過ぎた頃のことです。販路拡大しようと近隣の飲食店さんを回っていたら、あるお蕎麦屋さんで「無洗卵ってサルモネラは大丈夫なの?」と聞かれました。ニワトリたちは健康でしたが、説得力ある説明はできませんでした。これから本格的に無洗卵を売り出すぞ!というときでショックでした。
 そこで私が参加している「全国自然養鶏会」のメーリングリストで質問してみました。先輩方にご助言いただいたことで自分なりに問題点を整理し、お店に説明できるようになりました。
 サルモネラ菌は自然界に普通に存在していること。仮にサルモネラ菌をニワトリが保有している場合、産卵時に殻の外に菌が付着する場合と、菌が中に入った状態の場合があること。サルモネラ菌が中に混入しても、増殖スピードは卵の保管温度によって変わること(理論的には 10℃で57日、20℃で30日、30℃で13日は生食可能)。加熱すれば殺菌できる等です。 
 そのお店では「むしろ長く保存できる無洗卵で納入してほしい」と言われるようになりました。
 家畜保健所などでニワトリを検査して陰性証明する方法もありますが、私の場合、飼い方や売り方を説明できたことが大きかったと思います。取り引き先はもちろん、直売でも折に触れ伝えるようにしています。

規格外の卵は加工用に

 卵の表面に目立った汚れが付いた場合は販売していません。また、ニワトリが産卵箱に出入りした際に引っかき傷がついた場合や、殻が変形するなど見た目があまりに悪い卵は、加工用に使っています。幸い近隣に厳選素材のプリン工房があり、委託製造を快く引き受けてくださいました。卵や玄米粉(村内産の無農薬米)を持ち込み、オリジナルのプリン2種と玄米フィナンシェ3種を商品化しました。
 現在は80羽(160日齢60羽、2歳20羽)、まだまだ駆け出しです。エサを安定確保できれば羽数を増やしたいです。「こんな卵を探していた」という方がいると信じて、自分が納得いく養鶏を続けています。実際、気に入ってくださる方が少しずつ増えてきました。家族が増えたようでとてもうれしいです。 (長野県高山村)

詳しくは2023年5月号をご覧ください

2023年5月号「畜産」コーナーでは、この他にも以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • ゼロから始める耕畜連携にワクワク 青沼光
  • 耕畜連携での課題 いろいろなイネWCS、どう使う?
  • 【自分でできる牛の蹄管理2】蹄の構造をイメージしよう 阿部紀次

増補版 自然卵養鶏法

中島正 著

長年の実践に支えられた著者の技術と哲学を集大成。小羽数平飼いの自然卵養鶏法のバイブル。

そだててあそぼう
ニワトリの絵本

山上善久 編
菊池日出夫 絵

 ふ卵器を使ったり、母ドリにタマゴを抱かせてヒヨコをかえす方法、ニワトリ小屋の作り方、けんかや病気、鳴き声・ふん対策など飼育の実際から、半熟・温泉・固ゆでタマゴの作り方、タマゴを使ったおもしろ実験まで。