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【9/5発売!現代農業別冊『農家が教える 鉄のミネラル力』より】第4回 火山灰土の高原圃場で、糖度17度のスイカ

兵庫・由良大

 肥料・資材の値上がりが止まりません。そこで、生育促進、食味向上、さらには地力アップに期待できるという鉄活用について、別冊現代農業『農家が教える鉄のミネラル力』として9/5に緊急出版しました。この連載では、本書の読みどころを週1回(全5回)お届けしていきます。

リン酸固定量の多い火山灰土で

小玉スイカ「シャリっ娘」は糖度17.1度を記録。もう一品種の小玉スイカ「姫甘泉(ひめかんせん)ブラック」も16.8度まで上がった

 私は兵庫県豊岡市の農地所有適格法人(株)Teamsで、野菜を栽培しています。本誌1月号でも、鉄ミネラル液を用いた野菜の栽培方法についてご紹介しました。

 私たちの畑のうち、神鍋高原に位置する圃場の土は、ほぼすべてが火山灰土(黒ボク土)です。一般的に黒ボク土はリン酸吸収係数(100gの土が固定するリン酸のmg数)が2000以上といわれているので、10aの圃場で60tの作土とすると、1200kg以上のリン酸が固定されてしまう計算になります。そのため、とくに果菜類の追肥時には、他の場所にある圃場よりもリン酸肥料を多めに施用しています。

 こうした土地での野菜栽培で、京都大学の野中先生のご指導のもと、鉄ミネラル液を活用するようになり3年目になります。今年はスイカ、トウモロコシ、イチゴ、ケール、ネギなど、幅広い作目に施用して、変化と効果を試験しています。

スイカの糖度が17度超え

 果菜類では、基本的に収穫の10日前を目安に、噴霧器で10a当たり100lほど原液で一度だけ葉面散布することで、糖度を上げることに成功しています。

 とくに、直販や道の駅出荷用の小玉スイカでは、今年最高糖度17度超えを記録(道の駅出荷者の平均糖度は12度前後)。野中先生にも贈り、絶賛していただきました。

 スイカは8果どりの想定で疎植にし、子づるの4本仕立てで栽培します。孫づるは残して、すべての葉が最大限に日光を受けられるように誘引し、その状態で鉄ミネラル液を散布しました。圃場にぎっしり展開した葉が活発に光合成し、栄養分を果実に蓄えて糖度を上げる……という想定です。

 野菜(商品)のよさや、他との違いを一般の個人消費者に説明する際には、「甘い」や「高糖度」という言葉は非常に伝わりやすく、差別化をはかるうえでとても重宝します。

鉄ミネラル液散布時のスイカ。葉っぱで地面が完全に覆われている

味のバランスがいいイチゴ

 ただし、もう一方の大きな取り引き先である飲食店などには、ただ「甘い」だけの野菜では、高く評価してもらえません。味のバランスや個性など、甘さ以外の面が求められます。作目にもよりますが、鉄ミネラル液にはそうした「こだわりの味」を生み出す効果もあるようです。

 ハウスで土耕・半促成栽培し、都市部の飲食店などへ発送するイチゴ「桃薫」では、市販の微生物資材と鉄ミネラル液で比較試験を実施。両者を開花時期に散布してみたところ(鉄ミネラル液は10a約100l)、微生物資材を施用した実のほうが高糖度に仕上がりました。しかし、イチゴのおいしさには「酸味」も大切です。理由はわかりませんが、鉄ミネラル液を施用したイチゴのほうが、はっきりした酸味のあるバランスのいい味となり、取り引き先からも高評価をいただきました。

 鉄ミネラル液を与えたイチゴは、花托もしっかりとしていて、都市部に輸送する際の傷みの心配も軽減されました。実際、昨年までは到着後のイチゴの傷みが頻繁に報告されており、発送での販売をやめようかと考えていましたが、今年はクレームは一切ありませんでした。これも鉄ミネラル液の「細胞壁を強くする」効果のおかげかもしれません。

ケールの収穫が10日早まった

ハウスで栽培するケール。鉄ミネラル液を散布したほう(右側)が明らかに生育が早い

 葉菜類では、ケールの生育スピードで差が出ました。定植直後に一度だけ、10a100lほど葉面散布したところ、他のエリアに比べて旺盛に生育し、10日ほど収穫開始を早めることができました。

 また、ケールの販売先の中心は東京都の飲食店ですが、仲卸を経由するので、お店に届くまで最低でも2日以上かかります。しかも、私たちのケールは、株元ではなく葉柄から切り取って収穫する。したがって、一番気になるのが鮮度維持です。

 しかし、取り引き先によると「冷蔵保存なら、黄変せずに1週間程度は持つ」とのことで、棚持ちに関しても高評価をいただいています。

 今後は微生物資材との併用や、施用するタイミングや量、そして回数を、土壌や天候、作物の種類や生育状況に合わせて調整し、収穫時期に野菜を最高の状態にできるよう、試験していこうと考えています。

ネギに鉄ミネラル液を散布する筆者(47歳)。(株)Teamsでは、露地約4ha、ハウス16棟で数十種類の野菜を栽培。出荷先は飲食店や小売店、ネット販売など

*月刊『現代農業』2020 年10月号(原題:火山灰土の高原圃場で、糖度17度のスイカ)より。情報は掲載時のものです。

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別冊現代農業2022年10月号

農家が教える 鉄のミネラル力

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